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真栄城 潤一

真栄城 潤一

「なぜスポーツビジネスがアツいのか?」 IVS2022 NAHA、経営者たちの激論をレポート

IVS2022 NAHA、経営者たちの激論をレポート
パネルディスカッションの登壇者。左から早川周作さん、新居佳英さん、上原仁さん、山﨑俊さん

次世代を担う国内のインターネット企業の経営者や投資家が集い、トークセッションやワークショップなど多数の企画が行われたイベント「IVS2022 NAHA」。2022年7月6〜8日の3日間、那覇市の那覇文化芸術劇場なはーとをメイン会場に開催されたこのイベントでは、全国から各業界の第一線で活躍するトップレベルの経営者たちが参加し、トークセッションやワークショップが行われた。
期間中に30以上行われた企画のなかから、沖縄から「琉球アスティーダスポーツクラブ」の代表・早川周作さんがモデレーターを務めたパネルディスカッション「なぜスポーツビジネスがアツいのか?経営の実情を赤裸々解説」の様子をお伝えする。

なぜスポーツビジネスをするのか?

早川さんのほかに登壇したのは、プロバスケットボールクラブ「アルティーリ千葉」を設立してスポーツビジネスも手掛ける「アトラエ」代表の新居佳英さん、ゲームとスポーツの2領域で事業を展開し、プロバスケ「滋賀レイクスターズ」に経営参加している「マイネット」社長の上原仁さん、そしてプロバスケ「鹿児島レイブナイズ」のオーナーも務める「Wiz」社長・山﨑俊さん。
スポーツビジネスへの関わり方や考え方などについて、それぞれの立場からの意見を交わした。

まずテーマになったのは「なぜスポーツビジネスをやるのか」。新居さんは「正直言ってITよりは儲からない」とバッサリ言い放ちつつ、「スポーツの根源的な『社会的存在意義』を重視していて、スポーツを通して生きがいを提供していくのが最も大きな目的ですかね。ビジネス的な期待値もありつつ、採算性を強く意識しているわけではないですね」と説明した。
その上で、自身も手掛けているバスケ市場については「まだまだこれから伸びていく市場というのが明確なので、メリットを享受出来る可能性が高い点で投資しています」と述べた。

「そもそもスポーツビジネスはグローバルにみるとかなり大きな市場ですが、日本ではずっと“置き去り”状態にされてきました」と指摘したのは上原さん。「ゲームと類似のコンテンツビジネスとしてスポーツビジネスを捉えている」という独自の見方を示し、IT系のゲーム企業でIP(知的財産)保有者が「強い」業界の趨勢に触れて、スポーツビジネスにおいても「IPフォルダーになることを重要視している人は多い」と話した。

早川さんは2人の意見を受けて「スポーツはとても不確定な部分がある。通常のビジネスと違って、自分の力が及ばないところがその最たる部分でしょう」とも付け加えた。
一方、山﨑さんはスポーツと会社経営に共通する点として「経営者がビジョンを決めて、それを共有する人たちが集まり、みんなでひとつの目標に向かってやっていくこと」を挙げた。

チームの勝敗とビジネス

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上原さんはスポーツチームの経営について、ブランディングと地域性の重要さも指摘した。

「地域ごと、スポーツごとでブランドの作り方やミッションの立て方に違いは出てきます。滋賀県という地元に重点を置いて活動している滋賀レイクスは、滋賀県にかかわるみなさんが総出で応援してくれて、そのなかで地域のみなさんと社会に貢献するようなブランドイメージを構築するようにしています。規模感もありますが“地方での闘い方”というのはそれぞれの場所にあると思います」

これに応じて、山﨑さんがすかさず「地域で闘うのはスポーツチームがその地元を“背負ってる感”がありますもんね。地元議員とか、政治関係者も試合会場に駆けつけて応援しますからね」と合いの手を打った。

また、チームの勝敗とビジネスとの関連について上原さんは「勝ちをめざすことで1つの方向を向くことができます。ミッション・バリュー型の経営で考えると、頂点をめざすのは当然のことです」とし、「試合の勝敗で顧客の満足度にはかなりの差が出るんです」と指摘。
「勝利がトリガーになって新規顧客の動きも高まるし、これまでの顧客維持も安泰です。逆に負けが続いてしまうと、離脱も出てくる」と続け、「しっかりと勝つことに投資することがビジネスとしてもプラスになります」と語った。

新居さんは「どこを見据えてチーム作りをするかが大事です」と断言した。プロバスケを引き合いに出し、「我々の場合は、5年で投資を回収することを根底に据えて、B1に上がってちゃんと勝てるチームを作ることを明確な到達点としました」と説明。Bリーグの市場規模が一気に上がるタイミングを加味して「末席でも獲得することを最重要視した」という。
また、勝敗についても「とにかく勝つことが全ての人にとってポジティブに影響する要素になります。たまに『負けてもいい』という人もいますが、そうするとどうしてもチーム魅力は無くなってしまう」と持論を展開した。

スポーツの根源的な魅力と可能性

終盤に差しかると、スポーツそのものが持つ魅力とその可能性に話題が及んだ。

IVS2022 NAHA、経営者たちの激論をレポート

冒頭でスポーツの「社会的存在意義」について言及していた新居さんは「人間はただ健康に生きていられればいいわけではない。『生きがい』や『働きがい』があることが大事になってきます。その意味で、満員の会場でのバスケの試合を観た時に感じたスポーツの魅力や強みは遥かに想像を超えるものでした」と話し、改めて人々の社会生活のなかにスポーツがあることの意義を強調した。

上原さんは「スポーツが人の心を動かし、感情を揺さぶるものだと日々感じています」とコメント。資本主義社会で経営も含めたさまざまな物事をスマートにしていくことが重要になってくるなかで「スポーツの真価は、原材料不要で価値を生み出せることにあると思います」と考えを述べた。

また、今後のネットビジネスとスポーツとの関係性については、新居さんが「スポーツとWeb3との融合性は劇的に高い」と指摘。「人の心を動かす可能性の高いコンテンツは、逐次発展していくテクノロジーを活用することで、これまでとは全然違う幅でマネタイズできます。これから5年後くらいのタイミングで幅広いコンテンツを展開できると考えています」とビジョンを語った。

今後の展開に絡めて、早川さんはスポーツビジネスをSDGsにかかわるための“フック”と位置づけて以下のように「締めの言葉」を述べた。

「IT分野の人たちは自分だけではなかなかSDGsに手をつけられずにいる人たちも多いと思うが、地域への社会貢献をしてるスポーツチームも多いので、そうした点に着目すれば色んなことに取り組めます。単に広告という意味合いではなく、チームを応援すること自体が社会課題の解決につながり、さらに一緒に取り組むことで企業の価値を上げられるようなモデルが出来上がりつつあるんです。その意味でも、スポーツビジネスはやはりいま“アツい”んです。是非、スポーツチームに関わってほしいですね」

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