「愛する息子のために頑張る」42歳グルメサイトブロガーのスキルス胃がん闘病記 前編
国民の2人に1人が発症するともいわれている「がん」。
自身の闘病の記録が誰かの為の役に立てばと取材に応じてくれた女性がいます。「私は負けず嫌いで転んでもただでは起きない」「愛する子どものために頑張らなきゃいけない」病と向き合う率直な思いを聞きました。
4月19日、豊見城の総合病院・友愛医療センターに入院することになったユッキーさん(仮名)です。
東京に本社を構えるIT企業に勤務している42歳で、夫と6歳の息子の3人家族です。
仕事柄、自身のブログも立ち上げていて中でも全国の飲食店の情報を発信するグルメサイトは多くのフォロワーもいます。
食べることが何よりの楽しみだったユッキーさんですが、半年ほど前から食が細くなったことを気にかけて、今年3月に近所のクリニックで胃カメラの検査を受けました。
▽ユッキーさん
「病理検査に出しますということで細胞をとられて・・・。胃がんの可能性・リンパ腫の可能性、あるいはピロリ菌でちょっと炎症がひどいことは考えられますと・・・」
胃カメラの鎮痛剤の影響でその時は事態がうまく整理できていませんでしたが、鎮痛剤が抜けて冷静になった途端に絶望感に襲われたと振り返ります。
「もし癌だったら・・・」
検査の結果が出るまで不安を抱えて過ごす日々。最も気にかけていたのは4月に小学校に入学する息子のことでした。
▽ユッキーさん
「きょうこの時間、子どもとどう楽しく過ごすとか、私が残りの時間でこの子に何を教えられるかみたいなことはやっぱり考えちゃいましたけど・・・。明日死ぬかって言ったらそうでもなくて、少しは時間が残されているからそこをどう有意義に過ごすかみたいなところはすごく考えましたね」
胃カメラの検査からしばらくして、癌細胞が見つかったことが知らされました。
▽ユッキーさん
「逆にすっきりしましたね。覚悟は決まったというかもう早く結果が知りたかったので、じゃないと前に進めない」
知人の医者の勧めもあって、友愛医療センターで手術・治療を行うことを決めます。
初診から8日後に入院し翌日に手術する日程が決まりました。
ユッキーさんが入院したその日の午後、医師たちは手術に向けたミーティングを開いていました。
▽友愛医療センター・二宮基樹医師
「ごっそりきちっと取るだから必要なものをきちっと逆に言えば出して残す。それ以外は全部取るというのが郭清」
手術は胃を全て摘出する事が示されました。
執刀するのは二宮基樹医師。日本胃癌学会会長を歴任した胃がんのエキスパートです。
▽友愛医療センター・二宮基樹医師
「スキルス(胃がん)のなかではかなり早く見つかったので、絶対に治すという気構えで正確なリンパ節郭清をやって、合併症を起こさずにやりたいと思います」
二宮医師が初診から9日で異例の速さで手術を決断したのはスキルス胃がんであると診断したからでした。
通常の胃がんとは何が違うのでしょうか。
▽友愛医療センター・二宮基樹医師
「スキルス胃がんは発見された段階で4分の3はもう(他にも)散ってしまっている。それぐらい恐ろしい癌である。だから、我々はもう一刻も1週間の遅れを気にするぐらい。内視鏡下生検で確定診断がつかないことも多く診断が難しい。これがもう一番成績を悪くしている根源ですね」
通常だと胃がんは胃の粘膜に癌細胞ができますが、スキルス胃がんは粘膜の下をはっていくことが多いため内視鏡検査でも診断がつかない場合が多いといいます。
さらに、進行性も早く見つかった時点で転移している恐れがあります。
見つかりにくい癌とされているにもかかわらず、なぜすぐに診断できたのか。
それは奇跡的な偶然も味方しました。
▽友愛医療センター・二宮基樹医師
「1個だけ潰瘍があったんですよ。内視鏡医が見事にその潰瘍周辺を狙ってバリアとなっている粘膜が除かれた部分を生検されましたから、見事に下に潜んでいた癌細胞をちゃんと当てたんですね」
手術の前日、なぜ取材を受けてくれたのかユッキーさんが思いを明かしてくれました。
▽ユッキーさん
「私は癌になったから不幸ですけど、そのあとはすごくついていて人に恵まれている。一番最初のスタートは自分に違和感があって、比較的にスムーズに今回は病院に行って見つかって今ここに座っていられる。若い世代の癌は進行が速いとよく聞くので、少しでもそういう人を減らせないかなと」
自分の経験が誰かの役に立ちがんの早期発見に繋げてほしい。
込み上げてくる思いは自身のがんに打ち克ってやるという決意にも聞こえました。
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取材に協力して頂いた友愛医療センターで2020年から今年4月までにスキルス胃がんの症例は18例ありました。
スキルス胃がんは進行した状態で見つかるケースが多く、二宮医師は非常に厄介な癌だと強調します。
癌の早期発見につながるのが定期健診です。
この3年間、新型コロナの影響によって定期健診を受けていなかったり、体に不調があっても受診を控えるケースが目立ち、進行した状態で癌が見つかるケースが増えていると指摘します。
友愛医療センターがまとめたデータによりますと胃癌における手術が出来なかった事例は去年は2割にのぼります。
胃がんは基本的に自覚症状がありませんが、定期健診で見つかる可能性が高く二宮医師は定期健診の重要性を強調するとともに受診を呼び掛けています。
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