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くらしと経済編集部

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もう個人レベルの問題じゃない 睡眠不足が招く経済的損失

後間
こんにちは。後間秋穂です。
今回は睡眠不足が招く経済的損失について、野村證券那覇支店支店長の宮里洋介さんに詳しく伺います。

もう個人レベルの問題じゃない 睡眠不足が招く経済損失

後間
疲労回復のためには重要な「睡眠」ですが、世界と比べて日本人の睡眠時間はどうなっていますか。

宮里
日本は世界的に見ても睡眠時間が少ない国だと言われています。
こちらのグラフは2018年に経済協力開発機構・ OECDが実施した調査の結果です。
日本の平均睡眠時間は7時間22分と、加盟国の平均睡眠時間である8時間25分より1時間ほど短いことが分かります。

日本の睡眠時間

後間
確かに、グラフで見ると一目瞭然ですね。
では、睡眠時間が短いことでどのような影響が考えられますか。

宮里
はい。睡眠不足は肥満に繋がったり、免疫力の低下を招き風邪をひきやすくなったりする恐れがあります。
さらに高血圧症など命に係わる疾患や、うつ病といった心の病気も引き起こします。
企業にとって人材は大事な財産ですので、睡眠不足の影響で欠勤者や離職者が増えれば、
人手不足に陥り業務を圧迫するだけでなく医療費の負担や採用コストの増加にも繋がります。

後間
企業にとって、従業員の睡眠不足は見過ごせない問題なのですね。

宮里
はい、そうなんです。2016年に発表されたランド研究所の調査結果によりますと、日本の睡眠不足による経済損失は、当時の為替レート1ドル110円換算でおよそ15兆円に上ることが分かりました。
これは当時の国内総生産・GDPの2.92%にあたります。
そしてアメリカやイギリスなど主要5か国の中ではワースト1位という結果になりました。

睡眠不足による経済損失

後間
睡眠不足がこんなに大きな損失を生み出すのは驚きですね。
では働く人たちが、睡眠時間を確保できない理由はなんでしょうか。

宮里
はい。都内で働くビジネスマンを対象に実施した調査では、睡眠不足の理由として「仕事からの帰りの遅さ」「寝ながらスマホ」「通勤時間」などが挙げられました。
また、「家事」「育児」と答えたのは女性の割合が高い結果となりました。
近年、女性の活躍が推進されつつも女性の家事負担は変わらず、睡眠時間の減少に繋がっていると分析されています。

欧米の大手企業では、仕事のパフォーマンス向上につなげるため昼間に30分程度の仮眠を取り入れていますが、この調査ではおよそ半数が「仮眠をとることは不可能」と回答していて、
日本ではまだハードルの高い取り組みといえるかもしれません。

睡眠不足の要因

後間
なるほど。
では、昼間の仮眠以外にも睡眠不足を解決する手立てはありますか。

宮里
はい。EUでは次の出勤まで11時間以上の休息時間を設けることを法律で義務付ける「勤務間インターバル制度」を導入しています。
日本でも2019年4月から勤務間インターバル制度導入の努力義務化や、年5日の年次有給休暇の取得義務化が施工されていて、少しずつですが取り組みは始まっています。

後間
今後も睡眠時間の確保に向けた取り組みが進み、ワークライフバランスが実現されることを期待したいと思います。
今回は睡眠不足が招く経済的損失について宮里支店長に伺いました。
ありがとうございました。

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