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くらしと経済編集部

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DXで日本の漁業を活性化

小林
こんにちは。小林美沙希です。
四方を海に囲まれている日本は漁業の盛んな国なイメージがありますが、近年衰退へと向かっているそうです。それを打開するための取り組みについて、
野村証券那覇支店支店長の宮里洋介さんに詳しく伺います。宜しくお願いします。

宮里
よろしくおねがいします。

小林
盛んに漁業が行われていたころと比べ、今の漁業はどのような状況にあるのでしょうか。

宮里
かつて世界一の生産量を誇っていた日本の漁業は、1980年代に行き詰って衰退の一途をたどっています。こちらは2015年までのおよそ50年の全国の漁獲量推移ですが、1980年代以降衰退が続いていることがわかります。その背景には、1982年に「排他的経済水域」が設けられ、戦後の日本漁業を牽引してきた遠洋漁業が縮小に転じたことや、1970年代に水揚げ量が上昇したマイワシが激減して、雇用の悪化や漁業従事者の減少を招き世代交代が途切れてしまったこと、そして水産資源の減少などの理由があります。しかし一方で、漁獲量と養殖量を合わせた世界の漁業生産は増加を続けていて、2017年には過去最高を記録しました。
生産量も消費量も増加していて、水産物がより身近になっています。

小林
日本とは逆に、世界の漁業は成長を続けているんですね。

宮里
そうなんです。そこで、日本も現状を打破して再び漁業を成長産業にするために、70年ぶりに「漁業法」を大幅に改正し昨年12月から施行しています。適切な漁業資源の管理と水産業の成長産業化を両立するために、資源管理の方法などを見直すのが狙いです。

小林
具体的には、資源管理はどのように行われているのですか?

宮里
漁業資源管理は、資源を調査してどのくらいの資源があるのかを評価し、漁獲によって減少しても自然の回復力で増加できる量を資源管理目標に設定し、魚の種類ごとに漁獲できる量を決め、漁業者に個別の漁獲枠を割り当てるという流れで行われます。今日、様々な分野でデータやデジタル技術を活用して製品やビジネスモデルの変換を目指すデジタルトランスフォーメーションが進みつつありますが、漁業にもその波が押し寄せていて、デジタル技術の活用がキーポイントになっています。

小林
漁業の分野で活用されているデジタル技術はどのようなものがあるのでしょうか?

宮里
はい。長崎県のベンチャー企業が発売したアプリを例に紹介します。このアプリは、人工知能に蓄積した操業情報を若手に引き継ぐことで技術を伝承し、後継者不足の解消に繋げることを目指しています。このアプリでは、人工衛星のデータを取得して、表面海水温の情報を入れた漁獲報告書を簡単に作成できます。こうした記録は資源管理に不可欠なデータですので、その作業を効率化することには大きな意味があります。さらに、その日に漁に出るべきかどうかも、AIが分析してアプリが判断してくれます。こうした精度を向上させられれば、燃料コストの削減や休暇の増加につながります。

小林
こうしたツールがあることで、若い世代の参入を増やすこともできそうですね。

宮里
はい。この企業の代表者は、「水産資源を守り、持続可能な漁業を実現し、このアプリを通して“水産国・日本”の復活に貢献したい」と話しています。日本は、世界屈指の好漁場であり優れた加工技術で水産物の価値を高めることにもたけているため、高いポテンシャルを持っていると言えます。このポテンシャルを最大限に生かし、日本の漁業が再び輝く時代が来ることを期待したいです。

小林
日本がこれから進めていく、科学的で持続可能な漁業の進展に注目していきたいですね。
宮里さん、ありがとうございました。

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