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OTV報道部

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縮まる沖縄県民と自衛隊との距離 安全保障環境が変わるなか沖縄への影響は

アメリカ下院議長の台湾訪問に反発し中国が発射した弾道ミサイルが、与那国島などの近海に落下し緊張が走った。
大きく変わる世界の安全保障環境。復帰と共に沖縄に配備された自衛隊はどのような立ち位置にあるのか?そして今、自然災害の現場で活動する姿に憧れ、自衛隊を目指す沖縄の若者も増えている。

「強い誇り・自覚・責任を持って募集活動」近年は200人超が入隊

沖縄で自衛官の募集を行っている自衛隊沖縄地方協力本部の定例ミーティング。沖縄本島や離島の採用担当者が集まって、来年度の募集活動状況を報告する。

島尻地区の採用担当者
「管内の学校訪問につきましては、11校を訪問しまして、管内の自治体訪問も8市町村訪問しています」

八重山地区の採用担当者
「2022年8月ですが、特に離島、西表島、波照間島、黒島、こういった夏休み期間を利用しまして、帰ってきた学生と、コンタクトできればいいなと企画しています」

沖縄地方協力本部 本部長 坂田裕樹 陸将捕
「我々が、『募集』という任務を果たせないと『自衛隊』という組織が機能しなくなる。そういう人という面で、自衛隊を支えているという強い、誇りと自覚、責任を持って我々は募集という活動をしないといけない」

自衛隊沖縄地方協力本部によると、沖縄で採用された自衛官の数は復帰の1972年はわずか15人だったが、徐々に増加し、近年は200人を超えている。

2022年3月に行われた入隊者の激励会では、沖縄県の玉城知事もビデオメッセージで挨拶した。

玉城知事
「これから皆様は国民の生命と財産を守り、安心して暮らせる未来を創るという、大変重要な任務を担うこととなります。県内においても不発弾処理や離島からの急患搬送、近年は、豚熱防疫対応支援に関する災害派遣活動や、新型コロナウイルス感染拡大のための医療支援に多大な貢献を頂いております。県民を代表して、自衛隊からの支援に深く感謝を申し上げます」

「予備自衛官」の認知も高まる ”危険な状態にならないようにする仕事”

東日本大震災を始め災害派遣がクローズアップされる自衛隊。さらに近年は、社会人として働きながら防衛や災害、いざという時に召集される「予備自衛官制度」の認知も高まってきた。

こちらの予備自衛官の女性も普段は医療機関で働いている。

予備自衛官 宮井麻衣陸士長
「戦争を経験した方達の生の声を聞く機会があったんですね。凄い経験をした人たちが、昨今の緊迫した世界情勢を見て、すごい悲しい顔、辛い言葉を話すのは重みがありますし、そういう悲しい思いは二度としてはいけない。大事な人、家族だったり、友人、自然、固有の生き物、そういうのを、先祖から受け継いできたものを、守りたいというのが、私の率直な意見で、(予備自衛官に)携わっています」

沖縄の募集活動の責任者は、復帰以降から続く不発弾処理や急患空輸で「自衛隊」が県民に受け入れられてきたとの見解を示し、もっと「自衛隊」の事を知ってもらいたいと強調する。

沖縄地方協力本部 本部長 坂田裕樹 陸将捕
「『自衛隊=危険』というイメージと言われて、我々は国の一大事には身の危険を顧みず、任務を遂行しなければならないという面でいうと、危険な職業とはいえるかもしれません。ただ、我々はそういった一大事にならないように、装備を配置したり、部隊を配置したり、訓練をして、攻められないような状態を作る。といったことをやっている。つまり「平和」を作るということを、やっている認識です。危険な状態にならないように努力する職業なのかなと思っています」

復帰当時は反対されていた「自衛隊」 世論の変遷は建議書にも

屋良朝苗 行政主席(当時)
「県民はかつての戦争の経験、戦後の米軍支配の中から戦争につながる一切のものを否定しています。したがって、このような理由から自衛隊の配備には、反対の意を表明せざるを得ません」

1972年の復帰に伴って沖縄に配備された自衛隊。当時は「軍隊」と同一視され、各地で反対運動が起こった。

しかし、この半世紀、不発弾処理や離島の急患空輸などを重ねた結果、評価も様変わりしてきた。世論の変遷は2022年5月に県が公表した「平和で豊かな沖縄の実現に向けた新たな建議書」にも表れていると指摘されている。

沖縄国際大学 前泊教授
「(50年前の)『屋良建議書』の中で、核も、基地もない平和な沖縄を実現するという、それが復帰に託した願いだったんですけれども、そこに降って出てきたのが、まさに自衛隊の配備です。ですから、これに反対したというのがこの建議書の中のコアの部分だと思っています。ところが新しい建議書にはそれが、一切ありません。つまり、沖縄は自衛隊を容認したということに受け取られかねない中身になっている」

こう指摘するのは先月発刊された「沖縄県史」の編集を担った沖縄国際大学の前泊教授だ。

「災害救助隊」と「軍隊」自衛隊には2面性…専門家が警鐘

前泊教授は先の大戦、沖縄が本土決戦の持久戦にむけた「捨て石」として位置付けられたことを踏まえ、先島に自衛隊の配備が強化されている現状に警鐘を鳴らしている。

沖縄国際大学 前泊教授
「自衛隊には2面性がある。『災害救助隊』と、『軍隊』としての部分です。ある意味では普段は災害救助隊という部分が非常に強調されています。この波照間の周辺、与那国の周辺にミサイルが落ちる日を迎えてしまっています。こういうことが起こった時に、では最初に狙うのはどこか?という。これが米軍基地なのか、自衛隊基地なのか。基地の無い平和な島を目指した50年間の願いがまさに忘れられたころにこういうことが起こるんです」

日米同盟が深化 ”米中対立の最前線が日本となる”懸念も

沖縄の与那国島から近い台湾をめぐって、アメリカと中国の対立が鮮明化する中、沖縄では住民活への影響がでた。

自衛隊について研究している中京大学の佐道明広教授は日米同盟の深化で、自衛隊がアメリカの安全保障の一翼を担いつつ、ある事での懸念を指摘する。

中京大学 佐道明広教授
「アメリカは中国に対抗するために、例えば海兵隊ですとか、あまりに近くに、中国の近くにいすぎるということで、沖縄本島等にいる海兵隊もグアムとかハワイとか分散配置を進めていくということになっていくわけです。直接、衝突をしないで済むところに距離を置きながら、日本が、自衛隊が、そして沖縄に配備されているということで、ここが米軍との共同使用と、実際に2015年のガイドラインでは、基地や施設の共同利用、民間の空港とか、港湾も含めてですけど、そういうことがかかれているわけです。米中対立の最前線が、まさに日本であるということになるのではないかと思われる」

変わる世界の安全保障環境 自衛隊を目指す若者は

ロシアによるウクライナの軍事侵攻などをはじめ、世界情勢がめまぐるしく動く中、アメリカ軍基地に加えて、自衛隊の基地が展開する沖縄にどのような影響がでてくるのか?多くの人が不安を募らせている。

沖縄から自衛隊をめざす若者はどう考えているのだろうか?

記者
「ウクライナ情勢があって、ニュースなど見ていると不安になったりしますか?」

自衛隊を目指す女性
「大丈夫です。そう思うよりは、行って人を助けたいなという思いが強かったので、突き進んでいます」

記者
「(家族から)否定的な意見もありましたか?」

弟が自衛隊に入隊する女性
「そうですね、祖父が、自衛隊に対して、何で、自分の命をはってでも日本のために、みたいな。でも最近はロシアのこととかあって、不安。大丈夫かなという不安はありますね」

復帰から半世紀。当時多くの人が望んだ、基地の無い平和な島・沖縄とは異なった状況が続いている。

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