公開日

遠く離れた沖縄を想う郷愁の歌 浜千鳥「chijuyaa」

アメリカで開かれた映像祭で上映された映像作品「chijuyaa(チジュヤー)」。

遠く離れた故郷への思いを表現した沖縄民謡「浜千鳥」をアレンジしたもので、ハワイと沖縄、それぞれの文化を取り入れた作品となっています。

映像を手掛けたハワイのウチナーンチュブランドン・ウフグスク・イングさんに作品に込めた思いを聞きました。

沖縄民謡「浜千鳥」をアレンジした楽曲「chijuyaa」。

ギターやオーボエなどのメロディーに合わせ、ハワイの雄大な自然を背景に踊っているのは琉球舞踊です。

この作品を手掛けたのはハワイで暮らすウチナーンチュ、県系4世のブランドン・ウフグスク・イングさん。

作品づくりのきっかけは猛威をふるった新型コロナでした。

▽ブランドンさん
「パンデミックのなかで遠くの友達や家族に会えない気持ちもあって。好きな人、愛している人に会えない気持ちも入っている」

郷愁の想いを浜辺で鳴く鳥の姿に重ね合わせた民謡「浜千鳥」はブランドンさんにとっては大切な場面で演奏してきた特別な曲です。

2017年、ハワイで初めて執り行われた沖縄出身捕虜の慰霊祭にブランドンさんの姿がありました。

沖縄戦末期、アメリカ軍は捕虜となった沖縄出身の兵士3000人余りをハワイへ移送。

一部の捕虜は故郷へ帰れぬまま収容所で命を落とし、遺骨の行方も分かっていません。

ブランドンさんの祖母・大城文江さんは当時、沖縄出身捕虜たちと交流があり、それが縁で慰霊祭に参加しました。

▽ブランドンさん
「ホノウリウリ(収容所跡)で歌ったときに本当に意味が(自分の中で)変わってきた。ただの踊りの曲じゃなくて。故郷から離れて家族と会えない。戦争に反対する気持ちになった」

アーティストとして活動するブランドンさんは、最近になって母方の姓「大城」を名乗って活動しています。

▽ブランドンさん
「実はお母さんの時代まで差別がありました。お母さんも(以前は)自分の名字が大城で、ちょっと恥ずかしかったという話があった。ウフグスク(大城)と書いたら知っている人はウチナーンチュだと分かってくれるし、分からない人は話題にもなる。アイデンティティを見せたいから」

子どものころから沖縄の古典音楽に親しみ、うちなーぐちを継承する活動に取り組んでいるブランドンさん。

「なぜ熱心に沖縄を思い続けられるのか」そう尋ねると沖縄の黄金言葉(くがにくとぅば)で説明してくれました。

▽ブランドンさん
「『慶良間見ゆしが、睫毛見ーらん』 慶良間諸島は見えるけど、自分の睫毛は見えないという。多分私たちが遠くにいるから沖縄の事をとても大切にしている。誇りを持ってほしいですね。私たちの文化、歴史、言語はとても大切だし美しい。次の時代、次の世代に無くさないように皆でがんばりましょう。マジュン・チバラナ(一緒に頑張ろう)という気持ちを伝えたい」

ハワイのウチナーンチュが世代を超えてつなぐ沖縄への思い。

独自の文化の素晴らしさや受け継いでいく大切さを私たちに訴えています。

あわせて読みたい記事 ヤンバルクイナ

あなたへおすすめ! クマノミ 小 クマノミ 大きい