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普天間 伊織

普天間 伊織

やってわかる、エンタメ業界裏方の愛しさとせつなさと心強さと

普天間伊織の沖縄カルチャー最前線

今日はわたしがエンタメの世界に入るきっかけのような話をすこし。

わたしは演劇プロデュースやマネジメント、キャスティングといったエンタメの裏方仕事をしていますが、はじめからショービジネス業界を目指していたわけではなく、ほぼすべて偶然のなりゆきでした。

きっかけは10年ほど前。たまたまクラブイベントでDJをしていたときに知り合った男の子から「アイドルになりたいのだけどどうすればよいか」と相談を受けたことでした。
なんとなく放っておけず、素人ながらにアドバイスをしたり、音楽業界の友人を紹介したりしているうち、周囲から「マネージャーさん」と呼ばれるようになって。最初のうちは否定していたものの、途中から面倒になってそのままにしてしまった感じです。

その後、メンバーを集めてグループを組んで、あれよあれよといううちに雑誌の連載が決まり、ラジオのレギュラーが決まり、レーベルとの契約が決まり……本業のライター業もしながらの心身ともにハードな日々だったけど、いま振り返るとあの時期が一番楽しかったです。忙しすぎて10キロ痩せたし、彼氏とも別れちゃったけれど(笑)。

エンタメの裏方を始めてから、「このグループが解散するまで」「あと2年だけ」「来年まで……」とその都度期限を決めてやってきたつもりでしたが、いつの間にか10年経ってしまいました。きっとそれだけ離れがたかったということでしょう。しんどいことも多いけれど(笑)。

エンタメ業界の裏方仕事をしている

わたしはド素人からエンタメ業界に飛び込んだので、業界用語や業界のならわしのようなものが全くわからない無の状態でした。だから最初はかなり困惑したのを覚えています。チケットノルマ?なにそれ?みたいな(笑)。

ぼんやりしているからミスも多かったです。電車に乗り遅れたり、飛行機に乗り遅れたり、ブームに乗り遅れたり、逆に早すぎたり(笑)。

なにもわからないから迷惑もかけてしまうし、嫌がらせを受けて泣くこともあったのですが、その都度、周りの方々に助けていただいてどうにかやってこれました。

定期的にワンマンライブをさせてくれたライブハウスモッズの喜屋武さん。音響・照明用語を根気強く教えてくれたヒューマンステージの山田さん。連載を持たせてくれたファンシップの小宮さん。ラジオ番組をやらせてくれたオキラジのたーけーさん。CDを作るのにマスタリングが必要だと知らずに納品前日を迎えたわたしを急いで車に乗せて担当者の自宅に連れてってくれたstudio HYBRIDのいっせーさん。そのほか、レーベルの方々や共演アーティストとスタッフのみなさん……
いつか恩返ししたいと思いつつ、まだ実現できていない悔しさがあります。

そしてなかに入ってみてはじめてわかる、エンタメ業界の裏方のたいせつさとたいへんさ。
ライブひとつ取っても、音響、照明、受付、ヘアメイク、ケータリング、スチール撮影とたくさんの人が関わっていて、みんなが一生懸命に自分の仕事に取り組むことでステージができ上がるのです。2017年頃に舞台演劇のプロデュースをはじめて、それをより強く感じました。
舞台はさらに多くのキャストとスタッフが関わって稽古や仕込みにも時間がかかるので、まとめるのはとても難しい。総合的に、自分の未熟さを思い知らされたし、成長もできたと思います。

舞台演劇のプロデュースはとても大変な仕事

そして、いま突き付けられている最大の課題が「リスクマネジメント」。

一昨年は新型コロナウイルスの影響で二度も公演が延期になったし、先月は台風の襲来によりまたも公演延期になりました。
当然のことながら、延期や中止によって、準備にかけたお金や時間が無駄になってしまうわけです。自然災害やウイルスのせいとはいえ、このダメージはなかなかです。
同業の友人たちもみんな苦しんでいて、エンタメ業界を辞めてしまう人も出てきています。もちろんスタッフだけでなく、プレイヤーも……。

このままだと継続が難しい状況で、“続けていくための努力と工夫”がいま一番求められているのかなと思います。おかげで何年ぶりかにストレスで痩せました(笑)。

ギリギリのスリルもまたほかの業界ではなかなか味わえない魅力のひとつ

しかし、このギリギリのスリルもまたほかの業界ではなかなか味わえない魅力のひとつであったりもします。
それが楽しいから、わたしはまた来月も来年もステージを作り続けていくのでしょう。
ということで、今回はこの10年の裏方生活をちょっとセンチメンタルに振り返ってみました。

次回のテーマは「進化するアジアのエンタメ」です!

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