「首里の織物」「琉球古典音楽」沖縄から新たに人間国宝2人を認定
国指定の重要無形文化財の保持者「人間国宝」が新たに県内から2人誕生しました。
人間国宝となったのは首里織の第一人者・祝嶺恭子さんと琉球古典音楽の大湾清之さんです。
那覇市出身の祝嶺恭子さんは高校卒業後、進学した東京の大学で幅広い染織の技法を学び1962年に沖縄に戻り、首里高校の染織科で勤務しながら首里の織物の技能を修得してきました。
▽祝嶺恭子さん
「戦後、沖縄はたくさんの織物があると言われながら、戦争でなくなって、手元に、身近なところに物がなかったんですね。しかも、それを受け継いで教えてくれる人ももうほとんどいなかったんですね。ですから、何とか調査をしてそれから学ぶしかなかったんです」
1992年には文部省の研究員としてドイツに赴き、ベルリン国立民族学博物館に所蔵されている琉球王朝時代の染織を調査しました。
▽祝嶺恭子さん
「先人の知恵と、それから工夫とか、そういうものが盛り込まれたものというのは、もう驚くほど今の私達がとても思いつかない、真似のできないようなものを持っているんですね。のめり込めばのめりこむほど、まだまだ学べるのがたくさんありまして、もう一生かかってもこれはできないんじゃないかと思うぐらい」
ドイツでは食事をとる間も惜しんで調査に没頭し、帰国してからは図案を元に織物を復元させ新たな創作へと発展させてきました。
▽祝嶺恭子さmm
「誰が見ても再現できるような形で設計図も全部書いてありますからね。これを見て織物をやった経験のある方だったら再現できると思う」
首里の織物は人間国宝の宮平初子さんが去年亡くなったことで重要無形文化財の指定が解除されましたが、祝嶺さんの認定とともに改めて指定されました。
祝嶺さんは沖縄が誇る染織文化の継承に意欲を示しました。
▽祝嶺恭子さん
「二、三日眠れなかったですね。返事をしていいものかどうかですね。まだ不安は大きいですけど。先輩から受け継いだこと、それから先人がね築いてきたものを、少なからず私はいろいろ調査をして身につけた分は繋げていく使命があるんじゃないかなって自分で自覚しました」
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読谷村出身で琉球古典音楽・安冨祖流の師範大湾清之さんです。
このほど文化庁から琉球古典音楽の重要無形文化財保持者・人間国宝に認定されました。
▽大湾清之さん
「全く前触れがなくていきなり連絡がありましたので。自分の使命だと言われればそれは謹んでお受けしますと返事をしました」
1966年、大湾さんは安冨祖流・絃聲会の当時の会長で「組踊」の人間国宝だった故・宮里春行さんに師事しました。
三線や笛など、琉球古典音楽の研鑽を積む一方で戦後の混乱などで途絶えた楽曲の復元にも尽力しました。
▽大湾清之さん
「紙面に書かれた楽譜から導き出していくというのは経験も必要だが古典というのは必ず型がありますので。型の理解が深まれば深まるほど謎というか答えが出てくる」
大湾さんは2010年から2年間県立芸大の教授を務め工工四の運用規則を研究。
残された論文や音源を辿りながら伝承が途絶えていた「コハデサアブシ」(2005年)や「長ヂャンナ節」(2017年)など4曲を復元しました。
▽大湾清之さん
「地道な活動に調査の目を向けていただいた事自体が私には驚きでもあったし、ありがたいなと思いました。これをしっかりした形で保存して次に継承していくのが私の使命なんだろうなと思います」
琉球古典音楽の人間国宝認定はこれまでに島袋正雄さん(2018年死去)、照喜名朝一さん(2022年死去)、野村流の中村一雄さんが認定されていて、大湾さんは4人目となります。
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