第464回 「名カメラマン」

平良いずみ

2011年5月9日


冷たい北風が吹く2月の夕方、
休日で街を歩いていた時、会社の先輩から緊急の電話。

「高江洲カメラマンが編集中にくも膜下出血で倒れ、病院に運ばれた。
みんな会社で祈りながら連絡を待っている」

急いで会社に向いながら、様々な思い出が駆けめぐった。


そして、その夜は、ただただ祈った。
翌朝、高江洲 努カメラマンは天に召された。

高江洲カメラマンとは、3年にわたり
ドキュメンタリーづくりを共にしてきた大事な仲間。
あまりにも突然の別れだった。

 

ヘリ救急の先進地・スイスでの撮影の様子
ヘリ救急の先進地・スイスでの撮影の様子

 

私たちの会社は市街地にある。
だから119番通報をしてすぐに救急車が駆けつけ
病院に運ばれるまでの時間は、30分程度。

身近な人の緊急事態―
その30分が、果てしもなく長い時間に感じられる。


私たちは、
その時間を一分でも一秒でも縮めようと
市民からカンパを集め
過疎地で救急ヘリ(MESH)を飛ばす医師たちを追ってきた。

その取材の中で、
くも膜下出血を発症したものの、ヘリで医師が現場に駆けつけ
13分後には現場で処置、
緊急手術をして命を繋いだ女性の症例を見てきた。

救急車での搬送ならば医師が患者と接触できるまでに
50分の時間を費やしていた場所だった。

大事な仲間の死に直面して
一分一秒の大切さを、改めて知った。

 

ヘリ救急の先進地・スイスでの撮影の様子
ヘリ救急の先進地・スイスでの撮影の様子

 

高江洲カメラマンは、
口数の少ない、寡黙な人でした。
でも、その感情をカメラのファインダーを通して表現する
名カメラマンでした。

救急ヘリ存続のために献身的な努力を続ける
医師たちの姿を映像に焼き付けてくれました。
そして、努力を続けても好転しない現実の不条理もまた撮り続けてくれました。

彼が遺してくれた250本にも及ぶテープには、
患者が救われた瞬間を収めたときの喜びが
そして、医師たちの訴えが行政に届かない瞬間の悔しさが刻まれています。

 


 

私は、今、その映像を世に送り出すべく
番組の編集作業にあたっています。

正直、こぼれ落ちそうになる涙をこらえながら
編集機にむかう日もあります。

 

でも、そんなある日の夜、夢に高江州さんが出てきて
静かに私の話を聞いてくれました。
無口な高江州さんだから相談しても頷くだけで、しゃべってはくれないけど(笑)。

この3年間、迷ったり悩んだりした時に
そうやっていつも高江州さんは私の話にじっと耳を傾けてくれました。
そんな高江州さんに支えられて取材を続けてこられました。

高江州さん、ありがとう。
貴方が遺してくれたものは絶対忘れない。

 

 

きょう、ふと見上げたら青空。

今、高江州さんがいる空に
命を救うヘリコプターが沢山飛ぶ日がくるように―
番組終了後、夢で逢う高江洲さんがはにかんだ笑顔をみせてくれるように
あともう一息、番組づくり、頑張ります!


多くの方に
高江州カメラマンの映像を見て頂きたいです。


OTV報道スペシャル
どこへ行く、島の救急ヘリ〜ヘリコプターを私にください2〜

5月21日(土)午後1時〜午後1時55分放送

 

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