計画白紙に…どうなる南部のゴミ処理施設の問題
私たちの暮らしに欠かせないゴミの処理に関する問題です。本島南部を中心とした6つの自治体は新たなごみ処理施設の建設計画を断念し、建設場所の選定をやり直しています。ごみ処理施設の建設を巡っては過去にも自治体どうしで合意を得るまで10年以上を要した経緯もあります。3つの市と3つの町に暮らすおよそ26万人のゴミ処理問題の現状を取材しました。
与那原町にある東部環境美化センター、与那原町や西原町、八重瀬町、南城市のゴミ焼却を担います。年間の受け入れ量はおよそ3万2000トン、一日あたり平均で100トン余りが持ち込まれます。
焼却炉の耐用年数はおよそ30年ですが、こちらの施設は供用開始から38年が経過し設備の老朽化が進んでいます。
東部環境美化センター東部環境衛生課安里勉課長「傷みが激しい所もありますのでゴミ焼却ですから高温にさらされたり、色々とどこを修繕して延命化を図ろうかという事でちょうど取り組んで、今後の見通しを立てる段階に来ています。」
施設の延命化を図らなければいけないのには理由があります。東部環境美化センターを管轄する南部広域行政組合は今年5月、2027年度の供用開始を目指していたごみの焼却施設と最終処分場の整備計画を白紙撤回しました。
4年前に策定された計画では八重瀬町内の養豚業者が移転した跡地に焼却施設と最終処分場を建設する予定でしたが、業者と費用の面で折り合わず活用できる補助金もない上、養豚施設の移転先で環境アセスの手続きが新たに必要な事が判明し計画断念に追い込まれました。
南部広域行政組合は最終処分場の建設地については引き続き八重瀬町で検討し、焼却施設については現在、最終処分場を抱える南城市と次の八重瀬町を除く4つの自治体で候補地を探すことにしています。
糸満市と豊見城市に暮らす13万人の家庭ごみを受け入れているのが糸豊環境美化センターです。
糸豊環境美化センター喜友名等糸豊環境衛生課長「攪拌することによってゴミの質を統一化する。そうすることによって安定したゴミ焼却ができて、夜も攪拌作業は欠かせない。」
1998年に供用を開始した施設は築25年、耐用年数の30年には達していませんが、老朽化は進み時間的な余裕はありません。
「階段状になっている火格子というんですけど、これが海外の製品で。部品は25年変えていませんので、本来ですとそろそろ変える時期に来ている。」
電気設備などを含め設備の更新に必要な費用は数十億円規模に上るといいます。
「このクレーンも供用開始当初からのクレーンで、修繕も時々行いながら。何とか持たせてはいるんですけど。」
現在稼働している2つの施設に代わる新たな施設整備は待ったなしの状況ですがゴミ処理施設の建設は簡単ではありません。最終処分場の建設地を巡っても過去に自治体どうしの軋轢がありました。
「正直に言って大変厳しい状況」Qということは独自で(処理)やらざるを得ない?「どうしても外すというのであればそれしかない。」
そして最大のハードルが受け入れ地域との合意形成です。
住民「喜んでゴミ処理施設を持ってきてくださいという人はいないでしょう。」
最終処分場は最初に南城市が受け入れ、その後は持ち回りとする輪番制で合意、決着まで13年を要しました。
当時からゴミ処理施設の一元化に携わる南城市の古謝市長は事業の意義を強調します。
南部広域行政組合理事長古謝景春南城市長「ごみ問題というのは人間が生活していく上で避けては通れない問題ですから、当然どこかが作らなければ処理はできない。」
「南城市が最初に最終処分場を作った時にも地域が反対で、膝を交えてずっと説得をして、やると決めたら3カ所同意してもらえました。」
ゴミ処理施設につきまとう”迷惑施設”とのイメージを払拭する為、跡地利用を含めた施策に力を入れる考えです。
「最終処分場もそうですし、焼却施設もそうだし地域にとってもプラスになるような施策を地元と相談しながら方向性を定めていきたいと思っています。」
一方、不安材料もあります最終処分場の合意から10年、紆余曲折の経緯を知る首長は古謝市長だけです。用地の確保や地元の合意形成などそれぞれの首長がまとめきれるかは見通せていません。
行政組合は当初8月までに焼却施設の建設候補地を推薦するよう対象の自治体に伝えていましたが、検討に時間がかかるなどとして結果が出揃わず締切を延期しました。
「自治体どうしの約束ですから。我々(南城市)も他市町村の最終処分を受け入れていますから断るということは、(信頼関係が)ないに等しい当然守らなければいけない。良い方向に向けるよう頑張っていますから必ずや1年以内に方向性を定めたい。」
週明けには首長による理事協議会が予定されていますが手続きを進められるかは不透明です。26万人のゴミ処理問題はいま大きな岐路に立っています。
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