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参院選沖縄選挙区 ”薄氷の勝利”を考える

今回の参院選沖縄選挙区は大勢が判明したのが午前0時で大接戦となりました。

伊波さんが27万4235票、古謝さんが27万1347票とその差は2888票でその差は僅かでした。

伊波さんが1期目の当選を果たした2016年は10万票、3年前の参院選ではオール沖縄が推す候補が6万票以上の差をつけましたが、今回は大幅に得票を減らし、逆に自公勢力の票が伸びて肉薄しました。

過去2回の選挙ではいずれも普天間基地の辺野古移設の是非が最大の争点となりました。

2016年の参院選では翁長雄志前知事が辺野古移設反対の一点で構築した枠組み「オール沖縄」がその勢いを維持していて、2019年の参院選は埋め立ての賛否を問う県民投票のあとに行われ、県民の声を一顧だにせず工事を強硬的に進める政府に批判が高まっていました。

しかし、新型コロナウイルスの流行で社会情勢は一変しました。

沖縄テレビが今回の参院選で実施した情勢調査では投票の際に重視する点として「経済や沖縄振興」の回答が最も多くなりました。

また内閣支持率を見ても岸田政権を「支持する」の回答が「不支持」を上回っています。

県民の関心事が新型コロナの影響でかつてない打撃を受けた県経済の立て直しへとシフトし、経済対策を実行する政権与党への期待感が表れているとみることができます。

▽伊波洋一氏〈当選確実の報を受けて〉
「6年前は大きな課題が新基地建設反対でしたし、それに焦点を当ててこの6年間やろうという中で、どうしてもやはり沖縄の問題として経済もあるし、沖縄県全体が発展する役割を6年という期間を頂きましたのでしっかりやっていきたい」

普天間基地の移設計画を巡っては移設反対を訴える伊波さんに対し古謝さんが容認を打ち出したことで対立軸は鮮明になりました。

しかし、それが有権者にどの程度重視され争点として活発な政策論争が行われたかは別で、経済や子育て政策、候補者個人の魅力など様々な要素が投票行動に反映されていると考えられます。

ただ、自民党はこれまで全県選挙で辺野古の賛否を明確にしていなかっただけに、容認を打ち出しながらも「オール沖縄」に肉薄した結果は前向きに受け止められているようです。

2カ月後には天王山の県知事選挙を迎えますが、自民党関係者は「辺野古を容認してもこれまでのような大きな反発を招くことはない」と県知事選にも姿勢を明確にして臨む考えを示唆しました。

「オール沖縄」は去年の衆院選で議席を一つ失い、選挙イヤーの今年も首長選挙で4連敗を喫していて、今回の選挙を落とせば瓦解しかねない状況でした。

関係者は「首の皮一枚ながった」と安堵していますが、後ろ盾とする辺野古反対の強固な民意が今回の選挙結果に表れたかどうかは必ずしも明白ではなく、かつて保守・経済界が参加したようにウィングを広げて求心力を回復していけるかがカギとなります。

両陣営とも県知事選の前哨戦と位置づけていただけに、選挙結果や有権者の投票行動を分析し態勢を構築していくことになりそうです。

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今年はロシアによるウクライナ侵攻を受けて安全保障への関心が高まり、台湾有事への懸念などから「防衛費倍増」や「軍備強化」といった声が大きくなっています。

▽沖縄国際大学・前泊博盛教授
「中台危機と言う形で喧伝される。そのことによって基地の重要性・必要性を訴えられてくる。しかし力による問題解決は力による報復を受ける。それを沖縄自ら認めていくのかという事が今回の選挙で問われていたと思います」

沖縄戦と戦後の苦難の歴史を踏まえ「基地のない平和な沖縄」を強く訴えていた伊波さんには、政府に対して平和外交を促し沖縄が二度と戦火に巻き込まれないよう力を尽くすことが求められていると言えます。

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今回の投票率は50.56%と過去最低だった前回の参院選を少し上回りましたが低調です。

50%の投票率で当選するために過半数を得ると計算すれば25%以上で、つまり当選者は有権者の4分の1の票しか得られていないことになります。

▽沖縄国際大学・前泊博盛教授
「4人に1人に示された民意によって国が運営されていく。本来総意でなければならない政治が”4分の1民主主義”になっています。せめて50%を超えてほしいと思います。それが次の県知事選挙では全員が参加して決断してく。そういう選挙にしてほしい」

選挙イヤーの今年は9月11日は県知事選挙と自治体の議員の選挙である統一地方選挙が県政史上初めて同じ日に迎えます。

政治は私たちの暮らしにも密接していることから、投票の機会を放棄せず一票を投じてほしいと思います。

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