中国軍事演習「想定外」の方向に 与那国島で漁の自粛を決定

台湾海峡を巡るアメリカと中国との軍事的緊張の高まりは与那国島や波照間島に近い海域に弾道ミサイルが落下する事態となりました。一夜明けた与那国島では漁業関係者が不測の事態に備え軍事演習が続く間の漁を見合わせる事を決めました。
4日夜、緊急会見を開いた岸防衛大臣。「中国は本日15時ごろから16時過ぎにかけて9発の弾道ミサイルを発射した模様です。このうち5発が、わが国のEEZ(排他的経済水域)内に落下したものと推定されます。」
中国が軍事演習で発射した弾道ミサイル5発が、波照間島の南西に位置する日本のEEZ・排他的経済水域に落下。さらに別の1発が与那国島の北北西およそ80キロのEEZ外の海に落下しました。
中国の弾道ミサイルが日本のEEZ内に落下したのは初めてです。
この事態に、台湾に近い与那国島の漁協は5日早朝から対応に追われました。
与那国漁協「お願いします、作業中止です。」港にいる組合員には出漁せず、すでに漁に出ている漁船は速やかに港に戻るよう無線などで呼びかけました。
当初は軍事演習の期間中も漁を続ける方針でしたが、弾道ミサイルの発射は想定外で、今後の演習内容も定かではなく対応を変えざるを得ませんでした。
与那国町漁業協同組合嵩西茂則組合長
「艦船か何か行う演習かなと思っていたんですけど、台湾を横断して着弾したということなので非常に危険度が高いと思います。死活問題どころか、人命にかかわりますから。」
朝の時点で漁に出ていた4隻の船とまだ連絡が取れていませんでした。
今回の問題について松野官房長官は5日の閣議後の会見で、我が国の安全保障と国民の安全にかかわる重大な問題だと中国を強く非難しました。
松野官房長官
「きのう外交ルートを通じて中国の行動を強く非難し、抗議するとともに、軍事訓練の即刻中止を求めたところであります。」
漁協からの連絡を受けて夜通し、漁に出ていた組合員たちが港に戻ってきました。
戻ってきた漁師
「戦闘機よ。すごいなず、っと飛行機飛んでいるよ。」
こちらの漁船は与那国島の北東およそおよそ50キロの海域で操業していて、漁協から無線連絡を受けました。
「漁業者みんな帰ってこいと言われて、は?何も聞いていないけどなって。飛行機が朝までずっと飛んでいた。沖で見たので20機くらいいたんじゃないかな。同じ飛行機がずっとぐるぐる回っていたよ。」
漁に出ていた漁船4隻は昼前までに全て港に戻り、被害はありませんでした。
今回の中国の軍事演習について与那国町や漁協には国や県からの詳しい情報はないままで、漁師たちもいらだちを隠せません。
「国の方針とか県の方針が全く見えない状況があるので、それをつぶさに発信してほしい。」
嵩西茂則組合長は組合員を危険にさらすわけにはいかないとして今月8日まで漁を自粛することを決めました。
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