「救助に『もう一度』はない」 海保機動救難士”オレンジ“目指す訓練に密着
海難事故の現場にヘリコプターでいち早く駆けつけ命を救う海上保安庁の機動救難士。
人命救助の最前線に立つための厳しい訓練に臨んだ新人の2人に密着しました。
去年6月、糸満市ルカン礁沖でダイバー7人が漂流した事故。
ヘリコプターで現場に駆けつけ救助にあたったのは“海難救助のプロフェショナル”といわれる機動救難士です。
去年4月、那覇航空基地の新人の機動救難士として配属された大浜広樹さんと秋間匠さん。
海上保安庁職員およそ1万4千人のうち90人しかなれないオレンジ服の現場隊員を目指し、およそ8ヵ月間の研修と訓練に臨みました。
―大きな船の船倉で事故が起きたことを想定―
5日間の最終訓練の初日。船から落ちてしまった要救助者をロープや滑車を利用して引き上げます。
大浜広樹さん
「大丈夫ですか?わかります?一緒に上に上がりましょう。どこか痛いところないですか」
―迅速に引きあげなければならない-
大浜広樹さん「要救助者意識ダウン(意識)レベルダウン。山川さんわかりますか?」
命を助ける救助は引き上げて終わりではありません。
先輩
「要救助者どうなってんだよ、確認したのかよ!ちゃんとバイタルはどうなってんだよ今!っていうのを確認しなければいけないんじゃないのかお前らは。何のためにこれやってんだよ」
秋間さん「救助です」
先輩
「何を救助するんだよじゃあ。要救助者を救助してんだろ?お前らの自己満足の救助訓練じゃねえんだよこれ」
厳しい訓練をこなす2人にこの仕事を志した理由を聞きました。
秋間匠さん「友達と熱海旅行を行った際に、女の子がおぼれていまして、その女の子を救助した際にお母さんからとても感謝されて、こういったことを仕事にしたいなと思いまして海上保安庁を目指すこととしました」
那覇市出身の大浜さんは海上保安官を扱った映画「海猿」を観たことをきっかけにこの職を志しました。
大浜広樹さん
「自分の沖縄で育ったこの海で人命救助をしていきたいということでその思いで入庁しました。いち早く現場で救助にあたりたいという思いを感じて機動救難士を目指しました」
-潜水訓練-
大浜広樹さん
「やり切りたいと思います」
秋間匠さん
「今自分にできることを全力で出し切りたいと思います」
迅速さに加え常に冷静な判断が求められる機動救難士。実際の事故現場では不測の事態にも臨機応変に対応しなければなりません。
上席・知念俊助さん「どうした?どうした!平澤!」
秋間匠さん「落ちた!」
上席・知念俊助さん「カメラ止めてください!」「引きあげるよ!」
先輩(要救助者役)「OKです!」
上席・知念俊助さん「ちゃんと厳格に見てるかっていう訓練でした」
秋間匠さん「焦った…」
上席・知念俊助さん
「先輩だから大丈夫とかそういう思いがあったらいつか仲間を助けられないとかそういうところになります。今の気持ちを忘れないで今後に生かしてください」
続いて行われたのは10キロの錘を持って5分間立ち泳ぎをする訓練。
要救助者を確保しながらその場で留まっていられる泳力と脚力があるかが試されます。
上席・知念俊助さん「索(ロープの余裕が)ないぞ!戻ってこい」!「半分過ぎたぞ。泳ぐな!
2人とも5分間泳ぎ続けることはできませんでした。
秋間匠さん「もう一度やらせていただけないですか“」
上席・知念俊助さん「できないだろ、できる?」
大浜広樹さん「できます」
上席・知念俊助さん「ただ単に訓練やるだけだったらやるなって。二回あんの?救助できなかったからもう一回行かせてくださいって。『今日の俺だったから救助できませんでした』そんなことは許されない」
-最終訓練100キロ行軍―
水と塩だけで大宜味村から那覇航空基地まで歩きます。
大浜広樹さん
「体が痛み出してきたり、そういうのが重なってくると果たして帰れるのかなってちょっとだけ不安になったこともあるんですけど、皆さんにありがとういっていう気持ちで(走ります)」
秋間匠さん
「結構足も痛くなってきたんですけどあとはもう気力と気合で頑張ります。妻がお守りを作ってくれまして、(手紙に)『ここで諦めるのも一つの選択だよ、でも一歩進めるなら頑張ってみよう』っていうような内容で。励みになります。ちょっと涙でそうでした」
気力を振り絞り那覇航空基地に到着した2人。先輩たちが労をねぎらいました。
秋間匠さん
「100キロ通していく中で、自分の中で諦めない気持ちっていうものもさらに鍛えられたと思うので、自分の弱いところを潰して、今後とも頑張っていきたいと思います」
大浜広樹さん「この先隊員になれたとしたら辛いことがいっぱい出てくると思うんですけど、この時のことを振り返って、しっかり前に進めるよう頑張っていきたいと思います」
厳しい訓練を乗り越え機動救難士としての新たな一歩を踏み出した2人。
命を救う責任と向き合い人命救助の最前線に立ちます。
※大浜さんの「浜」は”まゆはま”
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