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OKITIVE編集部

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BANKSY & STREET ARTISTS(バンクシー&ストリートアーティスト展)※会期2022/9/16-10/10

BANKSY《Thrower》,2019 Private Collection

いまや時代のポップ・アイコンとして知られる匿名のアーティスト、バンクシーを沖縄で紹介する初めての展覧会。
本記事では、展示作品を一部紹介しながら、バンクシーを入り口に社会的なメッセージや多様な表現手段を用いたストリートアートの本質に迫る。

BANKSY. SON OF GRAFFITI, FATHER OF STREET ART バンクシー:グラフィティの申し子、ストリートアートの父

バンクシーが時代のアイコンであることに疑いの余地はない。というのも、偉大なアーティストは例外なくそうなのだが、バンクシーも、アートの世界にあった従来の境界を越えた存在だからだ。業界関係者や批評家、コレクター、愛好家らにとって、美術館やギャラリーとのつながりが当たり前だったが、バンクシー作品はそのような経路を経ずに、社会全体の遺産や大衆現象となり、広く知られ、評価されている。
その背景としては、バンクシー自身が一員となっている社会の統合的存在であると同時に、矛盾をはらんだ存在でもある点が挙げられよう。実際、バンクシーは、時の人であるにもかかわらず、その顔を誰も知らない。圧倒的知名度を誇り、高い評価を集め、常に話題になっているアーティストでありながら、正体を暴こうと躍起になっている世間の目やメディアの監視をかいくぐって活動している。誰もがバンクシーを話題にしていて、彼のことを知らない者などいないのに、バンクシーという人間について何もわかっていないのだ。

ICON OF HOPE : GIRL WITH BALLOON 希望の象徴《Girl With Balloon (風船を持った少女)》

バンクシーの全作品には、現状に深く斬り込む批評、現代社会やそこにある矛盾に対する辛辣で歯に衣着せぬ風刺があふれている。だがバンクシー作品は、単純に破壊的な皮肉一色というわけでもない。そこには、わずかながらも楽観的な思いがメッセージとして刻まれている。希望がついえたわけではないという彼の思いでもあるのだ。
そして、彼の最も有名な作品が《Girl With Balloon (風船を持った少女)》だ。
むろん、この作品の解釈は人それぞれである。少女が自発的に風船を空に放ち、愛と平和のメッセージを世界に発信していると見る向きもある。かたや、純真な心を失。た象徴とする解釈もある。いずれにせよ、バンクシーは、たとえ手の届かないところにあろうとも、希望を持ち続ける必要があると語りかけているのではないか。

BANKSY《Girl with Balloon》,2004

MICE AND MONKEYS : BANKSY'S OUTCASTS 社会の片隅に追いやられた人々の象徴としてバンクシーが描くネズミとサル

BANKSY《Laugh Now》,2003

バンクシーは社会について政治的な見解を表明する際、風刺的なシンボルとしてネズミを多用する。社会的不公正に翻弄されている人々、カのない人々、必要とされていない人々、誰からも愛されていない人々に寄り添う存在だ。ネズミと並んでバンクシー作品に頻繁に登場するのが、サルだ。
バンクシーは社会批判のシンボルとして使用することが多い。特に《Laugh Now》に登場するサルが典型的だ。オリジナルは、イギリス・プライトンのクラブに描かれた6メートル以上の巨大ミューラルである。
この作品では、サンドイッチマン役のサルがぶら下げている広告板に「今は笑うがいいさ。 だが、いつか俺たちの時代がくる」とのメッセージが踊る。落胆した表情、カなく肩を落とした姿、落ちくぼんだ目は、抑圧されている人々や奴隷のように扱われている人々を示している。つまりは、この社会の片隅に追いやられつつも、いつか救済される日が来るとの希望を捨てていない多くの人々の象徴なのだ。
だが、《Laugh Now》は、見方を変えれば、長い歴史を通じての人類による動物の扱いを批判した作品とも取れる。とりわけ、霊長類の仲間を単なる観賞のために密猟し、生け捕りにしたり、医学実験のためのモルモットに利用したりしてきた人間への告発である。

NOT ONLY SPRAY : THE EVOLUTION OF TECHNIQUES AND STYLES 道具はスプレーにとどまらず:技法とスタイルの進化

スプレー缶がライターならではのツールだったのに対して、新世代のストリートアーティストにとってはスプレー缶は数ある可能性のひとつに過ぎない。プラシ、ローラー、ステッカー、ステンシル、ポスター、モザイク、各種インスタレーションなど、オリジナリティ自体も作品の一部となるアーバンインターベンション(都市への介入)を成立させる多彩なツールは多岐に渡る。

ANDREA RAVO MATTONI《Echo of Vermeer》,2021 Private Collection ©Artrust - Courtesy of the artist
TVBOY《VINCENT’S SELFIE》, Pop House Gallery ©TVBOY
OZMO《Medusa》,2018 Private collection ©Artrust - Courtesy of the artist
RAUL33《Onde Atlantidee》,2017 Private Collection ©Artrust - Courtesy of the artist

開催概要

「BANKSY & STREET ARTISTS(バンクシー&ストリートアーティスト展)」

会場:浦添市美術館 / 沖縄県浦添市仲間1-9-2
会期:2022年9月16日(金)~10月10日(月・祝)
開館時間:9時30分~17時(金曜は19時)※最終入場は閉館30分前まで
休館日:2022年9月26日(月)、10月3日(月)
お問い合わせ:沖縄テレビ放送(株)事業部
098-869-4415(平日※祝祭日除く 9時30分~12時、13時~17時30分)

今日のストリートアートは、あらゆる層の人々を巻き込み、フェスティバルや展覧会に活動の場を広げ、美術館・ギャラリーにも進出、ウエプやSNSの話題をさらい、ファッションや社会に影響を及ばすほどの社会現象となっている。その大きなきっかけとなったのは、世にいわれる「バンクシー効果」だ。
そこで今回の「Banksy&Street Artists – BANKSY.Son of Graffiti, Father of Street Art」展は、バンクシーを歴史的な水準に置き、幅広い社会文化的状況、芸術的状況のなかでバンクシーの位置付けを探ることを目的としている。こうした状況は、バンクシー自身もその一部を構成しているのであって、この状況なしには彼も存在し得なかった。同時に、現在の進化に彼が果たした中心的な役割にも光を当てる。
このような理由から、本展では、バンクシー作品と並べて、グラフィティ時代を築いた先駆者や主要アーティストらの作品も展示するほか、国際的なストリートアートシーンになくてはならないアーティストらも幅広く紹介する。今日のムーブメントを特徴づける多種多様なスタイル、技法、表現をご覧いただきたい。

参考文献:
パトリツィア・カッタネオ・モレシ(2022)『バンクシー&ストリートアーティスト展-バンクシー:グラフィティの申し子、ストリートアートの父』

This exhibition is curated by Patrizia Cattaneo Moresi, in collaboration with 24 Ore Cultura and Artrust.
The exhibition is a private collection, not authorized by the artist Banksy and anonymous Street Artists.

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