「忘れられないあの音」悲しみ乗り越え　１００万輪の伊江島ゆり祭り４年ぶり開催へ

１００万輪のユリが咲き誇る伊江島ゆり祭りが今週末から始まります。新型コロナウイルスの影響で祭りが中止となった３年前のある悲しい経験を乗り越えた人たちは大切に育ててきたゆりを４年ぶりの祭りで多くの人に見てほしいと準備に汗を流しています。


フェリーからの伊江島本部港からフェリーで３０分の伊江島。初夏を彩る島の一大イベントに向け、準備が進められています。

松本さおり記者「ゆり祭りの開催まで残り５日となりました現在はまだつぼみが多い状態ですが、すでに咲いている花からは甘い香りが漂ってきます。」

会場となるリリーフィールド公園ではゆりを育てる人たちが手入れに精を出しています。今年の開花状況や出来栄えについて聞きました。

新緑園玉木伸治さん「今年は球根の出来がすごくよかったので、ただ暖冬の影響か年々開花が早まっている傾向にあってどうにかゴールデンウィークまでもってくれればとちょっとひやひやしているんですけどもってくれると信じています。」

玉木伸治さんは１９９６年から開催されているゆり祭りに当初は役場の職員として、現在は園芸や公園の管理を行う会社に勤めてゆりを育てています。

「１１月上旬から植え付けして、だいたい１週間かかるかかからないか。島の小学校が２校あるんですけど３年生の生徒が北側の方の球根の植え付け体験をしてくれたりとか色んな方の協力があって。」

東京ドーム２つ分の敷地に咲き誇る１００万輪のゆりを楽しむことができる伊江島ゆり祭りは今年、４年ぶりの開催となります。

多い時には３万６０００人が来場していましたが、新型コロナの流行が始まった２０２０年、祭りの中止が決まりました。この時、役場が決断したのが・・・。

「どうしても今、ＳＮＳとかやっている方多いので、咲いているところを見ると『見に行っていいんだ』って思ってしまうので、島にコロナを持ち込ませないために摘み取らないといけなかった。」

大切に育ててきた人たちが自ら花やつぼみを摘み取らなけれならなかったのは、お年寄りも多く、１つの診療所で支えている島の医療を守るため。苦渋の決断でした。

「つぼみを全部ひとつひとつ折って。ぷちぷちという音がいやでしたね。これを見せられないのかということを思うと。せっかく植えたのにという気持ちと。残念でしたあの時は。。」

「できたらやりたくない、あした出勤したくないという方もいたので、みんな同じ思いなんだと思って。」

２０年以上ゆりの栽培に関わってきた島袋すみ子さんもあの時のことは忘れることができないと話します。

新緑園島袋すみ子さん「もうなんとも言えなかったですね。みんな摘み取った時にはもう心が痛くて。夜寝られなかったですね。育ててあげたのが見られないで摘み取る作業をしてしまった。」

新型コロナの流行が収束したときにはまた多くの人にゆりの花が作る純白の絨毯を楽しんでほしい。そうした願いを込めて育てたゆりの花が今年の祭りの開催に向け、美しく咲き始めました。

島袋さん「皆さんが観光してもらって、きれいに咲いたなーって思ってくれるだけで、疲れみんな飛びますよ世話したり何したり植え付けしたり色々な作業ありますけどね嬉しいですよ。」

「いい天気になって皆さんが見て回って、爽やかな気持ちでちょっとでも癒されたらそれで私たち幸せですよ。」

伊江島では１９８０年代にゆりの球根栽培が始まり、国内だけでなくオランダにも出荷していました。１９９５年にリリーフィールド公園が開園。その翌年から始まったゆり祭りは新型コロナが流行する前の２０１９年まで毎年開催され、島の人たちも楽しみにしている行事です。

住民は「あの場所は私も大好きな場所なんですけど、あそこにゆりが咲いているとみんな来てほしいと思うし賑やかになりますよ。４年ぶりですからたくさん来てほしいですよ。」

祭りの開催を前にすでに訪れた観光客の姿もありました。

「綺麗ですね。花大きいし。」「綺麗なのでびっくりしました。これだけ全部咲いたらもっときれいなんでしょうね。」

会場の準備に役場の職員も汗を流しています。

伊江村役場商工観光課金城幸人課長「男性職員はほとんどテント立てとか職員総出で協力体制ばっちりですので、２２日のオープニングをしっかりと迎えたいと考えています。通常開催でステージイベントも４年ぶりに開催されますのでみんなワクワクしていると思いますし、村民も楽しみにしていると思いますので。」

新緑園玉木伸治さん「上から観光客の団体が降りてきたときに拍手が起こったりワーッと歓声が上がったり、ゆりをバックに写真を撮っている姿を見るとこちらもうれしくなりますし、皆さんの笑顔が今年も見れたらなと。」

「これが楽しみで植えているので、今年もそれが見れることを願って。たくさんの来場があればと思います。」

伊江島ゆり祭りは２２日からゴールデンウィークまで開かれます。