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安保関連3文書に明記された“反撃能力” 世論調査で見えてくる意見の揺れ

政府の安保関連3文書の改定を沖縄県民がどのように受け止めているのか、沖縄テレビとJX通信社が実施した世論調査から読み解く。

反撃能力の保有を認める評価が拮抗

沖縄テレビとJX通信社は2023年1月14日と15日の二日間、県内全域を対象に電話でアンケートを実施し、県民542人から回答を得た。

このなかで、敵のミサイル発射基地などを直接攻撃できる「反撃能力」が明記されたことについて、日本がこれまで維持してきた「専守防衛」を「逸脱すると思う」と答えたのは45.76%で、「思わない」の29.34%を上回っている。

反撃能力を「持つべきではない」と答えたのは40.96%、「持つべきだ」は38.75%と評価が分かれた。

専守防衛を逸脱すると考える人の割合が多いなか、反撃能力の保有を認める評価が拮抗していることについて、沖縄国際大学の前泊教授は次のように分析する。

沖縄が再び戦場になるのではないかという危機感

沖縄国際大学 前泊博盛 教授
「反撃能力を持つということイコールこれは、反撃される可能性を高める。そういうことに繋がるということは認識されているので、どうした方がいいのだろうかっていう揺れがここにあるような気がしますね」

一方、FNNが2022年12月に実施した世論調査では反撃能力を持つべきと答えた人が6割を超えた。

沖縄国際大学 前泊博盛 教授
「(安全保障を)日本全体の視点で見るのか、当事者として沖縄の住民の側から見るのかというのは大きな違いがあると思います。ですから揺れがあるのはですね、日本としてどう考えるのか。でも、当事者の沖縄としては違うよねっていう」

自衛隊の増強されることで沖縄が他国から攻撃される可能性が、以前よりも高まっているかを聞いた質問では「高まっていると思う」と答えた人が6割近くに上り、沖縄が再び戦場とならないか懸念が強まっていることが伺える。

沖縄国際大学 前泊博盛 教授
「国民の中の多くが傍観者的立場でこれを読んでいる。そして当事者として沖縄だけが戦場になるのはどうしたらいいんだろうかという、そういう危機感を持っているという、そういう温度差が非常に大きく出ていますね」

自衛隊の増強が抑止力の向上に「つながると思う」と答えた人は37.64%で、半数近い45.76%が「つながらないと思う」と答えている。

沖縄における自衛隊の今後の在り方については「増強や機能強化を進めるべき」「現状のままでよい」と答えた人は52.03%と半数を超え「縮小すべき」や「すべて撤去すべき」と答えた37.82%を上回っている。

これを年代別でみると縮小や撤去すべきだと回答した人が60代以上で多かったのに対し、50代以下は自衛隊の増強や機能強化に肯定的な回答が多くみられた。

日本全体が当事者としての意識を持ち議論を

前泊教授は世代間によっての認識の違いも浮き彫りになったと指摘している。

沖縄国際大学 前泊博盛 教授
「特に50歳以下と50歳以上の方たちで、台湾有事に関する危機感とか、あるいは自衛隊の役割とか、あるいは日米の連携についても評価が割れるという世代間のギャップがあるような」

沖縄国際大学 前泊博盛 教授
「米軍との安保体制。これがかなり沖縄でも定着しているのかなという、そんな意識ですね。安保に対する評価が復帰50年間の間に大きく変質してきている様子がこの調査では見えてきますね」

沖縄国際大学 前泊博盛 教授
「傍観者として軍事力の増強を是とするという見方と、当事者として軍事力は自分たちの命を守らない、むしろ危険にさらすというそういう判断。この二つがこの調査の中にも浮き彫りになっていますね」

抑止力を大義名分とした軍備増強ありきの防衛政策が本当に国民の命を守ることになるのか。日本全体が当事者だという意識を持って議論を深めていくことが求められる。

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