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“国葬”めぐり世論二分・・・”思想・良心の自由”侵害は?国葬がはらむ問題

2022年9月27日に開かれた安倍元総理大臣の国葬。実施の是非やそのあり方をめぐり国民世論を二分する議論が巻き起こっている。国葬はどのような問題点をはらんでいるのか考える。
国葬実施は?沖縄県民も意見さまざま
インタビューを受けた女性
「今まで長く政治家として活躍されてこられた方ですので、その死を悼むとてもいい機会だと私は個人的に思っています」

インタビューを受けた男性
「全然相応しくない人物なのでやらないほうがいいと思います。民主主義国家じゃないなと思います」

インタビューを受けた女性
「あっという間に決まってしまったという感じなので、もっと国民みんなに聞いてほしかった。聞いたら時間かかると思いますけど聞いてほしかったと思います」

岸田首相「在任期間、功績、国際的評価、亡くなられた経緯を総合的に勘案」
2022年7月8日銃撃事件。県内にも大きな衝撃を与えた安倍元総理大臣の銃撃による死去。
事件からわずか一週間後岸田総理は1967年に亡くなった吉田茂元総理以来となる「国葬」の実施を決定した。国葬決定は2022年7月14日の会見。

銃撃事件では、逮捕された容疑者の母親が旧統一教会の信者で、多額の献金で家庭が崩壊し容疑者は教団に対する恨みから、つながりがあると思った安倍元総理を狙ったとされている。
旧統一教会をめぐっては、過去に霊感商法などによる被害が相次いだ。事件後自民党をはじめとする政治家と教団の関係が大きくクローズアップされ政府与党への批判が高まり、国葬の是非は国民を二分する議論となった。

FNNが2022年8月下旬に実施した世論調査では賛成が40.8%だったのに対し反対と答えた人が51.1%に上った。

国葬を実施する「正当性」を岸田総理は2022年9月8日の議会運営委員会で次のように主張している。
岸田総理
「在任期間、功績、国際的な評価、そして亡くなられた経緯、こうしたものを総合的に勘案して政府として判断する。その都度政府として内閣総理大臣経験者の葬儀の在り方について適切に判断していく、これがこれまでのありようでありましたし、今回もそうした考え方に基づいて判断した次第であります」

識者「国葬実施は法的根拠に乏しい」”思想・良心の自由”侵害の懸念も
憲法学を専門とする早稲田大学の阪口正二郎教授は、国葬の実施は憲法違反とは言えないとしながらも、法的根拠に乏しいと指摘する。

早稲田大学 阪口正二郎 教授
「安倍総理の功績っていうのは評価する人もいれば評価しない人もいますし、例えば岸田総理が仮に亡くなったらですね、同じようなことをやるのかやらないのかと、なぜ国葬をすべきなのかっていうよりも、だから行政権限でできるんだという法的根拠を前提にですね、じゃあなぜすべきなのか、今回やるのかっていう政治的な説明なんですね」

国葬が実施されることで「弔意の表明」が強制され憲法19条が定める「思想・良心の自由」が侵害されるのではないかという懸念も広がっている。
早稲田大学 阪口正二郎 教授
「日本のいろんなところで言われてる忖度の文化みたいな、そうすると、国葬やってるんだからこれはみんなも弔意を表明すべきだみたいな、なんとなくそういう空気が支配していくっていうのが僕はむしろ問題があって」
早稲田大学 阪口正二郎 教授
「弔意の表明っていうのは、別に個人個人が思うことなので表明したい人は表明すればいいわけですよ。それも、もちろん思想・良心の自由で、表明したくない人も守られてるのが思想・良心の自由なんですね。それをもし強制するということになると、そこは明らかに19条違反ですよね」

岸田総理は政府として弔意を強制することはないとしているが、一部の自治体は国葬の当日に弔意を示す半旗を掲揚することなどを表明し国葬への出席を決めた知事もいる。
玉城知事は出席見送り「政府においては熟慮して頂きたい」
一方、玉城知事は2022年9月12日出席を見送る意向を明らかにした。
玉城知事
「国葬には出席しないということはもうあらかじめ伝えております。国民からの世論が厳しいものがあるのではないかと思います。政府においては熟慮して頂きたい」

沖縄国際大学の前泊博盛教授は県民の代弁者である玉城知事が出席を見送ったことを次のように評価する。
沖縄国際大学 前泊博盛 教授
「例えば辺野古の問題一つにしても、民意に反して、県民投票の民意にも反して強行してきた政権だったという印象が非常に強いと思いますね」

沖縄国際大学 前泊博盛 教授
「沖縄が国葬に参加するということになれば、安倍政権のその強硬な姿勢までも評価する、そういうふうに見られかねない、誤ったメッセージを送りかねないというような懸念もあったと思いますね」

識者「法治国家としての是非を問う踏み絵を踏まされている」
前泊教授は、国会で審議が尽くされないまま内閣の閣議決定を根拠に推し進める政府の姿勢を批判する。
沖縄国際大学 前泊博盛 教授
「法治国家なのか、それとも人事国家なのか、あるいは党が決める党治国家なのかという、このあたりの問題を提起してるような気がします。これは国葬の是非を問う踏み絵というよりも、民主主義の法治国家としての是非を問う踏み絵を踏まされてるというふうに受けとめて見て欲しいと思います」

国葬をめぐり二分される意見と分かれる自治体の対応。議論を置き去りにしたまま実施すれば国民の分断が進み政治離れに繋がることも懸念される。
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