SDGs,沖縄経済
お酒業界に革命を起こす!沖縄醸造ワイン
目次
──今回はブルームーンパートナーズの伊波貢さんとお伝えします。
伊波さん
「今回のテーマは『お酒業界に革命を起こす!沖縄醸造ワイン』です」
沖縄のアルコールといえばビールや泡盛を思い浮かべる人が多いと思いますが、新たに「県産ワイン」を定着させようとする事業者がいます。
多くの可能性を秘めた「沖縄醸造ワイン」を取材しました。
在来の野生ブドウを使用した沖縄産のワイン
日本最南端となるブドウを使ったワイナリーが2023年12月、恩納村に誕生しました。
宿泊施設を備えたレストラン「オーベルジュ」を経営するシェフの中田浩司さんは、店の一角を改装し、ワインの自家醸造を本格的に始めました。
中田浩司さん
「地元のワインを自ら醸造したものをお客さんに飲んでもらう。それが目標だったので、やっと叶ったかな」
沖縄県産のワインを造るため、中田さんは妻の朋子さんと二人で2006年から原料となるブドウの栽培を始めました。
中田朋子さん
「これが花が咲いた状態。白いのが花。この粒々がブドウのタネになり、実になり大きくなっていくんですね」
2人が育てているのは、沖縄在来の野生ブドウ「リュウキュウガネブ」です。
中田浩司さん
「亜熱帯でブドウが育つ、ワインができるんだよというのは、本当に革命だと思いますね」
日本本土で栽培されているブドウの品種は亜熱帯の気候には適しておらず、「沖縄でワインを作るのは難しい」と考えられてきました。
しかし、中田さんは諦めませんでした。
中田浩司さん
「沖縄でヨーロッパの品種を育てようとは思わない。ただ、沖縄に自生しているような原種のヤマブドウがあるならば、つくるべきだと思ったので、やったんですけどね」
2人はあまり栽培されてこなかったリュウキュウガネブをイチから研究し、試行錯誤を繰り返しながら徐々に収穫量を増やしていきました。
そして、2013年。
関東のワイナリーに醸造を委託し、少量ですがリュウキュウガネブのワインを店で提供できるようになりました。
その名も「涙(なだ)」です。
中田浩司さん
「うれしい涙に寄り添えるようにという気持ちを込めて「涙」、涙そうそうの、歌のイメージというか」
伊波さん
「色がすごく濃いですね。野性味はあるというか、ザ・ブドウという感じのにおいがします」
ソムリエの資格を持つ朋子さんは、沖縄料理との相性が抜群だといいます。
朋子さん
「チャンプルーとかラフテーとか沖縄料理にすごく合います。ワインにしてはアルコールは低めで10パーセントぐらい。どちらかといったら辛口の部類にはなるんですけど、お料理とも合わせやすいし、年齢層も幅広く飲んでいただきたいと思います」
恩納村でとれたリュウキュウガネブのワインを広めるために、村も協力しています。
村は果実酒の製造免許取得の規制緩和を沖縄県や国に求め、2023年、国から「ワイン特区」に認定されました。
本来、製造免許の取得には年間6000リットルを製造が必要ですが、特区に認定されたことで、要件が3分の1の2000リットルに引き下げられ、小規模の事業者である中田さんたちも自家醸造が可能になりました。
中田浩司さん
「15年以上これをやって、やっとですね、純沖縄のワインができました。新たな資源になって農家を志す人が増えたり、新たな産業だったり、新たなものを生み出せてよかったなと思っているし、広がればいいなと思っています」
沖縄を代表するビールメーカーもワイン製造に参入
沖縄のビールメーカーもワイン事業に参入しました。
オリオンビール 村野一 社長
「ワインの文化を沖縄に根付かせたいと思っております」
オリオンビールは多様化する消費者のニーズに応えようと、沖縄県産のパッションフルーツを使用したフルーツワインを発売しました。
オリオンビール 村野一 社長
「ワインの楽しみをお客様に提供することで、私どものミッションである『世界を笑顔に』ということを実現していきたいと思います」
「フルーツワイン」は食事に合うようにと甘さは抑えめで、さっぱりとした飲み口に仕上げています。
試飲した人
「飲みやすくフルーティーで、パッションフルーツの味がすごくします」
「香りがいいんですけど、クセがあるわけではないので、食事の香りとも一緒に楽しめるし、沖縄の食材と沖縄のワインというのですごくマッチングしやすいなと思いました」
このフルーツワインは、糸満市が所有する施設で製造されています。
開発を担当した浜比嘉望美さん
「ちょうど3年ほどコロナ禍の時期に(施設が)空いていたということだったので、糸満市に何度かご相談して、使用させていただく許可を得てスタートすることになりました」
オリオンビールにとって未知の領域であったワイン事業ですが、創業から66年間で培った醸造技術が活かされたといいます。
開発を担当した浜比嘉望美さん
「チューハイも作る上でフルーツのおいしい香りだったり、どこにポイントを当てていくかというのを気にしていたところがありますので、その経験は今回のフルーツワインで、パッションフルーツの香りに重点を置こうというところで活かされたかなと思います」
より華やかな香りや果実感を引き出すために、オリオンビールでは発酵後期のもろみにフルーツのピューレを漬け込む製法を取り入れています。
開発を担当した浜比嘉望美さん
「発酵中に酵母の働きで少し香りが変わってしまう部分がありますので、より生のフルーツ、パッションフルーツのいい香りを際立たせるには、ある程度発酵が落ち着いたときに入れるほうがよいです」
オリオンビールでは、今後も沖縄のさまざまな果物を使ったワインを作り市場を開拓していくとしています。
開発を担当した浜比嘉望美さん
「ワインを作るからには、沖縄県の皆様にも誇っていただけるようなおいしいワインを作りたいと思っています。最終的には沖縄に自生しているヤマブドウもありますので、そちらも使ってより本格的なワインを作っていけたらと思っています」
今日の一言
──さて伊波さん、今回のテーマから見えてきたことはなんでしょうか。
伊波さん
『常識の打破!』です。
不可能と思ったらそこで終わり。でも常識を捨てて、「こんなのがあったらいいな」と純粋に夢を追い続けることが大事で、その先には大きなビジネスチャンスが眠っています。誰も入り込めない領域なわけですからね。
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