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陸上自衛隊駐屯地発足に揺れる石垣島 配備容認する保守層の懸念とは

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海洋進出を強める中国を念頭に進められてきた南西地域への自衛隊の配備。

集団的自衛権の行使を可能とする安保法制の施行や反撃能力の保有を掲げた3文書の改定などこの間、安全保障政策は大きく変容しています。

こうした軍備増強が急速に進む動きに自衛隊の配備を容認する人たちからも懸念の声があがっています。

尖閣諸島の周辺を連日のように航行する中国の船。16日も4隻が日本の領海に侵入しました。

中国が海洋進出を強める中、政府は2010年の防衛大綱で南西諸島の防衛力強化を明記し第一列島線と呼ばれる島々への自衛隊の配備を進めてきました。

尖閣諸島を行政区域に抱える石垣市では自衛隊の配備は抑止力になると評価する声がある一方で、緊張を高めかねないと反対する声もあり賛否がわかれています。

八重山漁業の専務理事伊良部幸吉さん。今では尖閣諸島周辺に漁に出る漁師は少ないと話します。

▽八重山漁協・伊良部幸吉さん
「(中国公船に)威嚇されたり追尾されたり妨害を受ますので、そういったことをされるといくら海保がガードしているからと言ってちょっと怖いのかなと」

去年、アメリカ連邦議会の下院議長が台湾を訪問した際には中国がこれに反発して軍事演習を行い与那国島の近海にミサイルが打ち込まれ、漁師たちが漁の自粛を余儀なくされました。

こうした事態は決して他人事ではないと伊良部さんは考えています。

▽八重山漁協・伊良部幸吉さん
「(当時は)天気が悪かったので操業している船は少なかったんですけど、たまたまです。天気が良くてたくさんの船が操業していたらもしかしたらっていうのがありますから大変危惧しています」

こうした中、陸上自衛隊の駐屯地ができることで抑止力になると期待していますが、かえって軍事的な緊張を高めてしまわないか不安も感じています。

▽八重山漁協・伊良部幸吉さん
「(自衛隊開設は)刺激にはなっているかと思いますけどちょっと怖いですよね。与那国も宮古もありますし連携してなにかの抑止につながればなと」

石垣市の中山義隆市長は今月10日に沖縄テレビの単独インタビューに応じ、配備の意義を強調しました。

▽中山義隆市長
「尖閣諸島は日本の領土ですけど、そこが危機的な状況になってきているという意味で石垣島への配備はそこに対する抑止力というか、相手方に対する抑止力には十分になると思っています」

自衛隊の配備を巡って反対する市民が懸念しているのは有事の際に標的となって住民が巻き込まれるリスクが高まること。

こうした声に対し中山市長は「配備されていない方がむしろ危険だ」とする考えを示しました。

▽中山義隆市長
「標的になる可能性があるから島には(自衛隊を)置かない方がいいという話がよく出てきますけど、置かなければ逆にそこから上陸されて占領されて相手方の出先みたいな感じになる可能性はありますので、その方が危険だと思っています」

石垣駐屯地には地対艦・地対空の機能を持つミサイル部隊が駐留します。

政府が昨年末に改定した安保3文書では敵基地攻撃能力・いわゆる反撃能力の保有が明記されていて、今後石垣駐屯地に配備されているミサイルが反撃能力を備えた改良型のミサイルに更新されることも考えられます。

▽記者質問
Q石垣に反撃能力は必要か
▽中山義隆市長
「石垣において相手の領土を直接攻撃できるような能力のミサイルというのは必要ではないと思います。ただこれは専門的な見地になりますので、私の判断でいるいらないという事は出来ない」

反撃能力の保有には自衛隊の誘致に取り組んできた保守層からも懸念の声が上がっています。

石垣市議会の砥板芳行議員です。砥板さんは去年まで八重山防衛協会の事務局長を務め配備計画を推進する立場で活動をしてきました。

▽砥板芳行市議
「相手国に届くミサイルが配備をされるという事で攻撃されるリスクっていうのはもう格段に高まってしまった。今まで(政府が)説明してきたものとは全く根底から変わるものじゃないかと懸念しています」

石垣市議会では去年、反撃能力の保有に反対する野党が意見書を提案。

一方の与党からも国に十分な説明を求める意見書が上がり、その両方が可決される異例の事態となりました。

▽砥板芳行市議
「これまで説明されていなかったことが、もう頭ごなしに計画されていくという状況に非常に危機感を持っていた。野党側・与党側にもやはり慎重な意見があるという事を表しているのではないかなと思います」

去年、アメリカ軍と自衛隊は与那国島で初めてとなる共同演習を実施。

沖縄に駐留するアメリカ海兵隊は部隊を改編し、有事が起こる前から小規模の部隊を離島に展開する海兵沿岸連隊を創設することにしています。

日米の軍事一体化がさらに進めば離島の自衛隊基地がアメリカ軍の拠点となり、南西諸島がアメリカの戦争に巻き込まれる事態を招かないか、砥板さんは懸念しています。

▽砥板芳行市議
「台湾有事についてはこれを回避する議論が全く見えずに台湾有事にも備えるという議論ばかりが先行して、最前線に立たされている、最も近い場所にいる先島諸島が本当に捨て石にされてしまうのか」

国際情勢に翻弄され、急速に変容していく安全保障政策に揺れる石垣島。

そこで暮らす人々が戦闘に巻き込まれることなく、平穏な暮らしを続けていくためにはどうしたらよいのか。

軍備増強の一辺倒にならないあらゆる取り組みが求められています。

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