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真栄城 潤一

真栄城 潤一

「好きなことを職業にしてもいい」若い世代に“自由の力”を与える。LIBERTY FORCE 照屋健太郎さん

照屋健太郎libertyforce

沖縄県内で「XLARGE」「X-girl」「MILKFED」「UNDEFEATED」などのアパレルショップを運営する「トライラボ」の代表で、ストリートカルチャーを牽引する存在でもある照屋健太郎さんは、ファッションという枠に囚われず、アート、カルチャー、そして社会活動まで、幅広いフィールドで精力的に活躍する要注目人物だ。
自身でもファッションブランド「LIBERTY FORCE」を手掛け、そのコンセプトには沖縄の若い才能を応援する熱い熱い思いが込められている。今回OKITIVEでは、そんな照屋さんの思いを聞くためのインタビューを敢行。ブランドのメッセージや仕事の原動力、これからの沖縄のために考えていることなどについて、多方面から迫った。

照屋健太郎libertyforce

―― 子どもの頃の印象的な思い出やこんな風にして遊んでた、そこから生まれたデザインの根元はありますか?

「僕、よく転校してて何度か小学校が変わったんです。基本的に1人で絵を描いて遊んでて。そしたら『絵、上手いね』という感じで絵がきっかけで友達ができたんですね。担任の先生とか友だちの似顔絵描いたりもして。小5の時に、住んでたマンションの友だちを主人公にして描いた漫画を、勝手にマンションの掲示板みたいな所に貼ったりもしました(笑)中高生の頃もずっと描き続けてて、美大に進学するかも迷いました。

絵は『ドラゴーンボール』とか『Dr.スランプ』とかの鳥山明さんの絵をめちゃくちゃ描いてましたね。鳥山明さんのメカ描写とかは今のLIBERTY FORCEのデザインに取り入れてる部分もあります。自分でワクワクしてきたことをLIBERTY FORCEでやっているというのはあります。それはすごい今につながってると思いますね。僕の感性に刺さってきた要素を散りばめているから、特に同世代には同じように刺さって『これはヤバい』みたいな反応もあるわけです(笑)

最近で言えば、コロナ禍になってすぐ、外での交流がしにくくなったタイミングには今の気持ちで学生のころ(90年代)によく読んでいた雑誌を古本で40冊くらい買ったりして見直しました。その時に『自分が何にワクワクしてたんだろう』というのはじっくり掘り返したんです。当時の洋服を作っていた人や、ファッションをリードしていた第一線の人たちがどんなことを考えてたのかなということも含めて、自分だったらどうするかなということに改めて向き合いましたね」

―― 東京での暮らしもある程度長かったと思いますが、沖縄に戻って生活する中で東京とのシーンやカルチャーの違いについてどう思います?

「東京は夢や目標を持った人たちが集まっている印象です。時間のスピード感や、海外展開や将来へのビジョンなど色んなことの規模感も全く違う。クリエイターの友人たちと話したりしてても、『来年はアジアとかアメリカに展開する』という話題が普通に出てくるんです。一方で沖縄は良い意味でゆったりですね。僕なりに自分で“東京の感覚”持っているつもりではありますが、それでも東京に行くと『凄えな』って感じてしまいます。

沖縄に帰ってきて感じているのは『沖縄から世界へ』みたいな言い回しの違和感です。これまでは沖縄から飛び出して活躍するということが目標だった過去があったと思うんですが、今はもうそこだゴールじゃないと思います。ネットもSNSもある今、沖縄が注目されることを沖縄で作り出して『世界に注目される沖縄』を模索する方が僕は良いんじゃないかと考えてるんですよね。

例えば沖縄の国際通りにユニクロとかH&Mをどこにでもあるようなお店を作って原宿みたいにする必要は全く無くて、沖縄にしか無いものを作りたいし、作っていった方がいいと思うんです。その考えもあって、ハワイからアーティストを呼んで国際通りの店舗壁画にグラフィティーアートを描いてもらったりもしたんです」

―― 仕事に関しての挫折や失敗を感じた記憶は?

「失敗とか挫折って、これまであったのかもしれないんですが、覚えていないんですよ。本当に単純に、今年楽しかったことは来年もやって、そうじゃないことはやらない、という風にやっていくことにしているというか。そうすると来年が楽しくないワケがないんですよね。そしたら今も楽しくヤバいけど、先の方がさらに楽しくてヤバい(笑)」

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―― めちゃくちゃポジティブですね(笑)。では、ワークライフバランスについてはどうでしょうか。

「仕事、という感覚は正直あまり無いんです。24時間毎日仕事しているし、同時に遊んでいる。強いて言えば世間が土日休みなので、そのタイミングでメールなどの仕事のやりとりがストップしてしまうのがストレスですかね。僕はずっと動いているので。最近は夜9時とか10時に寝て、4時とか5時に起きてそこからバーっと仕事するんです。なんかもう、おじいちゃんみたいな生活なんですけど(笑)」

―― そんな中で、日々の生活で幸せに感じる瞬間は?

「やっぱり家族で過ごす時間です。結婚したときには周りにびっくりされました。『健太郎も落ち着くんだ』って(笑)単純に1人だけでいるよりも、妻も子どももいて3人いた方が高みにいけると思ってるんです。チームでやっているという感覚ですね」

―― 家族ができて、健康や料理、好きな場所についてはいかがでしょう?

「コロナになって外で人と会う機会が減って、自分の時間が増えたことで心身と向き合って身体に良いことをしようという考え方が強まったんです。ヨガやピラティスを試してみて、ピラティスの方は1年くらいは続いてますね。
 食に関しては良いお水を飲むようにしたり。あとは、最新の科学的な知見も調べるのが好きでよく読みますね。1日のサイクルでご飯を食べるのが1日1食がフィットしてて、今そんな生活を続けています。ただ、夜はもう毎晩お酒も飲みますね。1人で記憶なくなるくらい(笑)」

「沖縄料理ではソーメンチャンプルーですかね。同級生が『小桜』というお店をしていて、そこのソーミンチャンプルーが好きです。料理は基本的に自分ではやらないし、できないんですが、記念日とか特別な時にサプライズで作ったことはあります」
その時は友人がおすすめしてくれた、アクアパッツァをコック服を着て調理しました(笑)
そして、「落ち着く場所はやっぱり自宅です。自宅のキッチンに立った時、ちょうど海が見えるんですよ。その景色が1番好きですね」

―― 少し質問の方向性を変えます。現在、社会的に「SDGs」の考え方が重要視されていますが、接続可能な活動について。

照屋健太郎libertyforce

「イギリス発祥で、学校に無料の生理用品を詰めた赤いボックスを提供して若い子たちを支援する団体『レッドボックスジャパン』の代表を務めています。家庭が貧しくて生理用品が買えなかったり、それを言い出せなかったりする『生理の貧困』が問題になっています。生理用品が無いから学校に行けなくて教育の機会が喪失してしまうというケースもあります。

加えて、正しい使い方を知らない子たちがプラスチックのタンポンをトイレに流してしまって、それがペットボトルとかと同じように海に流れ出て海洋汚染につながってしまっているという話もあります。

レッドボックスジャパンの代表の方とたまたま出会う機会があって、団体の主旨に賛同して僕と妻と夫婦で沖縄県内で活動しているんです。こうした活動も若い世代の人たちが学業やスポーツに集中してもらえるような土台になると思います。今は県内小中高166校が導入していて、レッドボックス(赤い籠)にはLIBERTY FORCEのロゴを入れて、県内490校全ての学校に導入してもらえるように活動を続けています」

―― 照屋さんが手掛けるLIBERTY FORCEというブランドには、どんな思いやメッセージが込められているのでしょうか。

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「ブランド『LIBERTY FORCE』を作ったのは、クリエイティブな才能を持っている人たちが沖縄に多いからなんです。東京にも負けない凄い子たちがいっぱいいると思ってます。うちの会社は30人くらいの従業員がいて、平均年齢が23歳くらいで未成年もいたりするんですが、その若い子たちを見て学ぶこともあるし、面白いことをやっている子たち多いんです。

その子たちに学生卒業してどうするのと聞くと、皆資格をとったり、公務員になったりという傾向がある。両親からは『学生時代には好きなことに打ち込んでもいいけど、卒業したら終わりで、ちゃんと就職しなさいね』ということを言われていて、そうしますと言うんですよ。
でも、僕らみたいに好きなことを仕事にする人もいる。好きなことに挑戦すること、そして『好きなことを職業にしてもいい』ということを若い人たちに伝えたいし、それを言っていかないと社会にとっても自分たちにとっても面白くならないと思うんです。だから“自由の力”なんですよね。ファッションブランドではあるんですが、個人的には“活動”に近い感覚で取り組んでます」

照屋健太郎libertyforce

―― 4月29日からは「イオンモール沖縄ライカム」でのポップアップもあります。その動きも含めて、今後の展開についてはどのように考えていますか。

「LIBERTY FORCEのTシャツにもあるんですが『CHACE YOUR BRIGHT FUTURE』というメッセージを届けたい。そのためにファッションだけじゃなくて、多方面で色々なことを展開していきたいですね。すでにLIBERTY FORCEで年越しそばを企画したり、琉球ガラスを作ったりということもしています。

その中でまだ人物とコラボをしていなかったのですが、ずっとLIBERTY FORCEにフィットするのは具志堅用高さんだと思っていたんです。自然体で格好をつけすぎない感じが良くて。少し前からずっと構想してアプローチしてたんでけど、ついに1年くらいかけて実現しました。復帰50年企画ということで、29日のポップアップで具志堅さんをデザインしたコラボTを販売します。これは生産コストを分を除いた利益は全てレッドボックスに寄付します。

さらにその先の話で言えば、『LIBERTY FORCEランド』みたいなことをやりたいです。若い人たちの夢を後押しする土壌を作るためにも、LIBERTY FORCEを軸にして様々なカルチャーをミックスしたイベントをブチ上げて、たくさんの面白いことがあることをたくさんの若い人たちに知ってもらえるきっかけを作っていきたいですね」

照屋健太郎libertyforce

▼4月29日〜5月3日開催「イオンモール沖縄ライカム」でのポップアップ情報
https://www.instagram.com/liberty____force/

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