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オスプレイ墜落 またも突きつけられる「日米地位協定の壁」

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オスプレイの墜落事故では乗っていた隊員の捜索や機体の回収には地元の漁師たちも加わっていますが、県内で起きた過去の事故ではアメリカ軍により警察も現場への立ち入りを制限されました。

今回の対応の問題点や過去の事故から見る捜査の壁・日米地位協定について有識者に聞きました。

オスプレイの墜落事故の事故を受け、地元屋久島漁協の漁師などに協力を要請した海上保安庁。

乗っていた隊員の捜索や機体を回収するため船を出した人たちが次々と機体の残骸などを引き揚げました。

捜索に当たった釣り船業者
「(部品は)全部燃料の匂いが臭かった。潮目、潮と潮がぶつかる場所にまとめて浮いている感じ」

住民が捜索に当たる状況はこれまで県内で起きたアメリカ軍機の墜落事故と異なっています。

2016年、名護市安部の浅瀬に墜落した際には現場は規制され、白い防護服に身を包んだアメリカ軍関係者が機体を回収。

また、2004年に沖縄国際大学にアメリカ軍のCH53ヘリが墜落した事故でも「安全装置に放射性物質が含まれている」として、防護服を着た兵士により機体は回収されました。

県内で起きた事故との対応の違いについて沖縄国際大学の前泊博盛教授は今回の捜索体制の危険性を指摘しています。

沖縄国際大学・前泊博盛教授
「海の場合と陸の場合の違いなのか、あるいは沿岸部、近い場合とねそうでない場合が違いがあるのかとはありますけど、何が載っていたかもわからないような状況で捜索に加わるっていうのは軍用機の場合非常に危険ですね」

今回の事故について放射性物質の危険性を問われた木原防衛相は、オスプレイのエンジン点火装置にも他の航空機と同様に放射性物質の「クリプリトン」が使用されていることを明らかにした上で、放出される放射線量も極めて小さいことから人体や環境への影響は問題のないレベルだと強調しました。

また、放射性物質の有無などについて現地で調査する予定はないとしました。

沖縄国際大学前泊博盛教授
「当初の段階では乗員は5人という説も8人という話も錯綜しましたよね。こういうことが、当たり前のことを当たり前に情報が共有されていないことの証左だと思います。目撃情報が先に発信をされていて、当局からの情報提供が非常に希薄だったという、あるいは後手に回ったというところ。これも今回の事故の特徴だと思います」

また、地元の漁師たちが回収した機体の一部とみられる残骸はアメリカ側に引き渡されました。

日本側は事故の捜査のための重大な証拠を手放した形です。

これまで県内で起きた墜落事故でもアメリカ軍は現場を規制し機体を回収。

2017年、東村高江でヘリが炎上した事故で沖縄県警の現場検証が実現したのは機体の撤去作業が終了した事故から9日後のことでした。

沖縄国際大学・前泊博盛教授
「国内法においては事故が起こったときには、航空機事故調査委員会というのが立ち上がって、第三者機関によってこの原因が究明され、そして事故防止策として提起がなされてくるという、この一連の過程が飛ばされてしまっている」

日米地位協定の合意議事録では日本は基地の外であってもアメリカ軍の財産について捜索、差し押さえ、検証などを行う権利を行使しないことが明記されているからです。

沖縄国際大学・前泊博盛教授
「全体として国内法を適用するというのが原則ですね。しかし日本だけが原則不適用という。これが主権国家として大丈夫かと指摘をされている部分」

県が行った他国の地位協定調査ではドイツ、イタリア、イギリスは事故の捜査を自国が主体的に行っていることがわかっています。

沖縄国際大学・前泊博盛教授
「イギリスでも米軍機の墜落あるいは事故の際には、地方警察が現場を制圧をして、アメリカ側には一切手を出させないと。ドイツではドイツが現場を規制して調査に主体的に関与する。イタリアではイタリア検察が証拠品を押収する」

アメリカ国内にとどまらず、ノルウェーやオーストラリアでも乗員が死亡する事故が起きたオスプレイ。

日米地位協定にのっとった対応が続ければ、新たな事故も引き起こしかねないと前泊教授は警鐘を鳴らします。

沖縄国際大学・前泊博盛教授
「これだけ事故が繰り返されてるのにその原因究明、それについて非常に甘いのではないか。アメリカ側に任せているとその解決が先延ばしされて、そして欠陥機のまま運用される可能性が非常に高い」

日本の主権が及ばない”日米地位協定の壁”が、こうした事故が起こるたびに突きつけられます。

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