伝統行事×環境保全 糸満大綱引でSDGs
先週、4年ぶりに開かれた糸満大綱引。伝統行事の継承とともに今年は綱引きを通じて綺麗な海とサンゴを守る新たな取り組みが進められていました。
綱引きの盛り上がり4年ぶりの開催となった糸満大綱引には3万人あまりが参加して大盛り上がりを見せました。
参加者
「激熱です!」
「雨降っているんですけど、寒いより暑い!」
「勝った綱です!」
全長180メートル、県内最大級の大綱は恩納村と糸満市で育ったある作物がつかわれていました。
恩納村の畑に赤土流出の防止策として植えられた「ベチバー」です。
この日、ベチバーの収穫体験を通して赤土流出の対策とSDGsについて考えようと糸満市の兼城中学校の生徒たちが訪れました。
恩納村役場桐野龍農業環境コーディネーター
「畑の周りにああやって植えることで、ここから赤土が流れ出るとき直接排水溝に流れ出ない。これで50パーセント削減できるといわれている」
農業環境コーディネーターの桐野龍さんは学生だけでなくリゾートホテルで働くスタッフの研修などで恩納村の赤土対策について講話などを行っています。
農業環境コーディネーター・桐野龍さん
「耕したままの状態だと雨降ると、こうやって流れ出ます。川をつたって海に出ます」
流れ出した赤土はモズクや海ぶどうの養殖への影響だけでなく、沖縄のリーディング産業、観光にも大きく影響します。
そうした影響を考えれば、赤土からサンゴを守る取り組みの大切さは理解できるものの、対策を農家が実践するかどうか、ある課題を抱えています。
農業環境コーディネーター・桐野龍さん
「(植えているだけでは)農家はメリットがありません。あれを植えても。負担しかない、だから持続性が無くて・・・」
ベチバーが販売できれば農家の収入になり、進んで植える農家が増えればそれが赤土対策に繋がる。
そこで、新たに企画されたのが・・・
「糸満大綱引に使おうと話しが進んでいて、今回みんなに作ってもらう束を糸満の綱引きにもっていって、買い取ってもらう予定です」
収穫から乾燥までの工程を体験しました。
兼城中学校の生徒
「自分たちで結んだものを使って、綱引きを盛り上げたい」
綱引き本番を12日後に控えたこの日、恩納村で育ったベチバーが糸満市に運ばれました。
糸満市赤土等流出帽子対策地域協議会・徳里亮農業環境コーディネーター
「私たちとしてもはじめての試みなのでまずは流れを作ってみようと」
恩納村と糸満市それぞれで収穫されたベチバーはおよそ800キロになりました。
糸満市字糸満にある10の地区で小綱が作られ、それをあわせて全長180メートルの大綱が作られます。
使用される藁の総重量は7トン。これまで金武町で栽培された藁を使用していましたが、農家の後継者不足の問題などで大綱を作るだけの量の確保が難しくなっていました。
糸満大綱引行事委員会・上原裕常委員長
「外国から仕入れたりしていまして、県内にそういうのがないかと探しているときにこういう話があって、我々も渡りに船と(ベチバーを)使用させてもらいました」
藁に代わるベチバー、その感触は。
小綱作りの参加者
「ベチバーは長さがそろっていて全然湿っていない。(ひと息に)5回くらい編めるからだいぶスピードアップしている」
編みやすく、強度もあってこれまでの藁と遜色ないとお墨付きをもらいました。
小綱作りには恩納村と共同で赤土対策に取り組む沖縄科学技術大学院大学OISTの関係者や恩納村で行われた体験学習に参加した兼城中学校の生徒の姿もあり、新たな交流も生まれていました。
糸満市赤土等流出帽子対策地域協議会・徳里亮農業環境コーディネーター
「7トン使うのを今回1トンだったけど3トン、5トンまで頑張ろうとかであれば県内全域に普及していくと思いますし、いい試みになっていくかと思いました」
恩納村の農業環境コーディネーター・桐野龍さん
「伝統文化の継承と赤土流出対策の環境問題の解決が結びつくと好循環が生まれるし、県内全体で活動できることになるので、大きな可能性があるんじゃないかと思っています。(ベチバーが)綱引きに使われたら面白いだろうなと思っていたのが本当に実現したので感動しています」
海とサンゴを守る取り組みは伝統文化の継承という新たな役割も担うことで持続可能な取り組みへと発展しています。
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