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OTV報道部

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平和の礎に刻まれた戦没者24万人の名前読み上げ 12日間で1500人の参加者が向き合った沖縄戦

平和の礎には沖縄戦などで犠牲になった24万人余りの名前が、敵や味方の区別することなく刻まれている。2022年ここに刻まれた全員の名前を読み上げる初めての取り組みが行われた。要した期間は実に12日間。参加した人々は名前の読み上げを通してどのように沖縄戦と向き合ったのか。

米軍上陸の地から始まった名前読み上げ

6月12日、沖縄戦でアメリカ軍が最初に沖縄本島に上陸した読谷村から始まったプロジェクト。地元の住民や高校生が失われた命を思いながら、平和の礎に刻まれた名前を一人ひとり丁寧に読み上げた。

恩納村から参加した長嶺美奈子さん。防衛隊だった祖父と伯父は沖縄戦で犠牲になったほか、もう1人の伯父も中国戦線で命を落とし2度と故郷の地を踏むことはなかった。

戦没者遺族の想い 参加者は国外からも

長嶺美奈子さん
「(祖父は)防衛隊、まだ米軍が上陸する前の伊江島の飛行場建設に駆り出されて、そこで栄養失調で(亡くなった)。戦争で死ななければずっとこの後の人生を生きていた。それを全部奪われているわけですよ」

プロジェクトは県の内外に留まらず、深夜帯にはアメリカ・ハワイやニューヨークの参加者が沖縄戦で犠牲になったアメリカ兵の名前を読み上げた。

米国から参加したアンソニー・ドノヴァンさん
「戦争で亡くなった日本の方、沖縄の方、そしてアメリカ兵たちの魂が、いま世界で起きている戦争を止め、平和な世界の実現のために力を与えてくれることを願います」

「名前の無い刻銘者」「礎に名前の無い父」

また各地の会場で見られた場面が…。名前の無い刻銘者読み上げ名前が分からず、住民の証言でのみ確かめられた犠牲者の存在。多くの住民を巻き込んだ地上戦の実態を表している。

参加者には「戦争の後遺症」によって家族を亡くした人もいる。伊佐眞政さんの父・眞常さんは、陸軍の石部隊に所属し宜野湾の戦闘に参戦した。

伊佐眞政さん
「本格的な戦闘になったのが大山あたりという話を聞いてるんですけど、あっちで大激戦ですよ。その中に僕の親父もいるんですよ。米軍の弾が石に反射してきて、それで眉間やられて、第一線からちょっと後退している間に、もう小隊は全滅ですよ」

血で血を洗うといわれた日米の激戦で地獄を目の当たりにした眞常さん。戦後、家族と過ごす中でも心に負った深い傷が癒えることはなかった。

伊佐眞政さん
「PTSDというんですか。もう耐えきれなくなって我慢できなくなってですね、農薬を飲んで死んでしまっているんですよ。僕の親父のああいう死に方は戦争が原因でありますから、礎だけに収まらないような悲惨な状況はいっぱいあると思います」

礎に父の名前は無かったが、それでも沖縄戦の犠牲者に変わりないと、読み上げを通して戦争の悲惨さを訴えた。

1995年に建立された平和の礎。刻まれた名前を通してどこでどのように最後を迎えたのかわらからない亡き肉親と遺族は、50年ぶりの「再会」を果たした。戦後77年がたち沖縄戦の体験者は少なくなり戦没者を直接知る遺族でさえも高齢となっている。

1995年平和の礎の写真

進む遺族の高齢化「ただの慰霊碑になりやしないか」

平和の礎建立に携わった元副知事・高山朝光さんは、戦争の記憶だけでなく礎の持つ理念も風化してしまわないか強く懸念している。

平和の礎建立に携わった高山朝光さん
「平和の礎も今は多くの人が遺族の方々がまだ元気だからね、(参拝に)行っているんですよ。それがだんだんいなくなってくると、それは単なるそこにある記念碑になってしまいやしないかと。こういう戦争があって、たくさんの人が亡くなったと、平和が大事だと言うことを、特にこれから大事なことは、若い人がそういう気持ちを持っていただく」

若者たちの決意 「記憶の継承はいまを生きる世代の責任」

戦争の記憶の継承はいまを生きる世代の責任と捉え、プロジェクトに関わった若者たちがいる。
曾祖父の名前を読み上げた沖縄大学の大兼久楽今さん。祖母から戦争で亡くなった曾祖父の話を聞き、その名前を心に刻むため参加を決意した。

曾祖父の名前を読み上げた大兼久楽今さん
「戦争のその恐ろしさっていうのは、もう私達の世代ぐらいまでしか多分聞けなくて。今から生まれてくる子たちは、戦争って何だろうくらいのものというか、戦争という言葉しか多分わかんないので。おばあちゃんの言葉と、おじいちゃんのことっていうのは本当に絶対に忘れないで、自分がその受け継ぐ人として、常に考えていきたいなと思います」

西原中学校の全校生徒が参加し、戦争で命を落とした西原町出身の6200人余りの名前を読み上げた。

吉本梨花さん
「学校全員で読みきれないだけの人数が亡くなられていて、すごく残念、悲しいなと感じました。自分たちができることはすごいちっぽけなことだけど、若者たちが聞いて受け継ぐことによって絶対に途切れない歴史になる」

6月23日午前、2022年追加刻銘された55人の名前を読み上げ、平和の礎に刻まれた24万人あまり全員の名前の読み上げを終えた。

平和の礎建立に携わった高山朝光さん
「名前を読み上げた方々、若い方々がたくさんいますので、若い人たちがそれをしっかりと受け継いで、語り継いでいく。特に今回の期待はそれなんです」

県の内外、そして海外から1500以上が名前の読み上げを通して、それぞれ沖縄戦と向き合った。

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