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もずく漁・軽石との闘い180日 勝連漁協のウミンチュたち

去年10月頃から沖縄に漂着し始めた大量の軽石。県内の水産業は大きなダメージを受けました。県内一のもずくの生産量を誇るのがうるま市の勝連漁協です。今月から本格的なもずくの収穫が始まりました。様々な困難に直面しながら収穫の日を迎えた勝連漁協のこれまでの奮闘を振り返ります。

稲福正也支部長「やっぱり、今まで難儀してここまで育てたもずくだからね。収穫は一番楽しいわけ。頑張ってきたのが実になってるからさ、食べる人が増えてくれたら良い。」

去年11月。この日、うるま市の勝連漁協の漁師たちは総出でもずく網を張る海域のすぐ近く、津堅島に向かいました。島や勝連半島には大量の軽石が漂着していて自らの手で軽石の除去作業を続けていました。

漁師「船の循環に(軽石が)入って、これが詰まってエンジンがダメになる。取れるとこは取っておいて、すこしでも被害を少なくしないといけない。」

一見するときれいな海ですが、覗いてみると海中を漂う無数の白い粒、細かくなった軽石です。

勝連漁協津堅支部稲福正也支部長「海の中では軽石が浮いている状態なので潜っている最中に船が故障というのもあったりする。」

軽石の漂着はいつまで続くのか。先行きは見えないままでしたが春先の収穫に向けて網を張る作業は始めなければなりませんでした。

勝連漁協では船のエンジンが軽石で故障し動けなくなった場合を想定して1隻ではなくグループで出港する体制を取ることにしました。

「毎日、船1隻ではなくて2、3隻とかでグループで行くようにして仕事ができないとなると、前に進まないから。この先不安なんだけれど。」

問題は軽石だけではありませんでした。この時期、すでに原油価格が高騰し船の燃料費を直撃し始めていました。

船を出せば出すほどコストがかさみウミンチュたちはもずく漁を成功させなければと不安や焦りの中で準備を進めていきました。

もずく漁がスタートしておよそ2ヶ月後、明るい兆しが見えてきました。県内の軽石の漂着状況は少しずつ改善に向かい、勝連漁協でも漂着する軽石が次第に減っていたのです。

12月に設置されたもずくは、漁師たちの努力に応えるようにすくすくと成長。収穫はもう目の前です。

この日は海底に張った網の間隔を広げてもずくの成長を促しました。最後の追い込みです。

毎年、3月から5月にかけてとれるもずくは通称「早摘みもずく」と呼ばれ、強いぬめり気としっかりした食感が特徴。勝連漁協にとってまさに看板商品です。

稲福正也支部長「今年は結構順調じゃないかなみんな。自分たちのもずくを食べてほしいという気持ちが強い漁師たちはいっぱいいる。」

4月6日、待ちに待ったこの日がやってきました。

「今日は収穫だね。これが最後水揚げという形これを売って自分たちの給料になるんだけどね。頑張らないといけない時期だね。」

海底に張られた網からポンプに繋いだホースを使って丁寧にもずくを吸い上げていきます。収穫されたばかりの「早摘みもずく」この時期にしか食べられない海の幸です。

OTV仲宗根琢人記者「こちらが、今とれたばかりのもずくということで少しだけいただいてみようと思います。一本一本、食感がしっかりわかるくらい弾力があってすごく美味しいです。」

この日の収穫量は2.5トン。例年の初摘みのおよそ半分以下の量です。

これは新型コロナの影響による消費の落ち込みが続きもずくの需要もいまだ回復していないため収穫量を抑える必要があるからです。

1キロあたりの値段も以前の半分まで下がっていますがそれでも、美味しいもずくを届けたいという強い思いは変わりません。

稲福正也支部長「やっぱり、今まで難儀してせっかくここまで育てたもずくだから収穫は一番楽しいわけ。物も上等、太くて、歯ごたえも良い食感なのでぜひみなさんに食べてほしい。今の時期しか食べられないから。」

軽石の影響をめぐってはひじきの名産地、与那原町と西原町では今年の出荷を断念するなど水産業に大きな被害を与え続けています。

勝連漁協のウミンチュたちはきょうも軽石と闘いながら海に潜ります。

17日は県もずく養殖業振興協議会が定める「もずくの日」です。これまでは毎年平敷屋漁港でPRイベントをしていましたが、コロナの感染拡大の影響で3年連続で中止されていました。

今年はリアルイベントは開催しませんが、もずくの魅力を伝えたいと、テレビやラジオのCM、量販店でもずくの消費拡大に向けたPRを実施するということです。

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