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農業に革命!世界が注目するEFポリマー

干ばつによる水不足の農業への影響が世界で深刻化する中、インド出身の革命児がこうした問題を解決しようと沖縄でベンチャー企業を立ち上げました。

生み出したのは土に水分を長く保持させるためのポリマーです。国の内外から注目される新たな技術とその展望を取材しました。

ナラヤン・ガルジャールさん
「母なる大地は全ての問題のための解決方法を持っている」

恩納村の沖縄科学技術大学院大学OISTにあるベンチャー企業「EFポリマー」の最高経営責任者でインド出身のナラヤン・ガルジャールさんです。

ガルジャールさんが解決を試みるのは干ばつによる農作物の生育不足という世界が直面する問題です。

きっかけとなったのは農家の父と交わした約束でした。

ナラヤン・ガルジャールさん
「私はインドのラジャスタン州出身です。300人が住むとても小さな村でほとんどの人が農業で生計を立てています。私の父も農家です。雨はとても少なく、20日降らないことは普通です。これが原因でほとんどの農作物が枯れていました。父は科学でこの問題を解決して私達を助けてくれと言いました」

ガルジャールさんは研究論文や文献を読みあさって解決策を模索してきましたが、そこには多くの問題がありました。

ナラヤン・ガルジャールさん
「研究をすすめることで水不足の問題を解決する方法がたくさんあることを知りました。具体的には天敵灌漑やマルチング、スプリンクラーなどですが、それらはとても値段が高く貧しい農家は手に入れることができません。そこで私は石油でつくられたポリマーに注目し始めました」

ポリマーは水分を吸うとゼリー状に膨らむ粉末状の資材で、水分を長く保持することができます。

農作物を育てる際、土の中にポリマーを埋めると雨を吸水し作物が枯れることを防ぐことが期待できます。

ポリマーはおむつや保冷剤などにも使われていますが、石油を原料としていて地中で分解されないことから農業には適していないとされていました。

そこでガルジャールさんが生み出したのがEF(ECO FRIENDLY)ポリマーです。

シークヮーサーやバナナの皮など食物の残渣を原料としていることから低いコストで製造でき、自然と農家に優しいポリマーとなっています。

ナラヤン・ガルジャールさん
「もし食物の残渣をリサイクルでき水不足も解決できたら、それはウィンウィンの状態だと考えます」

ガルジャールさんは5年前にインドで法人を設立しEFポリマーを商品化。

さらに品質を高めようと研究施設や資金援助について調べていたところOISTのスタートアッププログラムにつながりました。

ナラヤン・ガルジャールさん
「OISTはスタートアップの支援に関してはとても素晴らしい環境が整っています。OISTにはネットワークが充実していて、コネクションも豊富です。だからこそスタートアップに対し投資先や研究施設などを提供し組織の拡大をより早めることができます」

国内100カ所以上の農地で実験を行っているほか、ガルジャールさんの母国インドにタイ、アメリカ、フランスなどの欧米諸国でも導入され始めています。

先月、南米のボリビアからも農業団体が沖縄を訪れ、EFポリマーを使用する糸満市のサトウキビ農家とキャベツ農家を視察しました。

サトウキビ農家・赤嶺治さん
「今、月一で生育調査をしているんですよ。茎頂とか太さですね無処理区の方と比べたらずっと良い感じですね」

キャベツ農家
「8月くらいに種を準備してポリマーを混ぜて、そしたら去年までだったら7割までしか発芽しなかったんですけど、今回は90%以上発芽しているので夏場も」

ボリビアから来た具志堅正さん(県系2世)
「オーガニックは土の中で無くなっていくということが重要であって、科学のものは土の中に残ってしまって良くなるというより、逆に悪影響なのでオーガニックなポリマーを選択したいと考えています」

EFポリマーは国の内外の投資家から熱い視線を集め、これまで5億5千万円の資金を調達しています。

EFポリマーのナンバー2はOISTの職員だった下地邦拓さんです。

下地邦拓さん
「ポリマーというところでお話をすると日本はポリマーの世界トップランナーなんですよね。世界のトップ10社ポリマーそのうちの半数は日本の企業で占められているんです。そういった企業様がこれまで研究などをしていてもまだ達成できていないのが、この完全オーガニックで完全生分解性を有するポリマー」

下地さんは高校を卒業後に渡米し首都ワシントンのシンクタンクなどで経験を積んだ後、OISTの学長室で資金調達や自治体などとの連携を進めてきました。

そこで出会ったのが農業界の“革命児”ガルジャールさんです。

下地邦拓さん
「彼の良いところは、『天才』とか『ヒーロー』のはずだけどナラヤンは変わらないんですよ。ナラヤンは目の前の仲間を助けたい。自分が育った300人の農村の農家さんだったり。この姿勢はやはり素晴らしいと思うので、いかに僕らが彼のビジョンだったり彼の思いを実現させるために頑張れるかというのが僕らの挑戦」

EFポリマーは農業に留まらず石油由来の保冷剤や化粧品などにも転換することができ、あらゆる業界でそれまでの流れを一変させる“ゲームチェンジャー”として脚光を浴びています。

下地邦拓さん
「沖縄でとれる地産地消の作物残渣を使ってポリマーを製造することで沖縄の課題を解決するもそうだし、沖縄でつくった資材を外国に輸出する可能性も出てくるので魅力的だなと思っている」

世界中でイノベーションを起こす可能性を秘めたかつてない挑戦が沖縄で始まっています。

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