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心ひとつにつなぐ10年に一度の組踊

南城市の大城区で10年に1度区民によって上演される組踊があります。地域が大切にしてきた芸能を継承するため心を1つに大舞台に臨んだ人たちの思いと10年後に向けて種を撒いた初めての取り組みを紹介します。

11月12日、南城市大里の大城区で上演された組踊「大城大軍」。

大里按司に倒された大城按司の息子、若按司と家臣が後の尚巴志・佐敷按司と協力して大里按司を倒す物語で、大城区の伝承をもとに創作されたと言われています。

戦後の混乱で1946年を最後に途絶えていましたが、台本がアルゼンチンで見つかり、のちに人間国宝となる宮城能鳳氏の指導も受けて1989年に復活しました。

10年に1度の上演を迎える今年、早くから活動を始めようと意気込んでいましたが新型コロナの影響で予定が遅れ、稽古がスタートできたのは5月になってからでした。

今回、ほとんどの出演者にとって組踊は初めての体験。主役の若按司を務める島袋克基さんもその一人です。

大城若按司役・島袋克基さん
「組踊をするのは今年が初めてなんですよ去。年から若按司(主役)をやりたいなって。もうずっと去年から『俺がやる』って」

300年つづく綱曳、旗頭にエイサーなど、行事・芸能が盛んな大城区。島袋さんも幼いころから親しんできました。

大城若按司役・島袋克基さん
「エイサーをずっとやっていて、エイサーはいま担い手が足りずに結構潰れてるところがあるんですが、絶対崩したくなくて。それと一緒で、エイサーより組踊の方が昔からあるものなので、組踊も伝統なので」

娯楽や価値観の多様化を背景に伝統の継承が年々難しくなる中、次世代の担い手を育もうと新たな取り組みが行われました。その名も「子ども組踊」です。

考案したのは地謡を務める大城貴幸さんです。

子ども組踊を考案した大城貴幸さん
「なるべく子どもたちに関わってもらって、その後でまた大人たちを見るっていう習慣があれば憧れを持ってやりたいなっていうふうになるかなという思いから、この子ども組踊を考えました」

琉球古典音楽家として活躍する大城さんが、その知見を活かして指導に当たりました。

大人たちが演じる組踊の”ダイジェスト版”として上演される子ども組踊には、小学校入学前の6歳から6年生まであわせて18人が参加します。

子ども組踊を考案した大城貴幸さん
「組踊のセリフは”唱え”という独自の抑揚があるものなので、やっぱり言葉とか難しいと思うんですけど、遊びの中で唱えてる子たちもいるので、そうやって真似したくなるようなものが組踊の良さなのかなと思って。そういう部分から取り入れていっています」

子どもたちの中で、ひときわ存在感を放つのが普天間空海くんです。

小学4年生にして堂々とした演技で稽古の空気を引き締める空海くんもまた、伝統を受け継ぎたいと燃えています。

普天間空海くん
「自分がちょうど今年10歳だからだから見るのも初めてだし、知るのも初めて組踊に出られるって知って。10年に一度って聞いて、できるんだったら、ちっちゃいときからやりたいなって思ったから自分は始めました。10年後は20歳になるから若按司をやりたいです」

子ども組踊では大役の佐敷按司を、大人と一緒に行う組踊では子役として佐敷按司の家来を務めます。

組踊上演の当日、会場には区の内外から10年ぶりの上演を心待ちにしていた多くの観客が詰めかけました。

子どもたち
「これからダイジェスト版組踊『大城大軍』をご覧いただきます」

衣装を身に着けた子どもたちは練習とは別人のような表情で観客の前で堂々とした演技を披露しました。

「大城大軍」がいよいよ幕開けします。

大里按司に殺された大城按司の仇を討ちたい息子の若按司と外間之志(家臣)。

後の尚巴志・佐敷按司の力を借りて大里按司のいる大里城に迫る。

若按司の長刀の一振りで大里按司を討ち取る。

劇中の台詞
「うしちりて互に踊て戻やびら(皆連れだって誇らしく踊りながら帰ろう)」

区民
「やっぱり、大城の大軍が最高です」
「もう感激です。後継者がどんどん少なくなっているものだから若い人たちが小さいころから組踊に親しむのは非常にいいことだなと思ってね」

大城若按司役・島袋克基さん
「ちょっとほっとしましたね。結構練習は厳しいときもあったんだけど成功させるためにと思ったら、全然ありがたいのかなと思っています」

子ども組踊を考案した大城貴幸さん
「10年に一度っていうのはいろんな負担があるんですけど、次世代に向けてできる取り組みまで今回できたことが本当に良かったなと思います」

普天間空海くん
「めちゃくちゃ緊張しました」
Q10年後もやりたい?「10年に一度のやつでとっても嬉しくて、観客の声も聞いたら逆にとっても楽しくなった。次ももっとやりたいなと思いました」

10年に一度の大舞台で心を一つに伝統をつないだ区民たち。

10年後を年後を見据えて撒いた種も確かに芽吹きました。

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