猫500匹の行方は 経営難のNPO「ケルビム」の現状
長年猫の保護活動続けてきたNPO法人「動物たちを守る会ケルビム」。活動資金の不足などで経営が困難になりながらも保護された猫たちの命を守るために事業継続を模索しています。
猫の保護活動を行う団体としては県内最大規模のNPO法人「動物たちを守る会ケルビム」代表理事を務める中村吏佐さんです。中村さんは沖縄に移住した際、犬や猫の殺処分が多い現状を目の当たりにしたことがきっかけで保護活動を始めました。
「避妊・去勢(手術)をせずに産ませて捨ててしまったとかちゃんと飼えなくて逃してしまって野良猫になったとか。どこかが引き取らないと処分されてしまうと。そういった子を1頭でも救いたいということで私たちは引き取り保護を続けてきたんです。」
現在もおよそ500匹の猫を保護していて、その多くが本島北部の希少生物を捕食するとして駆除の対象にされた猫たちです。殺処分ゼロを目指し20年余りに渡って活動に尽力してきましたが、ケルビムは今かつてない経営危機に直面しています。
中村吏佐代表理事「いつもギリギリの状態でやってはいたんですが、やはりいくら募集しても新しい獣医師が来ない状況で経費だけがどんどん毎月300万とか赤字になっていくわけですよ。」
活動資金の主な収入源となっている動物病院が新型コロナの影響で休業を余儀なくされたことに加え、去年2月ごろには獣医師が退職するなどして診察の数が激減。
1月にはNPOのスタッフや残っていた獣医師1人も退職することになり病院が運用できなくなったことでNPO自体の経営が困難となりました。また従業員への給料が払えず現時点で800万円あまりの未払いがあり、中村さんは自身の財産を売却して完済することを決めました。
中村代表理事「大変皆さんの生活も脅かしてしまって申し訳ないと思っております。2月中には必ず全額払えるようにしたいと思います。」
こうした状況下で懸念されているのが保護された500匹の猫たちの命です。現在はNPOのスタッフやボランティアが毎日病院や保護施設を訪れ猫の世話をしているほか、治療が必要な猫は別の病院の獣医師に診てもらうなどしています。
また、ケルビムの経営状況を知った動物病院の患者や全国の支援者から餌や新しいケージなど多くの支援が集まり始めているといいます。
中村さんは、ボランティアによる猫の世話と寄付を引き続き呼びかけつつ今後は行政の支援も求めていくことで事業の継続を図りたい考えです。
「皆さんの猫を助けたいという気持ちにもおすがりして、行政が率先して里親探しのイベントをしてくださるとかボランティアに対して援助をくださるとか、猫ちゃんが元気に過ごせて里親が一頭でも決まるようにしていきたいと思っています。」
取材にあたっている仲宗根記者です。ケルビムの経営悪化は主な収入源となっている動物病院の経営難が要因?
500匹の猫を飼育するためには餌やトイレにかかる費用はもちろん、猫の体調が悪くなった場合は医療も必要となるので相当な額の資金が必要で寄付金だけでは賄えません。
そこでケルビムは独自で獣医師を雇うことで医療コストを下げつつ、病院も経営して収入を得るという形を取ってきました。
病院の経営が傾いたのは獣医師の不足?
去年3人いた獣医師のうち2人が連続して退職することとなったため、新たに獣医師を募集していたのですが、収入の関係からかなかなか集まらなかったようです。
NPOで保護した猫の治療と一般診療の猫の治療もあり、もともと獣医師の負担が大きかったんですが、残った1人の獣医師の負担がさらに大きくなり退職。病院を休業せざるを得なくなりました。
元スタッフからは今の体制ではNPOの存続が難しいのではという声もあがっている?
1月、元スタッフのメンバーは代表の中村さんを解任し県外の保護団体のメンバーを迎え入れるなどして再建を図ろうとする計画を発表しました。ただ、現職のスタッフも再建を図ろうと努力していることは事実で、その後に開かれた団体の総会では中村さんを代表として存続させたいという意見が多数となりました。
また、現職のスタッフやボランティアからは「県外の団体の協力が得られるのであれば、別の団体を作って新たに保護活動を始めたほうが全体の受け皿の拡大につながるのでは」という意見も上がっています。
ケルビムはこれまで長きにわたって犬や猫の殺処分を減らすことに尽力してきました。今後の再建案についてはまだ決まっていないことも多いですが、今いる500匹を守るため、そしてこれからも多くの動物の命を救えるよう私たちも何かできることはないか考えていきたいと思います。
多くの猫を保護しなければならないこうした状況を生み出す背景には猫を捨ててしまうなど飼い主のモラルが関係していることも忘れてはなりませんケルビムの今後にしっかりと目を向けていきたいですね。
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