入館料アップも増大し続けるコスト 沖縄美ら海水族館の現状は
エネルギーコストや原材料費はますます高騰し影響が長期化しています。沖縄観光の人気をけん引する沖縄美ら海水族館は1日から入館料の値上げに踏み切りました。新型コロナの影響による来館者数の減少だけでなく、値上げの背景には様々な要因がありました。
多い時には年間およそ378万人が訪れた人気の観光施設、沖縄美ら海水族館。2020年以降は新型コロナウイルスの流行による緊急事態宣言中の休館や観光客の減少で来館者数が激減しました。
観光客も戻り始めた10月1日、水族館では大人料金でこれまでの1880円に300円上乗せした2180円とするなど、入館料を値上げしました。
松本さおり記者「開館以来初めての値上げに踏み切った美ら海水族館。その裏側では、何が起きているのでしょうか。」
値上げの波の中、私たちが見ている水槽の裏側は水族館はどのような状況になっているのか。沖縄美ら島財団の佐藤圭一さんに案内してもらいました。
沖縄美ら島財団佐藤圭一博士
「基本的に安くなっているものはほとんどないです。全てが値上がりしてますんで。」
沖縄の海の多種多様な生き物たちを飼育するために必要な飼料、エサ代も高騰が続いています。
「冷凍の鮮魚をストックして毎日必要な分だけ切ったり解凍して使うんですけど、例えばこれジンベエザメのエサ、オキアミです。これもなかなか獲れなかったり、あと漁業者も燃料費がかなり上がってるっていうのでエサ代も確実に上がっていきますね。」
すべて海外から輸入しているヤリイカなど、イカ類は世界的に価格が上昇していて、そのほかのエサも入手自体が困難な状況になっていると話します。
「環境の変化なのか、あるいは漁業者が減少したことによるのか、いろんな理由があると思うんですけど。なかなか国内で餌を安定的に入手するというのも難しい状況になっています。」
エサ代以上にコストがかかっているのが電気代などの光熱費です。美ら海水族館の水槽の海水は海から引いています。
「ここは海から取り込んだ海水を各水槽にポンプを使って送水してる場所になります。このポンプは24時間運転し続けることになます。ポンプは全て電気で動いてますので、かなり大きな電力を使います。」
海水をくみ上げるためのモーターや循環させるためのポンプ、水槽の水の冷却や照明も電気で稼働しています。
「生物ですから。物ではないので、生きているということで、それを24時間管理しなきゃいけない。ですから電気も常に動かした状態でなければいけない。」
水族館では年間1000万kwh前後の電力を消費していて、これは一般家庭のおよそ2300世帯分の年間消費量にあたります。
今回の値上げの背景には開館20年を迎えた水族館の維持修繕費用の確保が大きな要因となっています。
「機械は塩害地ですね。海も近く、中でも海水を使ってるってことで。すごく腐食とか。部品の劣化が激しいんですね。古くなればなるほど、コストがっていくんですね。この水族館ももう20年経ってますので修繕のコストっていうのはもう年々上がっていきます。」
2022年2月、水族館を管理する県は料金引き上げのための条例の改正案を県議会に提出し、今月からの入館料の引き上げが決まりました。
それから半年が経過し、観光の回復で来館者数も徐々に戻りつつありますが、この間にロシアのウクライナ侵攻による世界的な原油価格の高騰、円安の影響も大きくなり、今後電気代など様々なコストがどこまで増大するか先行きは不透明です。
「全ての費用がコストが高騰してまいりましたので私達もできるだけ費用、維持管理のコストを下げる努力はしています。今回値上げをさせていただきますけれども最大限の努力をして展示環境を良くすること。皆さんに常に新しい発見があるような展示を心がけていきたいと思ってますので、ぜひ足を運んでいただきたいなと思います。」
様々な値上げの波が起きている中、訪れる人たちに海の生き物の魅力を伝え楽しんでもらうため、水族館の努力は続きます。
あわせて読みたい記事