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コロナ全数把握見直し 導入の懸念と課題は? 高山医師に聞く

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政府は新型コロナの感染者の届け出をこれまでの「全数把握」から自治体の判断で届け出る対象を重症化リスクの高い人に限定できるよう見直す方針を発表しました。
県内の医師からは沖縄での全数把握の見直しは慎重に考えるべきだという声が上がっています。

感染症が専門の県立中部病院の高山義浩医師に聞きました。


Q.なぜ全数把握見直しの声が出た?
発生届を出している医療現場、そして発生届を受け取っている保健所が双方で急速に感染者数が増えてきたということで負担が負担感が増したということが大きいと思います。特にこの第7波では右肩上がりで増え続けていきましたので、先の見えない恐怖感もあったんじゃないかなと思います。
緊急避難的な解決策として、発生届を出す対象者を絞り込むという提案が出てきたわけです。医療現場発生届を出している医療現場と受け取ってそれを処理する保健所と双方の負担感を軽減していくということだと思います。

例えば沖縄県内で新規の陽性者のうち高齢者は15%にすぎません。85%は比較的元気な若者たちが多いということですね。ですから「重点化」をしたとすれば、県内で出さなければならない発生届は2割ぐらいに減ると思います。
ただ届け出の対象外になるのはハイリスク者以外ということですが、そもそも氏名と性別、生年月日、そして住所、電話番号、この届け出で良いとされています。ですから医療機関の負担感が軽減されるんじゃないかと思われるかもしれませんが、実際医師が入力してる、疲弊してるとこもあると思いますけれども事務方へと業務分担するということが医療界の力として必要だと思います。

保健所が疲弊してるといいますが、本当に必要な業務であるならば都道府県の他のセクションから応援に入るべき。必要なことであれば人材を厚くしてし続けるというのが行政の本来の姿です。保健所は発生届を処理し健康状態の確認の連絡をしなければならない。ただ沖縄県においては保健所がそれをやっているのではなく、県の健康観察センターに一元化していますからこの件において沖縄県に関しては保健所の負担は生じてはいないと思います。


Q.全数見直しを導入した場合の課題は?
まず最大の影響は感染者の情報が行政に入らなくなる。大半の方は軽症のまま推移するので、その方々にとっては必ずしも健康観察が行われない健康相談の窓口がないということは大きな問題ではないと思いますが、中には中等症以上になって入院が必要になったり、あるいは重症化する人たちも出るわけです。
ですからこの全数把握が行われなくなることによって、健康観察も行われなくなる。そして、感染者の方々にお送りしている専用の医療相談の窓口もこの方々は使えなくなります。そして受診が必要になりましたというときにはその方の状態に応じて適切な医療機関を紹介したり、あるいは交通手段がない場合には、県が搬送車両も準備してきましたけれども、これらのサービスも受けられなくなります。

もし対象外の方々が体調が悪化したりとか、あるいは健康不安があるというときは直接自分で探して医療機関に行くしかありません。患者も大変になりますけれども、実際には救急外来に直接行く軽症者も増えると思いますので、医療逼迫が加速しかねない問題もあります。患者側にも医療側にもあまり良いことはないように思います。
感染症法に基づいて発生届が出されて行動制限のお願いをする、自宅で療養してくださいと伝える、こうしたサービスが行われなくなることによって出歩く人たちはどうしても増えてくるだろうと思います。特に重点化の対象外になるのは特にアクティブな若者たちですから、地域流行が大きくて医療が逼迫している時に、あえて行動制限を緩和する施策をとるというのは本当に医療の負担を軽減することになるのか、冷静に考えた方が良いと思います。

Q.観光客への対応にも影響する?
観光客については現時点でも行政から連絡を取ったらもう既に飛行機に乗って自宅に帰ってしまっていたりということが起きています。とはいえ個別に電話番号を行政側が把握して「ホテルの延泊お願いします」とか「飛行機には乗ってはいけないんですよ」と個別にご連絡を差し上げてるわけです。重点化されることによって、そうした電話がかけられなくなりますのでほぼ自由行動になっていく恐れがあります。もちろん協力的な観光客の方々もいて感染予防について高い意識を持ってきていただきたいと思います。ただ個別の連絡が行われないということは行動制限がかからなくなり感染していても旅行は続けられる。飛行機に乗ることも法的には制限がかからなくなるわけですね。観光客本人にとっては良いかもしれませんが、周囲への感染予防は難しくなるというところも注意が必要だと思います。


Q.沖縄において全数把握見直しの適用は慎重になるべき?
行政が直接確認をしなくなるために、だいぶ今も緩んでるところあると思いますけれどもさらに感染が広がりやすくなっていくだろうという危惧はあります。沖縄の流行状況は既にピークアウトしてきています。もちろん学校が再開されてきてますので再流行しないかどうかのそこは十分注意して見る必要があります。しかし少なくとも右肩上がりで増え続けている本土の逼迫感と沖縄の逼迫感は違うと思います。今の沖縄の状況であえて感染が広がる可能性のある措置を取るというのは、せっかく今減り始めてるときに勿体ないと思います。

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