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OTV報道部

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復帰を知る vol.18 ~コザ騒動~

沖縄は2022年、本土復帰50年の節目を迎える。OKITIVEでは「本土復帰50年企画」として、2012年に沖縄テレビのニュース番組内で特集したシリーズ企画「復帰を知る」などの過去の放送素材と、新たに取材した復帰にまつわる内容などを加えて特集していきます。
18回目は、コザ騒動についてです。

特異な政治情勢の中捜査にあたった琉球検察。そして裏側で起きていた緊迫の事態が明らかになった。

リポート
「かつてこの海には見えない国境がありました」

復帰後に生まれた私たち取材班は1972年5月15日を県民が、様々な想いで迎えたことを知った。

沖縄タイムス元社長 新川明さん
「僕にとっては屈辱の日だよ」

「復帰」とは何だったのか。本土復帰を間近に控えた師走、沖縄を揺るがしたコザ騒動の顛末に迫る。

数えで99歳を迎える比嘉良仁さん。弁護士として法曹界に60年身を置いてきた。

元弁護士 故・比嘉良仁さん
「今後とも弱いものの立場に立って、常に正義の実現に邁進されることを心から念願してやみません」

アメリカによる統治下、妥協を許さない弁護活動で次々と無罪を勝ち取った比嘉さんに、白羽の矢が立った。琉球検察のトップ、検事長への就任だ。ある大物の事件を巡る逸話がある。

元弁護士 故・比嘉良仁さん
「当時ワンマン行政主席がおりまして、その事件は不起訴にしろと、それを聞かなければ君の首を保証できないとも言われて、まさに脅しですよね。

いわゆる捜査への「指揮権・発動」に対し比嘉検事長は…

元弁護士 故・比嘉良仁さん
「マスコミを呼んで明らかにすると」

元弁護士 故・比嘉良仁さん
「検察はあくまで起訴意見だが、行政主席の指示があるので従わなければならん。あ、これはいかんと。何も無かったようにご破算にしてくれと。無論、当然ながら起訴しましたよ。」

検察の信念を貫いてきた比嘉さんが、復帰目前で迎えた大きな山場…

1970年12月20日コザ、現在の沖縄市でアメリカ兵による人身事故をきっかけに民衆が、Yナンバーの車両に次々と火を放った「コザ騒動」。アメリカ兵による事件事故で無罪判決が続いていたこともあり、長年鬱積した県民の怒りが爆発した。

元弁護士 故・比嘉良仁さん
「今もってくすぶるのは、『騒乱罪』を適用すべきじゃなかったとか、私の処理が適切だという見解、今もくすぶっていますよ、今も…」

騒乱罪とは、大衆が力を合わせて暴行や脅迫行為に及び、地域の「平穏を乱す」もの。警察による逮捕は政治的な弾圧と、各政党、人権団体から非難の嵐となった。

当時、比嘉さんの下で公安部長検事を務めた高江洲歳満さん。検察が騒乱罪で起訴するかどうかが焦点となる中、検察内部では異なる見解で、事件処理に臨んでいたという。

元公安部長検事 高江洲歳満さん
「あの映像は、燃やされたものが映っているんですよ。住民の側は映っていないんですよ。みんな、ちゃんちゃんこを着けてフィフィって指ならして見物しているわけですから、自分達に危害が及ぶということは全く考えていない。だから平和だったんですよ」

一方、軍関係者からの情報で基地内では当時、驚愕の事態が進行していたという。

公安部長検事を務めた高江洲歳満さん
「パニックになっていたのが基地の中です。自分達の仲間の車が外で焼かれたということで、住民が攻撃してくるんじゃないかということで、不安に陥っているわけです。防御のために、飛行機を飛ばしてたたこう。戦車を持ち出してやろうと危険な状態だったんですよ」

報復攻撃に出かねない緊迫した状態を押さえたのが軍首脳部だった。

公安部長検事を務めた高江洲歳満さん
「いや、これは私たちに対する攻撃じゃないんだと弁務官はいうわけですよ。日本政府に対する攻撃だと、なぜならば、施政権は移るじゃないか、一部国会議員が出ているじゃないかということで、みんなをなだめる一方で、君たちの損害は賠償するということで抑え込んだんですよ」

騒動の直後に毒ガス撤去の延期を示唆するなど、強権的な態度を示す一方、事態の悪化を全力で回避した軍。沖縄の近現代史に詳しい新崎盛暉さん。軍の対応の背景には国際世論を考慮したものだと指摘する。

沖縄の近現代史に詳しい新崎盛暉さん
「恐らく彼らも腸煮えくりかえっているけれども、しかし、自分達がやったこともやったことだからね。アメリカのメンツは潰れるよ。つまり、自分達の統治が失敗だったっていうのの証明だから。それをどう処理するというのはあっただろうね。」

基地内のパニックをよそに、夜明けまでには事態が収束していったコザ。約4ヶ月後、検察は騒乱罪を適用しないと発表した。

元弁護士 故・比嘉良仁さん
「計画的でも何もないんですよ。酔っぱらいのいわゆる器物損壊とか、公務執行妨害ぐらいなもんです。結局私は日本流に従って、みんな不起訴にしたんです。しかしこれは今以てくすぶっているようですね、騒乱罪適用すべきとかそうでないとか」

コザ騒動から約1年半後。県民が願い、あるいは反対し、または逡巡しながら復帰の日を迎えた。そしてそれから50年。今なお内に抱えた矛盾と向き合う沖縄がある。

沖縄大学名誉教授 故・新崎盛暉さん
「40年たって変わらないことはあるけれども変えてきたところもある。力をつけてきたと。そこは変わってきたんだよとはっきり言える。そこは見ていかないと」

沖縄タイムス元社長 新川明さん
「沖縄の自立に向けた精神がさ、若干、芽生えてきたということが得たことの大きいことだね」

歌手・大工哲弘さん
「沖縄をっていうのはどこに返せばいいんだって…」

復帰50年未来へ オキナワ・沖縄・OKINAWA
2022年5月15日(日)正午から沖縄県内のテレビ8チャンネルにて生放送!

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