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1日の消費電力は一般家庭の100年分 製鉄業は今

ロシアのウクライナ侵攻による燃料価格の高騰などで暮らしや産業に大きな影響を与えています。
1日に一般家庭のおよそ100年分もの電力を使用する県内唯一の製鐵会社拓南製鐵を取材しました。

沖縄市にある県内唯一の製鉄会社「拓南製鐵」。

県内で発生した鉄のスクラップを電気で溶かして鉄筋などを製造しています。

電気炉では6万6000ボルトの高圧の電力で鉄を溶かします。

電気炉電極による溶解を開始して4分、使用した電力は1300キロワットアワーに達しています。

一回の溶解で使用する電力はおよそ1万9000キロワットアワーで一般家庭の1日の平均使用電力300キロワットアワーの60倍以上になります。

こうして製鉄を繰り返し、1日に使用する電気の量は一般家庭の100年分です。

▽拓南製鐵・八木実代表取締役社長
「電気炉メーカーとしては電力がないと製造できない。日ごろから沖縄電力さんとは情報の共有化ですとか協力関係のもとでやっておりますので」

電気炉による製鉄会社として創業以前から沖縄電力と信頼関係を築き上げてきたこともあり、電気料金の値上げには理解を示しています。

ただこれまで製品価格の2割ほどだった電気代のコストは約2倍の4割にまで膨らみ、経営に大きく影響しています。

▽拓南製鐵・八木実代表取締役社長
「今後の値上げの幅等々ありますので、これは今シビアに試算してる状況です。ただ、厳しいことには間違いないです」

今年度の電気料金は昨年度と比較して165%に。

来年度はさらに1.5倍になると試算されていますが、製品価格にそのまま転嫁することは容易ではないと考えています。

▽拓南製鐵・八木実代表取締役社長
「電気料金アップ分が全て製品に転嫁できるわけでもないし、単純にそのコストアップ分を製品に転嫁するっていうのはまたユーザーもユーザーでお立場がありますので、なかなかスライドはできませんけど、自助努力とユーザーへの丁寧な説明、ご理解、それを今やってるという状況です」

東京商工リサーチ沖縄支店が先月実施した調査では直近1カ月の電気料金が前の年の同じ月より上がった企業は8割以上。

そのうち電気料金の増加分を「価格転嫁できていない」企業はおよそ97%に達していて、急激な電気料金の上昇分の価格転嫁が追い付いていないことがわかっています。

東京商工リサーチは「今後、価格転嫁が進まないと電気料金の値上げが企業収益に深刻な影響を及ぼす可能性が強まっている」と指摘しています。

▽拓南製鐵・八木実代表取締役社長
(電気料金アップ分の価格転嫁)それをすることによってまた経済がしぼんでもいけないし、それは企業としての自助努力と転嫁には限界があるわけですから、どうしてもこれは国とか県とか、行政機関の配慮が必要」

八木社長は沖縄電力の値上げに理解を示す中で、今求められるのは国や県による支援と話します。

▽拓南製鐵・八木実代表取締役社長
離島県という立場と、沖縄電力にしても風力だとか、あと原発だとか、そういう手段がない。規模の面もそうですし、そういった意味からすると沖縄電力さんだけの問題でもないし、沖縄の個々の企業の問題じゃなくてやっぱりこれは国として県として、トータル的な観点で沖縄県における電力事情については考えていただきたい」

政府は先月から電気料金の負担を軽減する支援策を実施していますが、特別高圧の大口契約を結んでいる事業者は対象外です。

県は独自の支援策として国の支援から漏れた特別高圧の事業者に対する支援の実施に向け、来年度予算に11億3700万円あまりを計上しています。

▽拓南製鐵・八木実代表取締役社長
「(県の支援は)大変ありがたいことで、県による地場企業への支援援助っていうのは、地場企業の育成にも繋がるし、弊社だけじゃなくて沖縄県のその製造業っていうのが全国に比べて中小規模の企業が多いので、そういった意味では全国一律の国の施策っていうのはちょっと厳しいものがあるのかなと」

鉄スクラップから新たな製品を作り出す循環型社会の形成に取り組みながら、建設業をはじめとする産業の発展をけん引してきた拓南製鉄。

かつてない電気料金の値上げの波を乗り越えようと企業努力を続けています。

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