「人手不足解消・生産性向上へ」DXを学び企業の課題解決を目指す
県内のあらゆる産業で人手不足や労働生産性の向上が叫ばれる中、これらの改善に欠かせないのがDX・デジタルトランスフォーメーションです。
DXに対応できる人材の育成を目指し、民間企業が立ち上げたプログラムに参加する受講者を取材しました。
デジタル技術などを使い、社会や経済をより便利に変革するDX・デジタルトランスフォーメーション。
DXを推進する人材の育成を民間主導で加速させるため2023年8月、沖縄セルラー電話が主体となり創設されたのがODU、「OkinawaDXUniversity」です。
▽沖縄セルラー電話菅隆志社長:
『DXについて知りたい方、会社やチームでDXを推進したい方、DXのスタート地点にいる方々を対象と考えています』
ODUでは、2023年10月から県内の企業や自治体で働く100人がオンラインの講座などを通して、DXの基礎知識や活用方法を学んでいます。
受講者たちはDXの推進でどのような課題を克服しようと考えているのでしょうか・・・。
豊見城市の友愛医療センターで働く親富祖祐大さんは、自宅のパソコンを使って、受講しています。
▽友愛医療センター診療部支援課親富祖祐大課長:
『休みの日だったり、朝仕事行く前にちょっとだけ見たりとか、そんなふうに受講させてもらっています』
地域連携室で長く勤めた親富祖さんは、地域のクリニックなどから送られてくる紹介状や、患者の個人情報に関するやり取りに課題を感じています。
▽友愛医療センター診療部支援課親富祖祐大課長:
『対医療機関でどうしても情報のやり取りがFAXなので、進み具合でいうとかなり遅れてるかなと思います』
患者に適切な医療を提供するため、友愛医療センターではまずは医療スタッフの負担を減らす仕組みづくりにDXの導入を進めたい考えです。
これまで手入力していたものを、音声や自動入力する機能の拡充や看護師の申し送りなどのシステム化を検討しています。
多くの離島を抱える沖縄。
オンライン診療などの分野でデジタル技術を導入することは、患者の負担軽減にも繋がります。
▽友愛医療センター診療部支援課親富祖祐大課長:
『患者さんとか地域の方々のためというのが医療機関としてゴールはそこだと思うんですけど、やっぱりまずは自分たち職員が働きやすい環境、やりやすい環境を作っていかないと良いサービスを提供できないと思うので、その足がかりになるといいかなというふうには思いますね』
労務管理などをDXで解決したいのが光電気工事の金城秀幸さん。
建設業界では残業時間の上限規制が始まる2024年問題への対応が、これまで以上に求められます。
▽光電気工事経営管理本部企画・総務課金城秀幸課長:
『24年から時間外労働の上限規制が始まるので、今後はさらに業務効率化であったり、省人化、この辺が課題になってきます』
金城さんはDXを活用し、現場と社内で全体の作業工程を一元管理し、ロスを少なくすることや経験豊富な職人の技を「見える化」することで若手への技術の継承を促したいと語ります。
▽光電気工事経営管理本部企画・総務課金城秀幸課長:
『DXの成功の秘訣は何か取り組まない限り成功はしないっていうようなことがあったので、考えながらいろいろ挑戦していくということが重要だと非常に共感しました』
労働集約型で人手不足が大きな課題のホテル業界。DXの活用で突破口を見出そうとしているのがかりゆしグループです。
▽かりゆし事業管理本部総務部銘苅吉未マネージャー:
『データを扱う部署なんですが、データの分析で自分の力が弱いなというふうに感じていて参加を決めました』
スタッフの採用や労務管理に関わる銘苅吉未さんは、グループ内の複数のシステムを統合するなど、より効率的なデータ分析をすることが、業績や働き手の満足度の向上につながると話します。
▽かりゆし事業管理本部総務部銘苅吉未マネージャー:
「データ分析とかを使って会社の数値を見える化して、業績を上げることにきちんと使って従業員の方に還元する』『さらにこれから観光業とかを目指す方に対して期待値を上げたいっていうところですね』
DXの推進は、ホテル業界のみならず観光業界全体の魅力度アップにも繋がると期待を寄せています。
DXによる町民のサービス向上に取り組むのが南風原町です。
南風原町教育総務課保健体育班我喜屋佳祐さん:
『南風原町自身も今年DX元年でDXの推進が今年度から始まっていて、スキルアップとか自己研鑽で挑戦という意味で受けてみました』
今年度、南風原町は自治体DX元年と位置づけ、行政手続きの利便性の向上や業務の効率化に取り組んでいます。
オンライン申請などが進む一方で、体育施設などの管理を行う保健体育班では窓口に来ないと施設の貸し出し予約が出来ないものもあり、改善点が残されています。
今後は職員のデジタル分野の知識の向上を目指しながら、町民一人一人のニーズに合った行政サービスの提供を目指します。
▽南風原町教育総務課保健体育班我喜屋佳祐さん:
『生産性が向上して、効率性が上がれば町民もモチベーションが上がり、より良いまちづくりができて(町民が)幸せに過ごすことができるのかなと思います』
南風原町と同じように、顧客へのサービスの価値を高めようとしているのが琉球銀行です。
▽琉球銀行証券国際部市場管理課岡田志穂さん:
『システム開発をするにあたって、あまりITの素養がないので勉強しないといけないなという意識がありました』
証券国際部で投資信託などの業務に携わる岡田志穂さんは、DXの推進で業務の効率化が進むことで、接客を担う部門に適切な人員配置が可能となり、顧客に寄り添ったサービスの提供にも繋がると話します。
▽琉球銀行証券国際部市場管理課岡田志穂さん:
『資産運用の話をする時間がもっと取れる方向になる』『どういう運用をしたらいいか悩んでるお客さんに情報提供だったり、対面で教えるようなことができるかなと思っています』
地域の経済活動を支える地方銀行として、今後は取引先の事業者などのDX化のサポートをすることも求められてくるとし、行員全体のレベルアップが必要だと話しました。
▽琉球銀行証券国際部市場管理課岡田志穂さん:
『(受講して)他業種のDXに携わっている方の実際に活かせたお話しとかを聞けるのは非常に有意義だなと思います』
解決すべき課題は千差万別ですが、従業員の働きやすさや生産性の向上を求めることは、結果的にDXによって私たち住民や利用者の利便性の向上にも繋がります。ODUでDXへの第一歩を踏み出した受講者たち。これからの取り組みで新たなサービスやビジネスモデルが生まれるかもしれません。
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