米海兵沿岸連隊MLRが沖縄で発足 小規模で離島に展開する作戦を遂行

沖縄に駐留するアメリカ海兵隊は15日、部隊の一部を改編し海兵沿岸連隊・MLRを発足させました。
有識者からは「沖縄の基地負担の軽減に逆行する動き」という指摘も上がっています。
金武町にあるアメリカ軍キャンプハンセン。海兵隊の第3海兵師団司令部と第12海兵連隊がMLR・海兵沿岸連隊に改編され、セレモニーが開かれました。
ピーター・エルトリングハム第12海兵沿岸連隊司令官
「第12MLRは我々の任務と労力の重要な進化を象徴しています。我々はここ第一列島線に居ることを誇りに思いいつ、でも必要な事態に対応できるよう部隊である」
MLR・海兵沿岸連隊は対艦ミサイル部隊を含む歩兵部隊で、アメリカ軍は小規模離島などに兵力を分散して配置するEABO(機動展開前進基地作戦)と呼ばれる戦略に力を入れています。
軍近年、沖縄本島や先島諸島では自衛隊とアメリカ軍によるEABOの共同訓練も頻繁に実施されています。
MLRは当初2025年までに改編するとされていましたが、前倒しされた背景について安全保障が専門の沖縄国際大学の野添文彬准教授は「米中の対立が起因している」と見ています。
野添文彬准教授
「一つは中国に対抗するために一刻も早くアメリカとしては戦略であったり、あるいは戦力体制を整えたいという狙いがあるんだと思います。MLRを非常に重要な拠点である沖縄に立ち上げたい狙いがあるんだろうと思います」
アメリカ軍は台湾有事や中国の海洋進出を念頭に沖縄での戦略見直しを進めていて、野添さんはMLRの改編もその一つと見ています。
野添文彬准教授
「日本列島から台湾フィリピンにかけての第一列島線においてはアメリカの軍事的優位が崩れているわけですから中国の侵攻を食い止める拒否的抑止という事が非常に重視されている」
「第一列島線」とは中国が海洋上に独自に設定した軍事的防衛ラインで、九州から沖縄本島そして、宮古島や石垣島などに及んでいます。
アメリカ軍のEABOは第一列島線上の小規模離島でMLRの部隊を運用する事で中国の海洋進出をけん制したい狙いがあると見られます。
クリスチャン・F・ワートマン第3海兵師団司令官
「MLRが西太平洋に居ることで効果的な抑止力なり危機が生じた場合の対応力も高まると我々は考えています」
一方、こうした部隊の運用はアメリカ軍基地や自衛隊基地のみならず空港や港湾など民間施設も拠点になり得ると野添さんは指摘します。
野添文彬准教授
「民間施設なども含めて使用して、そこで戦力を立て直して中国に対抗するというそういう分散化とか、そういったことを戦略の中心に置いているわけですね」
政府は昨年末に閣議決定で改定した安保三文書で民間施設の活用を謳っています。
こうした軍事を優先する動きは沖縄のさらなる基地負担に繋がりかねないと野添さんは指摘します。
野添文彬准教授
「空港であったり港湾というのは民間の経済活動生活のための非情大事なインフラなわけですから、そういう所が訓練によって影響を受けるという事は避けなければいけない」
アメリカ軍も参加して現在行われている自衛隊の統合演習では全国各地の民間空港が初めて使用されています。
15日は那覇空港が攻撃を受けたと想定して自衛隊那覇基地では穴の空いた滑走路を復旧する訓練が実施されました。
自衛隊担当者
「滑走路と言うのは我が国防衛の中では非常に重要なインフラでありますインフラの機能を維持していく事については非常に重要な能力機能であると考えている」
民間施設の使用も防衛のためやむを得ないという姿勢は沖縄の基地負担をさらに重くする恐れがあります。
アメリカ軍再編による在沖アメリカ軍の統合計画ではMLRに改編された部隊は当初、来年グアムに移転予定でした。
その代わりに移転する部隊はまだ決まっていません。
野添文彬准教授
「(MLRという)小規模の部隊で色んなところで活動して訓練するという部隊が出来る事によって、人々の生活への負担っていうのは高まる可能性はあるわけです。グアムなどへの海兵隊の移転ということもやっぱり加速化させて、目に見える沖縄の基地負担の軽減というのを進めていかなければ、沖縄の人々の負担感っていうのは増すばかりではないかなと思います」
沖縄の基地、そして、民間施設の軍事利用が急速に進むなか政府が掲げる沖縄の基地負担軽減に向けた議論は置き去りにされたままです。
安全保障を掲げ沖縄軍事力強化が推し進められていくなか有事の際、沖縄が前線に立たされ再び戦場とならないように政府やアメリカ軍の動向を注視していかなければなりません。
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