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辺野古埋め立てる「公益」とは ”代執行訴訟”の争点を読み解く

普天間基地の移設に伴う名護市辺野古の埋め立てをめぐる代執行訴訟の第1回口頭弁論が今月30日に開かれるのを前に、国と県双方の主張や争点についてお伝えします。

代執行訴訟は軟弱地盤の改良工事に向けた設計変更を承認しない県を相手取り国が起こしました。

国の主張が認められれば裁判所が県に設計変更を承認するよう命令し、県が従わなければ国が代わりに承認します。

この裁判で仮に県の敗訴が確定すれば、軟弱地盤を含む大浦湾側での工事が可能となり、辺野古移設の阻止を掲げる玉城県政にとってその手だてを失うことになる重大な局面を迎えることになります。

今回は代執行訴訟を提起する要件ともなっている辺野古の埋め立てる「公益性」について県と国の主張を見ていきます。

玉城知事
「恐らく国のいう公益と県民の考える公益と言うのは私はかなり乖離があるのではないかと思うんですね」

今月11日、代執行訴訟を起こした国の主張に反論し全面的に争う姿勢を示した玉城知事。

代執行訴訟の要件の1つ「公益性」について「国との乖離がある」という見解を示しました。

地方自治法245条の8の1項の「代執行」の要件は「放置することにより著しく公益を害することが明らかであるとき」と定められています。

国は訴状で
「知事が承認しない状態が続けば我が国の安全保障と普天間飛行場の固定化の回避という公益上の重大な課題が達成されない」
「騒音被害等による普天間飛行場の周辺住民の生活に深刻な影響が生じる」「放置することで著しく公益を害することは明らか」
などと主張しています。

県の答弁書では普天間基地の危険性の除去や周辺住民の生活環境を改善することは「極めて重大な課題で国が何よりも優先してなすべき義務」と指摘しています。

その一方で辺野古の工事を進めることと普天間基地周辺の危険性の除去は相容れないものだと主張しています。

県の答弁書より
「元々5年で終わるはずだった埋め立て事業が最短でも12年かかることになり、さらに長期化する可能性は高い」
「完成するまで普天間飛行場が固定されるから、危険性の除去という公益侵害は極めて抽象的」

さらに、安全保障上の公益という点においては「具体的な事実や事情の主張立証がされておらず、安全保障とさえ言えば司法審査は全て不要と言わんばかりの姿勢」と厳しく批判しました。

玉城知事会見
「県民に受忍限度を超えている状況をこれ以上さらに押し続けるわけにはいかないという沖縄の現状に鑑みた」

さらに答弁書では沖縄戦を経てアメリカ軍が沖縄の土地を強制接収するなどして基地が形成され、全国のアメリカ軍専用施設の7割が集中している現状や、基地があるゆえの事件事故、環境汚染の被害などを訴えています。

辺野古の埋め立てを進めることの「公益」について安全保障や外交・防衛上の理由を持ち出す国に対し、県は「辺野古移設に反対する民意こそが公益だ」と反論しています。

県の答弁書では仲井眞元知事が2013年に辺野古沖の埋め立てを承認した翌年に行われた県知事選挙で、移設阻止を訴えた翁長前知事が10万票の差をつけて当選したことや、その後も玉城知事が移設反対を訴えて当選した経緯を説明。

さらに、2019年の県民投票で投票総数のおよそ72パーセントが反対に投じたことに触れ、県民の民意は「公益」として考慮されるべきとしています。

玉城知事
「基地が建設されていく事に対する県民の反対の民意は県民投票や県知事選挙でも明確に出されているわけです。我々県民の公益という事はしっかり主張できるのではないかと思う」

県の答弁書より
「何が地域住民にとっての公益であるかの判断を裁判所を含めて沖縄県に押し付けることが許されるのか」

裁判所は「公益」をどのように判断するのか代執行訴訟の大きなポイントとなります。

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