埋められていく豊穣の海 辺野古・大浦湾を臨む名護市民の思い
普天間基地の移設計画を巡り今月10日に始まった辺野古の大浦湾の工事。
その大浦湾に面する瀬嵩区の公民館では豊穣の海に息づく多様な生物を紹介する写真などを展示しています。
展示を企画した区長の思いとは。山内記者のリポートです。
名護市の瀬嵩区の浜からは、埋め立てに向けて工事を進める作業船が大浦湾に展開する光景が広がっています。
海岸からほど近い集落にある公民館に展示されているのは、大浦湾に棲む生きものたちを切り取った写真や個性的な姿かたちを残した標本です。
名護市瀬嵩区・西平伸区長
「ここに関しては瀬嵩の前浜をイメージして作ったもので、浜で拾ってきた。ここから向こう側はダイビングで集めてきた。前浜をイメージして前浜の形を作っちゃって、そんな感じ」
瀬嵩区で生まれ育ち現在区長を務める西平伸さんは、仲間と「ダイビングチームすなっくスナフキン」を結成し、20年に渡り大浦湾の貴重な生態系を記録してきました。
すなっくスナフキンは5800種以上が生息する大浦湾の生態系を記録し、新種を発見したほか書籍も出版しました。
名護市瀬嵩区・西平伸区長
「大浦湾で一番楽しいところは、この泥場。まずサンゴ礁っていうのは慶良間とか、離島の方がとてきれいだと思うけど、あそこに無くてこっちにあるのって言ったら、やっぱ泥場だね」
西平さんが見てきた大浦湾に潜む豊かな生態系。
大浦湾の水面を彩る青のグラデーションは水深によって色が変わり、海底に砂場や岩礁、泥場といった、多様な環境の存在を示しています。
名護市瀬嵩区・西平伸区長
「これトウカムリって貝なんだけど、これがこの辺に普通に目立ってたもんだから、トウカムリポイントって名付けて。(水深)4m5mのきれいな砂場があって。今この辺で作業ヤードの石が投げられている」
国は大浦湾に護岸造成などに使う資材を仮置きする海上ヤードを新設するため、今月10日に石材の投入を開始しました。
名護市瀬嵩区・西平伸区長
「初っ端に石を投げた場所が一番生物の多様性がある場所だったから、そこから工事が始まったというのはとてもショックだね。これじゃ後戻りはできないのかもしれないね。失望しかない」
普天間基地の返還が合意されてから27年。
移設先として浮上したことで名護の人々は時に分断され、翻弄されてきました。
名護市瀬嵩区・西平伸区長
「(展示には)基地賛成とか基地反対とかという事はひとことも書いていないからね。賛成でも反対でも個人個人でやるのは構わないけど、今はもういろんな人間関係があるからさ。最初の(1997年)名護市民投票のときにもう仲違いして大変だったから。もうあれには戻れない」
記者:実際に今年に入って浜に行ったりしましたか?
名護市瀬嵩区・西平伸区長
「いや行かないね。浜に行ってもな、やることもないしね。船が停まっているのは日常の生活になっているからさ。浜に行ったら悲しくなるとかそういうものはもうとっくに終わっている」
「この自分たちの財産が今、失われていくよね。この大浦湾の自然というのが豊かな自然があるんだよというのだけアピールしたい」
土砂や石材で埋められてゆく豊穣の海。豊かな自然を享受しながらそこで暮らしてきた人々の思いをも押しつぶしています。
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