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「沖ツラ」作者に単独インタビュー!”空えぐみ”さんにアニメ放送前にいろいろ聞いてみた
うちなーぐちや沖縄あるあるが描かれる人気マンガ「沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる」のアニメ化が決まりました。「アニメで、あのうちなーぐちは再現できるのか?!」。マンガを読んだ人なら誰でも抱くであろう懸念を、作者である空えぐみ先生にぶつけてきました。空先生、まさか、そんな秘策を用意していたとは…。
目次
「沖縄県外出身者だから書けた」
―空先生は沖縄県外出身にもかかわらず、マンガの中で、とても細やかな沖縄の「あるある」を表現されています。マンガに採用されているエピソードはどんな風にインプットされていますか。
マンガに出てくる沖縄の「あるある」は私自身が沖縄の方々とお話している中で、素直に驚いたことをそのまま題材やヒントにしていることが多いです。よく「沖縄の人じゃないのにこんなに沖縄の『あるある』を描けるね」と言われますが、実はそれは逆なんじゃないかなと思っていて…沖縄県外からの目線だからこそ気付けることが多いのかなと思っています。なので、私の出身地である大阪の「あるある」なんかは、ここまで描ける気がしないですね…。
「天ぷらはおやつ?!」
―沖縄に移り住んで以降、空さんが一番驚いた沖縄の文化や風習を教えていただけますか。
食文化に驚くことが多かったですね。ご近所さんにときどき食事に呼ばれ、沖縄の昔ながらの料理を振る舞っていただくのですが、んむくじぷっとぅるー(芋くずを水で溶き、練るように炒めた料理)やひらやーちー(小麦粉を水で溶かした生地に、ニラやシーチキンなど具材を入れて焼いた料理。韓国のチヂミに似ている)などはその都度、料理名を聞き返していました。
あと「天ぷらはおやつ」「すき焼きはお皿で」「味噌汁がどんぶり」「ちゃんぽんは麺じゃなく、ご飯」など、内地にもある料理が沖縄では違う形だったことも、とても驚きました。道に、当たり前のようにバナナやグァバが生えている光景にも驚きましたね。
「沖縄ファンになったが一番うれしい」
―コミックス1巻のあとがきで「沖縄に住み、体験したことが面白く、マンガを描こうと思いました。(中略)このマンガを通じて、沖縄を好きになっていただけると嬉しいです」と記されています。沖縄県外在住の読者、沖縄在住の読者、それぞれから届いた感想の中で、印象的なものを教えてください。
沖縄県内外からたくさん感想をいただいていて、本当にうれしい限りでとても励みになっています。県外の方から「小学生の息子が沖ツラを読んでから『あぎじゃびよい』と口癖のように連呼している」という感想をいただいたこともあります。親子2代で読んでくださっている光景を想像すると、とても微笑ましくて。本当にうれしくて、ほっこりしました。それと同時に、県外在住のお子さんにもストレートに響く沖縄のしまくとぅばのパワーも実感しました。
マンガの舞台となっているうるま市具志川に、「聖地巡礼」に来てくださる県外在住の読者の方もいます。具志川公民館の高江洲館長をはじめ地域の方々がそれを喜んでくれて、交流が生まれて、具志川公民館宛に「公民館の方々に良くしていただいて、すごく良い旅になった」とお礼の手紙を送ってくださって、それをまた地域の方が喜んでくれて…(笑)
沖ツラをキッカケに、それまで接点のなかった県外の方と地域の方に結びつきや縁が生まれています。ご近所の皆さんには本当に可愛がってもらっていてお世話になっているので、その皆さんに恩返しが出来ているような気持ちで本当にうれしいです。
「沖ツラファンというか、沖縄のファンになりました」と言ってくださる方もいます。沖縄のことをあまり知らない方たちに、沖縄を深く知ってもらうきっかけになりたいという思いも込めている作品なので、まさに本望ですね。
沖縄県内からいただく声の中には、お孫さんから方言について聞かれたり、世代を超えて「方言について話すことが増えた」というお声を多数いただいたりして、失われつつある沖縄のしまくとぅばが少しでも次の世代に残る…沖ツラがその一助になれたようで、うれしくて感慨深かったです。
琉球大学の学生さんから沖ツラを卒業論文の題材にしたいというお話があり、取材をお受けして、無事に卒業論文として完成したという報告をいただきました。論文はまだ拝見していないので、どういった切り口から論じられているのかはまだ分からないので、怖いですが(笑)、いろいろな部分から作品を考察して論じるのが論文かと思いますので、読むのが楽しみですし、本当に光栄なことだなと思っています。
「言葉に愛着を持つ」≒「気持ちを理解したい、共有したい」
―沖縄でもうちなーぐち、しまくとぅばを「話せない、聞き取れない」世代が増えてきています。「沖ツラ」を通し、沖縄県内外を問わず、若い方に地元の言葉にもっと愛着を感じてほしいという思いはありますか。
沖ツラは沖縄が舞台というだけではなく、その背景や文化を大切にしている作品です。沖ツラを通して、沖縄を知り、愛してもらえたらという思いを込めて描いています。「言葉に愛着を持つ」という姿勢は「誰かの気持ちを理解したい、共有したい」という思いの延長線上にあるものではないかなと思っています。
沖縄以外にも皆さんそれぞれ生まれ育った地域、長く暮らした地域、愛着のある地域があると思いますが、家族・友達・好きな人・憧れの人…そういう人たちと、自分をつなぐ絆のように、地域の言葉にも愛着を感じられたら本当に幸せなことだと思うので、「沖ツラ」を通して、言葉や文化や歴史に愛着を持って暮らしている人々の豊かさみたいなものを感じてもらえたらうれしいです。
「最も思い入れが深いのはプロトタイプの4ページ」
―公開されているエピソードの中で、最も思い入れの深いものを教えていただけますか。その理由も教えてください。
「アニメならではの良さや表現方法ある」
―アニメ化が決まったときの率直な感想を教えていただけますか。また、どうすれば原作とアニメが幸福な関係を築けるとお考えか、お聞かせいただけますか。
「夢が叶った!」と、めちゃくちゃうれしかったです。テレビアニメ化は自分にとって本当に長年の夢だったので、もしも出版社の担当編集さんから「アニメ化します!」言われたら、その瞬間、歓喜の涙でむせび泣くだろうなと思っていました。
実際には、想像と違い、「もしかしたらアニメ化するかもしれません。でも、あまり期待しすぎず・・・」「もうちょっとで・・・」「あと一息で・・・」とじわじわ焦らされていたので、一気に喜びを爆発させられず、ずっとドキドキソワソワヒヤヒヤしていました(笑)
沖ツラは色濃い地域性が魅力のマンガだと思うので、今回のアニメ化にあたり、制作の皆さまもそれを理解し、沖縄の文化や原作を尊重してくださっていると思います。マンガにはマンガの、アニメにはアニメの、それぞれの良さや表現方法があると思いますので、アニメ制作にあたってはアニメ制作のプロフェッショナルの方々にお任せし、沖縄の要素や資料やご協力できる部分は精一杯協力させていただきたいと思っています。
「方言」再現 アフレコ現場に秘策あり?!
―「沖ツラ」の場合、他の「アニメ化」以上に「あの沖縄の言葉はどう表現されるのか?! 本当に表現できるのか」といった点に注目が集まると思います。その点はいかがですか。
実は、アニメのアフレコ現場に、マンガのうちなーぐち監修を担当している譜久村帆高さんに入っていただいています。事前にうちなーぐちのセリフを譜久村さんが読み上げた音声ガイドを声優さんたちが聞いて、そのガイドをもとに吹き込んでいただきます。その現場に譜久村さん本人もいるので、声優さんたちのイントネーションに違和感がないかなども確認してくれています。喜屋武さんたちのセリフの再現について、心配ないどころか、期待しかないです(笑)
―アニメへの期待をもう少し聞かせていただけますか。
キャラクターがさまざまな動きをして、声や音がその世界観を広げてくれて、マンガとはまた違った「沖ツラ」の一面が見られると思いますので、とてもワクワクしています。ハブとマングースの回などの作中劇もどう描かれるのかなと楽しみです。アニメを通じて、マンガや沖縄のファンが一人でも多く増えてくれたらいいなと思います。
―最後に、「沖ツラ」をどのような作品に育てていきたいか、意気込みをお聞かせください。
「沖縄のマンガと言えば沖ツラ!」と言ってもらえるような、多くの皆さんに愛されるような作品にしていけたらと思っています。沖縄県外の方々に沖縄を深く知ってもらうキッカケとなるように、そして沖縄県民の皆さんが読んでも違和感なく楽しめるように、これからも沖縄への愛と敬意を持って作品づくりに精進していきたいと思っています。
TVアニメ「沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる」
2025年1月より沖縄テレビにて放送
SATFF 総監督:板垣伸 監督:田辺慎吾 アニメーション制作:ミルパンセ
CAST 中村照秋:大塚剛央 喜屋武飛夏:鬼頭明里 比嘉夏菜:ファイルーズあい 他
オープニング主題歌:HY
■公式サイト https://okitsura.com/
■公式X @okitsura(ハッシュタグ #沖ツラ )
Information
「沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる(沖ツラ)」の漫画情報はコチラ
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くらげパンチ「沖ツラ」WEBページ
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