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酒造所生き残りをかけた挑戦 酒税軽減措置の段階的廃止 

沖縄が世界に誇る名酒・泡盛。時間をかければかけるほど香りは芳醇になり味わいは甘くまろやかに変化し、その歴史はおよそ600年にのぼるとされています。

観光にも寄与してきた県内の酒造業界は、来年の沖縄本土復帰50年の節目に大きな転換期を迎えることになりました。それが酒税軽減措置の段階的廃止です。制度廃止までの経緯や酒造所の生き残りをかけた新たな挑戦を取材しました。

酒税の軽減措置は、沖縄の本土復帰による社会情勢の激変に伴い酒造所の経営強化や県民の負担軽減などを目的に導入されました。

現在、県内で製造販売される泡盛で35%、ビールで20%酒税が軽減されていて、例えばアルコール度数30%の泡盛1升瓶では189円、ビール350ミリリットル缶では14円酒税が優遇されています。

県内47酒造所全てが加盟する県酒造組合です。酒税軽減措置の段階的な廃止については、組合側から案を提示する苦渋の決断だったと話します。

沖縄県酒造組合新垣真一専務理事「うちの佐久本会長がよく言うのは決して「ベストな選択」ではないけど、「ベターな選択」であったのではないかという受け止め方であります。」

酒税の軽減措置は中身を変えながら11度延長され半世紀を迎えます。政府与党からは単純延長は厳しいとの声もあがり組合は危機感を感じていました。

新垣真一専務理事「もう、いくら自立を促しても聞いてくれないということで、パッとこれがもうゼロになるということはもう最悪の状況ですので。」

組合が示したのは10年を期限に段階的に廃止に持っていく案で、出荷量に応じて3つのグループに分けて軽減幅を変えています。

出荷量が1300キロリットルを超える大手のグループAでは2年後に現行の35%から25%に、中堅となるグループBは30%となりその後も段階的に引き下げられ2032年にゼロとなります。

いっぽう、全体の7割を占める小規模酒造所のグループCは経営への影響が大きいことなどが考慮され現行の35%が維持され10年後に廃止されます。

新垣真一専務理事「昨年でいいますと、45社中30社が営業赤字という形になっている。厳しい価格競争を強いられているこの酒税軽減がそのまま企業酒造所の利益になっているかというとそうでは無くて、それを使って安く提供して薄利多売、ぎりぎりの経営努力をしている。」

生き残りをかけて新たな戦略に打って出る酒造所もみられます。創業175年を迎えた新里酒造です。酒を熟成・保管するための倉庫に並ぶのは泡盛ではなく海外から買い付けた樽です。

新里酒造新里建二社長「若い方々が泡盛から離れているしかし、これを打開する何かをということで、ニーズのあるウイスキーに移行してやってみようかなと。」

県内の泡盛全体の出荷量は2004年度をピークに下がり続けていて、昨年度は最盛期のおよそ半分に。こうしたなか新里酒造では去年4月にウイスキーの製造免許を取得、その狙いをこう説明します。

新里建二社長「海外の方にとってウイスキーは世界的なお酒なのでとっつきやすと思います。それをきっかけに沖縄ではどういうお酒が飲まれているかということになってきたときに、泡盛だということで、新里はウイスキーもありますが、地元では泡盛というお酒を造っていることを海外の人にPRしていきたい。」

ウイスキーという新たな商品展開の一方で、これを呼び水に泡盛の販売にもつなげていく戦略を描いています。

市場開拓に向けて異なる酒造りに挑戦する動きは他にもあります。首里に蔵をかまえる瑞穂酒造が取り組んでいるのはラムです。

瑞穂酒造製造部商品開発・仲里彬室長「日本の5割以上のサトウキビが沖縄に集中している中で、サトウキビを原料にするお酒というのはラムですので、そこにいくのは自然の形かなと。」

「ONERUMプロジェクト」は県内8つの離島で作られたそれぞれの黒糖の個性を引き出したオリジナルラムです。原料・素材にこだわり海外の商品と比べても高値となっています。

仲里彬室長「飲酒人口も減る色んな商品も世界中からやってきて、今までと同じボリュームで売るのは無理。そうではなくて価値価格を上げていく。」

酒造所のブランド価値を上げるとともにラムの製造で得られた研究成果を活かして泡盛の新たな看板商品づくりに還元していくとしています。

来年の沖縄の本土復帰50年の節目の年から始まる酒税軽減措置の段階的廃止。かつてない荒波を乗り越えるため今後の10年間でいかに経営基盤を強固にしていけるのか、業界全体が大きな転換期を迎えています。

ビールについては現行20%の軽減措置は再来年15%となり2026年10月1日で廃止となります。

オリオンビールは4年5か月措置が延長したことに地元企業としての立ち位置を堅持しながら海外県外への発信強化、さらにはテーマパーク事業など地域雇用創出のサポートを含め企業価値を向上させていくとコメントしています。

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