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「希少生物の病床も不足」 沖縄やんばるの森で絶滅危惧種を保護する取り組み

9月17日は語呂合わせで「クイナの日」。天然記念物のヤンバルクイナが新種と認定されて今年で40年となる。

今年、沖縄本島北部などが世界自然遺産に登録される一方、”やんばる”の森では希少な生き物が交通事故に遭う事例が後を絶たず、保護に向けた新たな取り組みも立ち上がっている。

▽記者リポート『今、1羽のヤンバルクイナが道路に出てきました。周りをキョロキョロと見回しています餌を探しているのでしょうか」

40年前の1981年に新種に認定された国の天然記念物・ヤンバルクイナ。

2005年に個体数が700まで減少し絶滅が予測されていましたが、捕食するマングースの駆除や人工繁殖を進めた結果、今年の個体数は1600にまで回復した。

▽やんばる・地域活性サポートセンターの比嘉明男理事長さん『よくそこに出てくるんですよ。何故出て来るかと言うと、朝、夜が明けてくると、ここにミミズとか虫が落ちているんですよ。車にぶつかってこれを食べに来るんです』

やんばるの希少生物保護に取り組むNPOの理事長を務める比嘉明男さんはある問題に頭を抱えている。

『交通事故が増えているんです。去年1年間の数より増えているとても危惧しています』

〈ヤンバルクイナの交通事故〉

30年にわたってヤンバルの希少生物を保護し治療してきた長嶺隆医師のもとには、交通事故に遭い怪我をしたヤンバルクイナが運ばれる。

この日も脊髄を損傷し自力では立てなくなったヤンバルクイナのリハビリにあたっていた。

▽動物たちの病院沖縄・長嶺隆医師『5月22日に国頭村で交通事故にあってしまって路上で倒れているところを保護されたんですけど背骨が折れていまして、脊髄が傷んじゃって足がうまく動かせない。自分で歩くことができない。今こうやって、体重をかけたりしながら少しずつリハビリをしている状態ですね』

今年に入ってから、先月末までにヤンバルクイナが巻き込まれた交通事故は26件。去年の22件をすでに上回っています。

事故にあったヤンバルクイナは死んでいる状態で発見されるか、生きていても病院に来るまでに命を落とす場合がほとんどだという。

一命をとりとめ病院で治療を受けたとしても、怪我の程度によっては長期間のリハビリが必要な場合や野生に復帰することが難しい個体も珍しくない。

▽動物たちの病院沖縄・長嶺隆医師『例えば猫に襲われて、頭部を噛まれて両目が失明してしまったヤンバルクイナがいる。ケージの中では生きていけるけど、野生にはとても返せない。しかし、狭い場所では健康的には暮らせない。リハビリする施設がないなと。病院だけの施設ではとても足りないですし』

長嶺隆医師の病院ではヤンバルクイナ以外の希少生物の治療やリハビリも行っていて、病床が足りていません。

〈クラウドファンディングでヤンバルクイナの新たな施設を〉

この状況に立ち上がったのが長嶺医師とともにヤンバルクイナの保護に取り組んできた比嘉明男さん。

比嘉さんが理事長を務めるやんばる・地域活性サポートセンターが新たなリハビリ施設を建設するため今年7月にクラウドファンディングを始めた。

▽やんばる・地域活性サポートセンター・比嘉明男理事長『このエリアをいっぱい使いたいんです。治療したヤンバルクイナをこの施設でリハビリの場所として使いたい。1日でも早く機能回復して野生復帰できる施設にしたいと思っています』

今月30日までの期間で最終的な目標額は2000万円。施設は来年秋の施設完成を目指している。

▽動物たちの病院沖縄・長嶺隆医師『自分たちが作りたいリハビリセンターのどんなケージがいいのか、そこを考えなさいと(比嘉理事長が)言ってくれて、もう泣きそうでしたけど本当にありがたいなと思って』

▽やんばる・地域活性サポートセンター比嘉明男理事長『つないでいくことをしていかないといけない。我々の年代で止めずに”奇跡の森”と言われた”やんばるの森”をずっと守っていく。我々に課された課題というのは大きいと思います』

生物多様性が評価され、世界自然遺産の登録に至ったやんばるの森。

希少な生き物を守り豊かな自然を未来につなぐ取り組みだ。

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