21万戸停電・浸水・高潮も 台風6号の教訓 災害に強い沖縄観光を考える
ことしの夏、大規模な停電や断水を引き起こすなど猛威をふるった台風6号は、観光の面にも大きな課題を突き付けました。災害に強い沖縄観光を考えます。
慶佐次キャンプサイトオーナー瀬良垣亜加音さん
「一番大きな被害を受けたのはグランピングではあるんですけど、外の骨組みが、今は木になっているんですけどこれが全部折れてしまって」
東村にある慶佐次キャンプサイト。台風でグランピング施設が倒壊しました。
瀬良垣亜加音さん
「台風6号の前にきた台風ではそんなに影響がなかったので甘く見ていた部分があって」
台風6号は今年7月末から1週間にわたり各地に甚大な被害をもたらしました。
8月2日に那覇市では最大瞬間風速52.5メートルの猛烈な風を観測。
県内の総戸数の4割近くとなる最大21万戸が停電しました。
また断水が長期間に及んだ地域もあり、県民生活に大きな打撃を与えました。
一度は通り過ぎると思われた台風6号。しかし異例のコースをたどります。
台風は本島地方を暴風域に巻き込みながら先島諸島に進んだあと宮古島の北で停滞。
その後Uターンするように進路を東に変えて本島地方に再び接近し、大雨・高潮の被害が出ました。
名護市では線状降水帯が発生し国道が冠水しました。
過去最も高い2.26メートルの潮位を記録した南城市。
クルマエビの養殖場では海水が防波堤を越え敷地内に流れ込みました。
養殖場では6000万円の被害が出たほか、県全体の農林水産物の被害額は20億円を上回るなど壊滅的な打撃を受けました。
板馬養殖センター新垣奈菜さん
「もう言葉が出ないというか、頭を抱えるというか、放心状態でしたね。どうしようもないので」
沖縄観光のピーク時に1週間に渡って沖縄地方を暴風域に巻き込んだ台風6号。
航空便は軒並み欠航し多くの観光客が足止めされました。
沖縄観光コンベンションビューロー下地芳郎会長
「航空便の利用だけでも30万人以上の人に影響が出ていますし、長期間に及んだという事で施設の被害、キャンセル、結構大きな被害が出ていました」
一時本島の約4割で停、電沖縄観光コンベンションビューローのまとめでは県内の観光関連事業者の被害額は合わせて19億円に上るとしています。
また台風6号は観光立県としての大きな課題を突き付けました。
沖縄観光コンベンションビューロー下地芳郎会長
(台風の)長期化に対して電源という部分での対応というのが十分ではなかったということが、改めて沖縄観光の台風時の弱みとして明らかになったことが出てきたと思います」
停電が原因で営業が出来なくなった宿泊施設も多く、営業するホテルには滞在先を探す観光客からの問い合わせが殺到しました。
ホテルパームロイヤル高倉直久総支配人
「電話にての問い合わせが通常の3倍から4倍あったような感じがします」
東京からきた親子
「ネットを使って空いている所を一生懸命探して何とか移動もしながら空いている所(ホテル)を見つけて」
停電などの被害を受けながらも工夫を凝らして対応したホテルも。
那覇市のノボテル沖縄那覇では外に出られない宿泊客にむけ宴会場を開放し輪投げなど様々な遊びを用意しました。
一方、市役所に設けられた避難所にも行く当てのない観光客の姿が。
避難所のノイズ避難所で過ごす観光客
「愛媛県から来ました。(ホテルの)チェックアウトから次のチェックインの時間4~5時間どこにも行く当てがなくて、電話したら受け入れてくださるということで」
サンダーバード翁長由佳代表
「今回の台風で分かったことは観光客も避難所にいくということがある。現場でなんとか乗り切ったからよかったよねでは済まさないような仕組み作りが大事かなと思っています」
そう話すのは観光危機管理を専門とする翁長由佳さんです。
避難所で観光客が必要な情報を発信できたのか検証が必要だと話します。
サンダーバード翁長由佳代表
「避難所の対応は観光部局ではなくて福祉部局とか総務部局になってくるんですよ。避難所にどうやって観光部局が入り込んで、観光客の情報提供ができるのか県も一緒に考えていく必要があるのかなと感じます」
さらに暴風雨の中、観光客を危険に晒さないためにも自治体や宿泊施設、避難所などの連携が必要だと指摘します。
サンダーバード翁長由佳代表
「(台風時に)どこが主体となって現場と連絡をとりながらサービスを提供するかとか、観光客の手助けをするのかをちゃんとシステムに落とし込むというような環境整備が必要かなと感じます」
多くの爪痕を残した台風6号。その一方で人との繋がりを再確認する機会にもなりました。
甚大な被害を受けた東村の慶佐次キャンプサイトでは現状を知った知人やお客さんが駆け付け、復旧作業を手伝ってくれました。
慶佐次キャンプサイトオーナー瀬良垣亜加音さん
「施設のために自分の事ではないのに一生懸命やってくれる姿をみて励みになったしすごくありがたかったです。支えになりました。(台風を)甘くみてはいけないなって思ったことと、被害を最小限におさえるために建築関係の方も知り合いがいるので、対策を教えてもらったりとかというのも実践しているところです」
台風6号から得た教訓を今一度確認することが、来年来るであろう台風の「備え」に繋がります。
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