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物価高ことしも直撃 沖縄観光は課題が浮き彫りに

コロナ禍が明け、観光業を中心に回復基調が高まった県経済。その一方で去年から続く物価の高騰は家計や企業活動に大きな影響を与えました。

街の声
「色んな物価が上がっているでしょう、スーパー行くのがこわい。年金も年々安くなるし介護もたくさん取られちゃうでしょう。年寄りの身になって高齢者の気持ちも考えてほしい」「やっぱりガソリン代です、ガソリン代が今まで5000円くらいで済んでいたものが7000円くらいにいったときに満タン入れるのをやめようかなと」
「仕事で使う鉛筆や紙なども全部上がっているからそれがひしひしと年間通して去年通りにはいかないと思うことがいっぱいありました」

帝国データバンクの調査では、この1年の値上げ品目は3万2000品目あまりに上ると試算されました。

6月には国の認可が必要な電気料金が値上げに。

燃料費の高騰を背景に沖縄電力の昨年度の決算は過去最大のおよそ500億円の赤字となりました。

沖縄電力・本永浩之社長
「我々の方で抑えてお客さんの料金をなるべく上げないように1年間ずっと我慢していたんですけど、それでも燃料価格が落ち着いてこない。雪だるま式に負債が増えていく。こういう状況を打破するための電気料金の値上げになりました」

食品や原材料などの高騰に続く、電気料金の値上げの知らせにあらゆる産業が頭を抱えました。

菊農家・新垣大策さん
「沖縄の菊って電気がないと開花のコントロールができなくて、どうしても電気が必要なんですよね。経費はどんどん上がっていく中で花の値段はそこまで上がっていないっていうのが現状です」

小麦の価格上昇も重なり、街のベーカリーは廃業も覚悟するほどに。

らいぶら・平良恒四郎さん
「(電気料金は)夏は月12万から13万ぐらい。それが40%上がったら無理。無理無理。辞めようか、どうしようかぐらいだと思います」

飲食業界でも二重三重の苦悩がありました。

県飲食業生活衛生同業組合・鈴木洋一理事長
「材料代の値上げ。加えて非常に人件費が高騰しているものですから、トリプルで厳しい状況になるのではないかなと思っています」

9月には車社会・沖縄には欠かせないレギュラーガソリンの小売価格が190円を超え最高値を更新。

輸送コストがかさむ離島はさらに深刻でレギュラー1リットルの価格が税込み200円を超える給油所も。

国や県は生活に密接に関わる電気料金や燃料代の高騰を抑制する支援策を講じていて、実質的な負担を軽減する措置が継続されています。

食品やエネルギー価格の高騰が家計や企業活動を直撃した一方で、りゅうぎん総合研究所の武田智夫さんは県経済は回復の動きが強まったとみています。

新型コロナの感染症法上の位置づけが5類に移行し、外出の機会が増えたことによって消費マインドが高まり、観光業を中心に県経済は上向きに推移していると分析しています。

りゅうぎん総合研究所・武田智夫常務
「(観光客が)沖縄に多く訪れるようになりましたので百貨店、スーパーの売上高が伸びたというふうに言えると思います、あとは外での飲食の需要も増えてきたということが言えます」

旺盛な旅行需要により、沖縄を訪れる国内観光客はコロナの流行前の2019年を上回る水準まで回復し、今年の夏の観光収入は過去最高額を記録しました。

インバウンドについても一部地域で制限が残るものの、大幅な回復を遂げていて、今後さらに多くの外国人観光客が沖縄に訪れることが期待されます。

上海から来た観光客
「3年間直行便が止まっていましたが、再開するということで沖縄を(旅行先に)選びました。(沖縄は)上海から来るのが便利な場所」

県は年間の観光収入を現在の7000億円から今後10年で1兆2000億円にまで増やすことを掲げました。

目標を達成に必要なのは観光の質を高め、付加価値の高い旅を提供すること。

沖縄の自然や歴史・文化を観光資源として活用する新たな取り組みがスタートしました。

2021年に世界自然遺産に登録されたやんばるの自然体験をメインに据えた「アドベンチャーツーリズム」。

富裕層をターゲットに費用は航空運賃を除いて1週間で45万円と高額ながら、アメリカやドイツなど4か国から訪れた観光客を魅了しました。

参加者
「豊かな自然を見て、たくさんの生き物を見つけました。素晴らしいですね」「文化や長寿の歴史、自然、歴史など、とても深い所まで知ることが出来て、心が動かされました」

2025年の開業を目指すことが発表された本島北部のテーマパーク「ジャングリア」。

世界の市場を見据えた新たなコンテンツが観光のみならず県経済にも好循環を生み出せるかどうか注目が高まっています。

明るい話題の一方で、課題も山積しています。

特に深刻なのは慢性的な人手不足。

県ホテル協会が実施したアンケートによりますと、県内ホテルの95.7%が「労働力が不足している」と回答。

半数以上のホテルがレストランなどの営業時間を短縮したり、休業日を設けたりするなど、サービスの質に悪影響を及ぼしています。

県ホテル協会・平良朝敬会長
「足りないから人を入れればいいというわけでも無く、良いサービスを提供しないといけないので、そこに対する人材育成を含めて取り組んでいかないといけない」

タクシーは県内3500台のうち半数近くが休車を余儀なくされています。

県ハイヤー・タクシー協会・東江一成会長
「(新型コロナの影響で)3000名ぐらいが退職してしまって県民の皆様にも、観光客の皆さんにも非常にご迷惑を掛けている現状が続いている。人を何とか探して(二種免許の)資格を取らそうとするけど自動車学校が(人手不足で)対応できない」

コロナ禍を経て今年は沖縄の魅力が世界の旅行者から再認識されるとともに、観光業の課題が顕在化した1年でもありました。

県経済に詳しいりゅうぎん総合研究所の武田さんに来年の見通しを聞きました。

りゅうぎん総合研究所・武田智夫常務
「来年も緩やかに拡大する動きになりまして、今年の今の足元の動きが継続するということなんですけれども、年後半はその拡大の動きが強まるというふうに考えております」

海外路線の拡大でインバウンド需要が見込めるほか、不動産市場への投資が拡大し、半導体の供給が安定することによる自動車市場の活性化がその要因として挙げられています。

人手不足の解消については。

りゅうぎん総合研究所・武田智夫常務
「DXなどを活用しながら効率化ということを進めることによって人手が足りない部分を何とかここで改善しましょうと。それができれば賃上げもできるわけです」

DXによる作業の効率化と賃上げによる人材確保は待ったなしだと強調しました。

来年は辰年、昇り竜のように県経済が活性化し成長につながる1年になるのでしょうか。

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