公開日
真栄城 潤一

真栄城 潤一

次世代の起業家が集う「IVS2022 NAHA」が大盛況で終幕 白熱のローンチパッドと代表インタビュー

IVS那覇
熱戦が繰り広げられた「LAUNCHPAD(ローンチパッド)」の出場者たち

国内のインターネット企業の経営者や投資家が一堂に会するイベント「IVS2022 NAHA」が2022年7月6日〜8日の3日間、那覇市の那覇文化芸術劇場なはーとをメイン会場に開催された。各業界の第一線で活躍する起業家や投資家たちが集い、トークセッションやワークショップなど多数の企画が同時多発的に行われ、3日間の合計で過去最大となる1,800人が参加する活気溢れたイベントとなった。

最終日の8日には、起業家たちが自らの事業やサービスを投資家にプレゼンして競い合う「LAUNCHPAD(ローンチパッド)」で熱戦が繰り広げられた。約250社の応募のなかから予選を勝ち抜いた14社の代表が登壇し、審査員を務めるトップ起業家や投資家と劇場を満員にした観客に向けて6分間の熱いプレゼンを展開。フレッシュペットフードを手掛ける「株式会社PETOKOTO」が優勝を勝ち取った。そして、沖縄から初参加した天然繊維事業を手掛ける「株式会社フードリボン」が初の2位入賞を果たした。

イベントを主催するIVS株式会社の島川敏明代表へのインタビューと、白熱したローンチパッドの様子をお届けする。

「沖縄のスタートアップ熱が高まっている」

IVSは「次世代の、起爆剤に。」をスローガンに掲げ、今年で16年目を迎えた。今回のテーマは「The Future Has Arrived」とし、世界中の経営者と投資家が交流できる機会を「IVS2022 NAHA」で創出することを目的としている。今回はWeb3領域のトップ企業、ブロックチェーン関連の著名人たちを世界中から集めた「IVS Crypto 2022 NAHA」も那覇市のホテル・コレクティブで同時開催された。

IVS那覇
沖縄でのIVS開催について語る島川代表

「もともと沖縄開催の話は3〜4年前から出ていて、なはーとが完成したことで1000人規模での開催が可能になったので今回の開催に至りました。シンプルに『沖縄に行きたい』という経営者も多かったことが、沖縄開催をすんなり決めた理由ですね」

IVS株式会社の島川敏明代表は、沖縄での開催理由をそう語る。開催前から「沖縄でスタートアップ熱が高まっている」という話題を各方面で聞いていたと話す島川代表。実際に沖縄の地を踏み、その熱を実感したという。

「最近だと福岡や神戸などでもさまざまな施策が展開されて盛り上がっていますが、沖縄は独特の『温かさ』を感じると思います。さらに、台湾が目の前にあることもあって、最初からグローバルな視野を備えてるとも感じますね。立ち回りや闘い方についても、東京のスタートアップにも遜色ないようなことをしていると思います」

今回のIVSには過去最高の人数が参加し、さまざまな企画や交流以外でも沖縄のマリンアクティビティや朝活を楽しむ催しが組まれ、大人気だったという。今後このイベントをきっかけにして沖縄に注目する起業家や経営者が増えていく可能性は大きい。

「既に実際に沖縄に移住してる経営者の人もちらほらいます。スタートアップはインターネットの世界で殺伐としていますから(笑)、それからすると沖縄の生活というのは文字どおり憧れと言っていい。今回これだけの規模でIVSをできたことで、たくさん人に沖縄の魅力を伝えられたのではないかと思っています。
もちろん、沖縄の経済にもお返ししたい気持ちもありますし、今後の沖縄開催のときにはより多くの地元企業のみなさんに協力してアドバイスしてもらいながらやっていきたいと考えています」

起業家の登竜門「LAUNCHPAD」

IVS那覇
様々な工夫を凝らしながら6分間のプレゼンで競う「LAUNCHPAD」。会場の空気を握れるかどうかがカギとなる

最終日に開催された日本最大級のピッチイベント「IVS2022 LAUNCHPAD NAHA」は、会場となったなはーとの大劇場がほぼ満員になる盛況ぶり。客席にいるほとんどが起業家や投資家、スタートアップに携わる人たちで、会場全体が独特の熱を帯びていた。

ローンチパッドはIVSの目玉イベントの1つで、「起業家の登竜門」とも言われている。トップレベルの起業家・投資家、そして多くの観客を前に自社のプロダクトをプレゼンする6分間の闘いは、想像以上にエキサイティングなものだった。
 各登壇者は大きなスクリーンに自社のサービスや理念を図式化し、あるいは動画で表現し、それと合わせて身振り手振りや語り口で観客を魅了する。引き込む力のあるプレゼンターのパフォーマンスでは、会場全体がその人の手中に飲み込まれるような感覚になることもあり、そうした“ライブ感”がプレゼンの評価に大いに影響した。

プレゼンでは、新たなあり方を模索するSNS、再エネ運用プラットフォーム、企業のカーボンニュートラルを可視化するシステム、ECサイトの購買率向上・効率化を図るサービス、個人の信用を最大化する審査AI、企業とハイスキルなフリーランスとのマッチングサービスなど、様々な分野での新たな試みが次々と繰り出された。

IVS那覇
優勝トロフィーを受け取る「ペトコト」の大久保さん(中央)

14社の白熱した競い合いのなかで優勝を手にしたのは、最後にパフォーマンスした「株式会社 PETOKOTO(ペトコト)」の大久保泰介さんだった。大久保さんはペットたちが毎日「茶色のカリカリしたもの」を食べている現状をコミカルに嘆きつつ、そうしたペットフードと体重管理・寿命との相関性にも触れながら「餌じゃなくてご飯を!」とアピールした。
ペトコトが手掛けている新鮮な国産食材を中心に使用した保存料無添加のフレッシュペットフードを自らも壇上で食べてみせ、「ペットを家族として愛せる世界へ」と高らかに宣言して会場の心を掴んだ。

沖縄の「フードリボン」が2位入賞の快挙

IVS那覇
沖縄勢で初の2位入賞を果たした「フードリボン」の宇田さん

そして惜しくも2位となった「株式会社フードリボン」は沖縄に本社を置く会社だ。社長の宇田悦子さんは、廃棄されていたパインの葉やバナナの茎といった未利用農産資源を天然繊維にする「ファーマーズテキスタイル」をプレゼンした。オーガニックコットンの供給が追いついていないアパレル業界の情勢を踏まえ、未利用の農産資源を天然繊維として活用すれば「畑の真ん中を繊維工場にすることが可能です」と説明。現在特許出願中の専用機械を東南アジアなどにも展開できれば、農家所得向上のソリューションにも十分になり得る可能性を示しながら、「ファッション業界に新しい風を吹かせ、社会を変えるビジネスに挑戦します」とアピールした。

審査員からは「地に足のついたサスティナブルな感じが時代に合っている」「今後のアパレル業の排出量を考慮すると推したい事業だ」などと絶賛の声も上がった。会場で表彰された宇田さんは「とてもびっくりして、胸が高まっています」と驚きつつも、喜びを噛み締めていた。

IVS那覇
自社事業の「ファーマーズテキスタイル」をプレゼンする宇田さん

後日、フードリボンHPのブログに「やんばる、大宜味村の原点を胸に、天然繊維の産業を創出し、みなさんがふだん着る服が、沖縄のホテルに泊まった時のシーツやタオルが、FARMERS TEXTILEに置き換わる、という未来を実現するべく、今回のIVS launchpadで学ばせていただいたこと、頂いたご縁を力に、一歩一歩、進んで参ります」とコメントした。

優勝・参加企業にはスポンサー企業から世界初となるヘリコプターサイネージ1ヶ月無料掲載やオフィス利用権など、事業開発をサポートする商品が多数贈呈された。

IVSの島川代表が「沖縄での定例開催」の可能性を口にしたことも含め、県内でのスタートアップの機運はここ数年でどんどん高まっている。IVSという催しが県内企業の間ではまだそこまで知られていないのが現状だが、今後県内企業が積極的に参加することで交流が生まれ、さらにローンチパッドへのエントリーで新たな事業が盛り上がりを見せれば、IT業界もにわかに活気づくことになるだろう。
次回以降、沖縄の次世代の気鋭の起業家たちが続々姿を現すこと期待したいところだ。

あわせて読みたい記事

HY 366日が月9ドラマに…

あなたへおすすめ!