沖縄戦体験者の憂い ウクライナ侵攻1年
戦闘に巻き込まれて多くの住民が犠牲となっているウクライナの現状を78年前の沖縄戦と重ねる人がいます。「二度と戦争を起こしていけない」と語る沖縄戦体験者の思いを聞きました。
瀬名波榮喜さん「戦争というのは全ての破壊者だと私は言っているんですよ。」
78年前の沖縄戦で学徒兵として動員された瀬名波榮喜さんです。ロシアによるウクライナ侵攻によって多くの犠牲者が出ている状況を沖縄戦に重ね、胸を痛めています。
「飛行機で爆弾落とされる地上では(戦闘を〉やるわけでしょ、面と向かって戦うわけでしょですから。空からも海からもそれから陸上からも全て破壊をやっているわけですね。」
住民が戦闘に巻き込まれ4人に1人が犠牲になったと言われている沖縄戦。瀬名波さんは当時、16歳で県立農林学校の生徒で学徒兵として飛行場の建設に動員されました。
「石山を壊して岩を持ってきてそれを潰して粉にして滑走路の方に敷いて2000Mの滑走路を造ったんですけどね。それは重爆撃呑龍という大きな爆撃機がありましてそれを飛ばすためだという事を我々は聞かされておりました。」
また軍国教育によって学ぶ内容は一変したと言います。
「中等学校に入ると最初の2週間は軍事訓練でしたよ軍人として捕虜になったらいけませんよと捕虜になるという事は最大の不名誉ですよ。」
当時、アメリカ軍の捕虜になることは「恥」という軍の教えが少年や少女だった学徒兵から一般の住民にまで刷り込まれ、自ら命を絶つ強制集団死などによって多くの犠牲者が出ました。
瀬名波榮喜さん「生きて虜囚の辱めを受けずという言葉によってどれだけ多くの軍人があるいは住民が亡くなったかと長引けば長引くほどね住民の犠牲者が多くなる。」
ウクライナでもロシアによる無差別な攻撃によって多くの住民が戦闘に巻き込まれ犠牲となっていますが、いつ終わりを迎えるのか今もその見通しは立っていません。
国際情勢が不安定な中、瀬名波さんが特に不安を抱えているのは現在、政府が進めている自衛隊の増強です。
「ミサイル基地を作るとかどんどん軍備を増強もうこれはまさに沖縄戦前夜ですよ。」
政府は防衛の空白地を埋めるとして2016年に与那国島に自衛隊基地を設置し2019年には宮古島、そして3月には石垣島にも自衛隊基地が開設されます。
去年、アメリカの下院議長が台湾を訪問したことに中国が反発し与那国島周辺の海域にミサイルを打ち込むなど台湾を巡ってアメリカと中国の緊張が増しています。
こうした中で自衛隊とアメリカ軍の一体化を目指している政府は昨年末に安保3文書を改訂し敵基地を攻撃する「反撃能力」の保有を閣議決定しました。
瀬名波さんは反撃能力を沖縄が保有し、さらに台湾で有事が起きた場合再び戦争に巻き込まれるのではないかと危惧しています。
「敵基地攻撃だと向こうに基地があるからと撃ちましょうとそういう風な考え方ですよね。私は戦争の火種になる恐れは十分にあると思います。」
沖縄を二度と戦場にしてはいけないという思いで元学徒兵たちは2018年に沖縄戦の実相を後世へ伝えようと元全学徒の会を結成。去年には犠牲となった学徒兵1984人の名前を記した活動誌を発行しました。
(当時)瀬名波さん「学徒の声なき声に耳を傾けて二度と沖縄戦みたいなことが起きないように二度と沖縄を戦場にしてはいけない。」
そして1月、元全学徒の会は沖縄を巡る状況に警鐘を鳴らすため緊急の声明文を出しました。
(声明文)「国民の緊迫度を高め自ら戦争を引き起こそうとしているような状況と戦前が重なる。軍拡ばかりが前面に押し出され、住民の被害に対する思いは微塵もない」
「戦争は始まってしまったら手が付けられない大勢の人の命が奪われ双方の国に大きな被害を出す。平和が一番大切だという沖縄戦の教訓を守ってもらいたい」
瀬名波榮喜さん「沖縄戦の体験からしましてあれほど悲惨な惨憺たる苦痛を二度としたくない我々の願いは再び戦争はあってはいけない。」
瀬名波さんは沖縄戦を経験したからこそ戦争の無意味さを訴え平和を求める声を上げるべきと話します。
「〈戦争に〉敗者も勝者もないですよ。ロシア見てください何万人という人命を失っています。ウクライナはもっとですよね。戦争を起こすのが人間ですからね人間が起こすことを人間が解決できないはずはないと思うんですよ。」
ロシアによるウクライナ侵攻からまもなく一年。戦争を止めて平和な世界を実現していくために私たちに何が出来るのか…今こそ1人1人が考える必要があります。
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