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くらしと経済編集部

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健康で快適な暮らしにつながる、脳科学ビジネス

小林
こんにちは。小林美沙希です。
未だ謎な部分が多いと言われる人間の脳。しかし近年、脳科学研究の成果が身近な課題解決に活用され始めているそうです。
野村証券那覇支店支店長の宮里洋介さんに詳しく伺います。宜しくお願いします。

宮里
よろしくおねがいします。

小林
脳科学を活用したテクノロジーは、どういったところで使用されているんでしょうか?

宮里
脳は人間のあらゆる行動に関わることですので、活用される分野も広範囲に及びます。例えば、医療・ヘルスケアの分野では、睡眠時の脳波を分析して深い睡眠に導いたり、脳機能を維持・回復するトレーニングなどに活用されています。また自動車の分野では、運転する際の脳波を検出して自動運転に適用するといった技術の開発も進められています。さらに、マーケティングや商品開発、教育訓練の分野などで行動へのアプローチも進められています。

小林
確かに、人間のあらゆる行動を司るのは脳ですから、脳科学の知見が適用される範囲はひろくなりますね。

宮里
そうですね。日本では特にマーケティングや商品開発の分野で先行しています。大手化粧品メーカーでは、脳の血流を測定し脳の活動を知る方法を用いて、利用者がどのような口紅の着け心地を好むのかを調べる手法を開発しました。一般的に、化粧品の開発では使用してもらったあとに使い心地を評価するアンケートやインタビューを行って調査していましたが、このメーカーが開発した手法では口紅を塗っている間に感じている使用感を脳のデータから把握できます。

小林
アンケートなどでは、表現があいまいになったりしますが、脳のダイレクトな反応を測定するのであれば、より明確な評価を得られそうですね。

宮里
そうなんです。また、医療の分野では認知機能の維持・向上などに役立つ小型のセンサーがついたバンドを額に巻き付けて使用する「脳トレアプリ」や頭にヘッドフォンのような脳波計を着け、脳卒中などで動かなくなった手にロボットを装着し、リハビリを支援する装置など、脳の状態を確認しながら訓練することで、脳の持つ可能性を最大限引き出そうとする試みがされています。

小林
リハビリ装置は、脳の電気信号によってロボットをコントロールするものなのでしょうか?

宮里
そうなんです。開発した教授によると、脳には失われた機能を再構築する力があって、脳の損傷していない部分を利用して信号伝達の迂回路をつくっていくとのことです。この装置では、脳波測定に人工知能による解析を組み合わせることで、正しい信号が出た場合だけロボットのサポートで手が動き、手が動くことで「動いた」という情報が脳にフィードバックされるという仕組みになっています。実際に行われた臨床研究では、発症して6か月以上がたち、指に重度の障害が残った患者さんのおよそ7割に効果が見られたということです。このように脳科学の活用は、人間の持つ可能性を拡大し、未知の能力の開発にもつながるため、脳科学ビジネスが持つ可能性と社会的な意義は非常に大きいと思われます。

小林
脳科学がもっと身近に導入できるようになれば、より快適で健康な暮らしに役立って様々な問題の解決にも繋がるかもしれませんね。
宮里さん、ありがとうございました。

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