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OTV報道部

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復帰を知る vol.7 ~2つの式典に揺れる復帰の意味~

沖縄は2022年、本土復帰50年の節目を迎える。OKITIVEでは「本土復帰50年企画」として、2012年に沖縄テレビのニュース番組内で特集したシリーズ企画「復帰を知る」などの過去の放送素材と、新たに取材した復帰にまつわる内容などを加えて特集していきます。
7回目は、2つの式典に揺れた復帰の日についてです。

1972年5月15日、政府主催の本土復帰式典が東京と沖縄でそれぞれで開かれた。
沖縄の本土復帰に政府が尽力したことを示すため二つの会場は同じような飾りつけがなされたという。

そして、東京での式典では27年にも及ぶアメリカの統治下から沖縄が祖国に還った事を日本全体が歓迎するさまが全世界へアピールされた。しかしそこには、沖縄を代表する屋良知事の姿はなかった。

元沖縄県知事専属秘書 大城盛三さん
「アメリカの統治だった沖縄が日本国になったという喜びで式典をやっているのとは趣旨が違うんです。こう証言する大城盛三さんは故・屋良朝苗さんが主席となった1968年から知事の職を退く1976年まで専属秘書を務めていました」

大城さんはあの日屋良さんが出席を拒んだ理由を今でも鮮明に覚えていた。

元沖縄県知事専属秘書 大城盛三さん
「(屋良さんは)まず基地問題を解決しなくちゃならないというのが第1番目だったですよね、それがされていませんから、沖縄は不満ですよと言いたいというのが根っこなんですよ、だから(屋良さんは)「僕は参加しない」ということになって、沖縄で正式に内地には行かなかった」

戦後一日も早い復帰を願ってきた屋良さんにとって、この日実現した「復帰」は、基地のない沖縄の実現を願う県民の思いとは遠くかけ離れたものだった。

沖縄で政府主催の式典が行われた那覇市民会館では、その日の午後に県が復帰の対する思いを県民に伝えるための「沖縄県発足式典」が開かれる予定だった。

一方、本土復帰に反対する人々は式典会場の隣にある与儀公演で抗議集会を開かれた。

当時のニュースナレーション
「復帰は市民、県民が望む形で実現したものではなく、基地の存続、自衛隊の先行配備など、県民の意思を踏みにじり欺瞞に満ちたものであり何ら変わらないとする声も強かった」

県の式典に県民が参加してくれるのか…
幕が開くまで屋良さんは気が気でなかったと大城さんは言う。

元沖縄県知事専属秘書 大城盛三さん
「雨降りでしたけど、公園で復帰反対抗議大会をやっているわけですよ、本当に県が主催する会に参加してくれるのかしないのか、不安もありました、屋良さんから『大城君あっちこっちで情報取れ』と言われ駆け回りましたよ」

県主催の式典はかぎやで風で幕を開けた。
こうしたプログラムから案内状、記念品まで当時の資料をもとに式典の内容を細かく記した一冊の本がある。

本をまとめたのは当時琉球政府の渉外課職員として日米両政府や立法院などの調整を行っていた神山長蔵さん。

屋良さんの指名で式典事務局に入った神山さんは式典の構成や舞台の制作まで全てを手がけたという。

元琉球政府の渉外課職員 神山長蔵さん
「あまりお祝い色は出さないでねとか、だからといってしょんぼりと引っ込んでいるわけにはいかないぞとかね、じゃあこれを具体的にどのように盛り込んでいくかというのは、それなりの問題でした」

「沖縄の望んだ復帰ではない」

この思いを日本政府に訴える一方で、県民に対し、県の描く将来像を示す重要な式典、その思いをどう表現するのか、この本には県の思いが、屋良さんの式辞として記録されている。

元沖縄県知事 屋良朝苗さん
「これまでの要望と心情に照らして復帰の内容を見ますと、私どもの切なる熱望が必ずしも十分に入れられたとは言えない事も事実であります。沖縄に内包する問題は複雑なものがあり、矛盾の多いことばかりであります」

一方、政府側は祝辞の中で「県民に不安と幾多の要望があることを十分承知している」との沖縄に対する認識を示した。

アメリカ軍基地の存在に翻弄される沖縄とその状況を理解しているとする日本政府…。

復帰から50年の歳月を振り返り、真の復帰を求めた世代から私たち復帰を知らない世代に復帰とは何なのかを改めて考えるきっかけを与えてくれた。

元沖縄県知事専属秘書 大城盛三さん
「基地問題が解決しない限りは復帰は終わらないというのが屋良さんの考え方なんですよ。だから復帰は続いているという考え方なんです」

元琉球政府の渉外課職員 神山長蔵さん
「日本政府は県民の思いが、要求が盛り込まれていないという事をよく承知している、だから本当はあなた達(若い世代)が、この問題のこの部分を取り上げて、あの時と今といくらも変わらないじゃないかという所を突いてもらいたいんだよね」

復帰50年未来へ オキナワ・沖縄・OKINAWA
2022年5月15日(日)正午から沖縄県内のテレビ8チャンネルにて生放送!

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