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OTV報道部

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復帰を知る vol.6 ~パスポートがいらなくなった日~

沖縄は2022年、本土復帰50年の節目を迎える。OKITIVEでは「本土復帰50年企画」として、2012年に沖縄テレビのニュース番組内で特集したシリーズ企画「復帰を知る」などの過去の放送素材と、新たに取材した復帰にまつわる内容などを加えて特集していきます。
6回目は、「パスポートがいらなくなった日」についてです。

この画像は今から40年前の1972年、那覇市の泊港の様子

パスポートを提示する沖縄への入域手続きに、人々が列をなしている。

復帰前、沖縄から本土へ渡るためにはアメリカ民政府が発行するパスポート、「日本渡航証明書」が必要だった。

「本土就職」や日本政府への要請団など、沖縄と本土の間の人々の移動は活発だった。

当時、琉球政府の出入管理庁で勤務していた玉城寛さん。
沖縄と本土が接するまさに水際で業務にあたってきた。

元出入管理庁・玉城寛さん
「1船400人とかなりますとね、けんか腰ですからね乗客ね。もう早く船に乗りたいから、皆、我先にとなりますから大変ですよ」

珍しいパスポートを見せてもらった。表紙は赤い厚紙ではない。

元出入管理庁・玉城寛さん
「日本渡航証明書が赤に変わる前の前から、一番初期の渡航証明書」

もう一つは、学生が日本へ「留学」するために発行された琉球臨時中央政府時代のもの。

元出入管理庁・玉城寛さん
「ただ面白いのは、この留学ためにいくので30日間滞在する。もし受験で不合格になったら沖縄に返してくれと、厳しい措置が取られたようですね、合格したら4年間使えますよと、こういうのを書くというのは完全に外国扱いしているわけです」

パスポートの手続きそのものは琉球政府の所管だったが、実際に渡航を許可するのはアメリカ。この「アメリカ世」に翻弄された人々も少なくなかった。

横断幕に掲げられた「渡航拒否抗議」の文字。

当時、ある理由から本土への渡航を制限したアメリカ。この抗議活動の中心にたったのが福地曠昭さん。

福地曠昭さん
「きっかけは今言ったパスポートね」

東京の大学に留学し2年の時帰郷した福地さんは、再び本土に戻るため渡航許可を申請した。ところが。

福地曠昭さん
「普通の人は2,3日で許可されていたよ。ところが私だけ、下りないものだから。『みんなは出しているよ、2学期始まるのになんで出しませんか?』と言ったら、『わからん』というんだもん、理由不明。」

その後、アメリカ軍の諜報機関の尋問を受け身に覚えのない政治運動との関わりを問われた。政治的な弾圧目的で渡航制度が利用され人権を踏みにじるような行為に、福地さんは嘆願書をしたため弁護士会へ訴えた。

福地曠昭さん
「早く自分を助けたい。日本に行きたい。保留の理由をアメリカの方が言えないわけなんですよね、私は”好ましからざる人物”っていうだけで、人民党やOPPでもない」

こうしたアメリカの”好ましからざる”人々を前に、出入管理庁の職員も複雑な思いだった。

元出入管理庁・玉城寛さん
「なぜ許可が下りないんですかと聞いてもね、彼らの言うのはですね、いつも『セキュリティーリーズン』というんですよ。要するに公安的な理由だと。そういう時にはやっぱりジレンマ感じますよね」

この問題を機に福地さんは人権協会の設立や祖国復帰に向け大衆運動をリードする瀬長亀次郎などと共に活動してきた。結局、渡航申請は18回にわたり許可されなかった。

福地曠昭さん
「復帰協の代表で毎年申請した。記録的には瀬長亀次郎よりも、僕は記録が多いとみんなに冗談というだけど」

激動の沖縄にヤマト世の足音が近づいても、沖縄から本土に渡るための手続きは、復帰のその瞬間まで変わることはなかった。

与那原町で三線の工房を営む、大城安英(あんえい)さん。復帰前、大城さんは船会社に勤め財務担当だった。パスポートを手に毎月本土に渡っていた。復帰間際の5月13日、この日も出張で大阪に向かうところだった。

大城安英さん
「ただ出張のための出入管理部の結局はパスポートに印鑑を押しもらいに頂くだけというだけだったんです。渡される時に、大城さんが最後ですよということで」

復帰と同時にいらなくなったパスポート。そのパスポートに最後の判を押されたのが実は大城さんだった。

大城安英さん
「パスポートはもういらないんだということで自由に、大阪行って帰りはフリーでしたので、非常に『あぁこんなもんだなぁ』と、国内扱いされてね」

同じ国民でありながら沖縄の人々の移動を縛ったパスポート。それは日本とアメリカの狭間で揺れる沖縄を象徴するものだった。

復帰50年未来へ オキナワ・沖縄・OKINAWA
2022年5月15日(日)正午から沖縄県内のテレビ8チャンネルにて生放送!

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