73年の歴史に幕「首里劇場」最後の内覧会
沖縄に現存する最も古い映画館で戦前からの劇場の様式を残す貴重な建物でもある首里劇場が老朽化のため解体されることになりました。先週開かれた最後の内覧会には首里劇場での思い出を懐かしむ人や、初めて足を運ぶ人などさまざまな人が訪れ別れを惜しみました。
老朽化のためあすから解体作業が始まる首里劇場。建物を管理しながら保存を模索してきたのが首里劇場調査団です。
真喜屋力さん「昔は花道がすごい狭かったというのを聞いたことがあって、もしかしてここ延長したんじゃないの?という話になって、一度はがして見てみたいなと。繁盛していたころの歴史が見られるんじゃないかと思って。」
戦後物資が少ない頃にアメリカ軍のテント地で作ったと思われる引幕や1950年代の広告看板なども残されています。
真喜屋力さん「こういう看板なんかを掲示していたということが昔の風景がよみがえってくると思うんですよ。首里劇場を中心に。」73年の歴史がある建物の解体前に最後の内覧会を開きます。」
戦後まもない1950年に建てられた首里劇場。映画の上映はもちろん、沖縄芝居や地域行事にも活用される人々が集う場所でした。
この劇場を守り続けてきたのが3代目の金城政則館長です。一時は成人映画を上映していましたが、2021年に名画座として再スタート。いつしか沖縄に現存する最も古い映画館となりましたが、去年、館長が急逝。老朽化も激しく、やむなく解体することになりました。
首里劇場調査団平良竜次さん「来ていただいて思い出話をしていただきたいなと。できればそれを記録に残したいなということですね。」
真喜屋力さん「みんなが思い出して笑顔が出れば一番いい締めくくりになるんじゃないかという気がします。」
平良竜次さん「今から最後の内覧会を開催したいと思います。よろしくお願いします。」
来場者「大学生の時、30年ぐらい前。大人の映画を見に来たんだけど入ったらすごくこの建物が素敵で。感動したのを覚えています。愛に溢れている感じがします」
「来月からもう中学3年という時だったかな。しりとり歌合戦ってあったんですよ。」
ラジオの収録でこのステージに立ったことがあるそうです。
「壊すというからやっぱり中に入りたいなというのがあった。ここに立ったんだなと思って。何十年も前ですよね。懐かしいよ。それで来たのよ。」
琉球舞踊立方の人間国宝宮城幸子さんです。
宮城幸子さん「初舞台。大きい舞台では。ここで踊るのには自分がちゃんと踊りこなさないといけないという自覚を持ちました。緊張緊張の舞台でしたけど。」
69年前の新人藝能祭で初めて立った大きな舞台が首里劇場でした。
宮城幸子さん「こういった舞台があったから、芸能もずっと続けて継続してきたと思うんですよね。踊らせてくださってありがとうございますと感謝の気持ち。」
沖縄芝居役者の仲嶺眞永さんも足を運びました。
仲嶺眞永さん「ここはうんと使いましたよ。ここで演技もうまくなってきました。両サイドに花道があるのでとっても使いやすい劇場でしたよ。」
そのころは芝居の一座が劇場で寝泊まりをしていました。
仲嶺眞永さん「先生方は裏でちゃんとお部屋を作っておあげして我々若い者は、見習いは舞台で。」
舞台裏には炊事をしていたカマドもあり、戦前からの劇場の様式が今も残されています。
仲嶺眞永さんの孫「僕もこの劇場初めてだったので思い出話も初めて聞くことがあったので、一生の思い出になりました。」
初めて足を運ぶ若い世代も。
「正直やってるときに来れば良かったって気はしたんですけど、解体する前に最後に見られたということで。忘れないように伝えていけたらいいなと思います。」
玉那覇ガラス店の店主「これがおじいちゃんです。この看板を出したのが。まだ首里市だったころ。感慨深いです。ありがたい。よく残っていたな。」
首里劇場調査団平良竜次さん「首里劇場はなくなりますけれど、それぞれの皆さんの心の中に首里劇場の物語という形で持って行ってもらえる。幸せな劇場だと思いますよ。」
最後の内覧会には1169人もの人が訪れました。
平良竜次さん「73年間に渡って続いたこの首里劇場も一旦終了ということになります。本当にありがとうございました」
73年の歴史に幕を下ろしました。
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