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OTV報道部

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沖縄県でも作成へ 低体重児の成長にあわせた母子手帳とは

沖縄は、2500グラム未満で生まれる「低体重児」の割合が全国で最も高いことを、ご存じだろうか。
早産などで小さく産まれた赤ちゃんと親を支える取り組みが求められる中、いま低体重児の成長にあわせた母子手帳・「リトルベビーハンドブック」を導入する自治体が増えている。なぜこのような手帳が必要なのか、赤ちゃんと家族を取材した。

「分からないことだらけで、不安しかない」

大島星七ちゃん。2020年12月27日に生まれた。

母親の友子さんが星七ちゃんを出産したのは妊娠22週のとき。
体重はわずか420グラムだった。
誕生から4か月あまりを新生児集中治療室NICUで過ごした。

大島友子さん
「わからないことだらけで、不安でしかない。怖くて(ネット)検索できない。」

大島友子さん
「いま母子手帳には書くところが私たちにはないんです。成長記録も書けないし、『寝返りをしましたか?首すわりはしましたか?』生後3か月記録、6か月記録は、見ても『いいえ』でしかない」

大島友子さん
「ああ、普通に産んであげていたらと、(母子手帳を)見るたびに思うので見ることもできなかった」

夫婦を支えた一冊のノート

友子さんたちが大切にしている一冊のノート、これは星七ちゃんの入院中、治療の経過と成長を看護師が記録したものだ。
友子さんが出産したのは新型コロナの感染が拡大していた時期で、面会時間は15分のみ。
小さな我が子の側にいられない時、このノートが夫婦の支えだった。

大島友子さん
「たとえば、1キロ超えたこともすごい記念日だったし、 最初は目もなくて、だんだん目にラインができてきて、片目ぱちって少し開いたよ、両目開けてくれたよとか」

大島徹人さん
「最初声も出ないんで、初めて声を聞いたとき感動しましたね」

コロナ禍の出産で親同士の交流や情報交換もできなかった経験から、低体重児の成長の記録となり発育や発達の目安を確認できるリトルベビーハンドブックの必要性を感じている。

大島友子さん
「NICUに通っている間、お母さんがこれを読んで書くことで、できることあるんだとわかるのかな、心の立ち直りが早いのかなと思いました」

同じ境遇を分かち合うために「やんばるちびっこの会」

県のまとめによると2019年に生まれた子どものうち、2500グラム未満で生まれた低体重児は1662人で、全体の11.2%に上り、全国で最も割合が高いことがわかった。

低体重児と親が集うサークル「やんばるちびっこの会」

大島友子さん
「(歯は)だいたい12本生えるけど、まだ7本しか生えてないので、やっぱ遅いのかなと思った」

やんばるちびっこの会 参加者の方
「顎が細いから歯並びの問題は出てくるはずと言われてきた」

この会の発起人の石上朱美さん。

妊娠23週、690グラムで生まれた息子の晴くんは小学3年生になった。

やんばるちびっこの会 代表 石上朱美さん
「1歳まで酸素、1歳半まで経管栄養。いまは何もなく給食もおかわりする元気な男の子に育っています」

やんばるちびっこの会は晴くんが誕生したときに北部地区の親とともに立ち上げたサークルだが、各地から参加を希望する声が強く、今では定期的に沖縄市でも開催されている。

やんばるちびっこの会 代表 石上朱美さん
「うちの子は7か月入院したけど、周りの子は3か月、4か月で退院して、それぞれの成長があるから、受け止めないと家族はいけないけど、家族だけで受け止められない場合、横でつながっていた方が、気持ちがシェアできた方がいい」

「涙と震えが止まらない」息子の命を守る重圧

晴くんが、小さな体で治療をがんばる姿をいつも側で見守っていた石上さん。
しかし退院が迫ったある日、在宅ケアに向けて晴くんの鼻に管を入れるための練習に苦戦していた時のアクシデントが起きた。

やんばるちびっこの会 代表 石上朱美さん
「みるみるうちに顔が黒くなって、泣きすぎて酸素も回らなくて自分の手で自分の子を殺すかもしれなかったという恐怖と、それを今後退院した時に私がやらなきゃいけないんだと重圧みたいなの、どういう感情かわからないけど、涙と震えが止まらない」

息子の命を守らねばならない重圧を同じ境遇の人と分かち合いたい。
そんな思いから立ち上げたのが「やんばるちびっこの会」だった。

そして、これから生まれくる赤ちゃんのために、石上さんは静岡県などで導入されているリトルベビーハンドブックを沖縄でも作成してほしいと2021年に県に陳情した。

やんばるちびっこの会 代表 石上朱美さん
「これだったら一目瞭然でわかる。人口呼吸器いつ取れた、うちの子は輸血もいっぱいしたんですけど輸血がいつ取れた、経管栄養いつ取れたとか」

お母さん、お父さんの声を“リトルベビーハンドブック”に

低体重児と一言で言っても生まれた週数やグラム数、治療の経過や発達もさまざま。
多くの事例の家族が共感できる内容にしたいと石上さんは考える。

やんばるちびっこの会 代表 石上朱美さん
「自分と同じグラム数とか週数を探して、その子の予後、どう育っているか重ねて見てしまう傾向があるので、そこはやっぱりたくさんの事例をのせると、それだけたくさんの人が共感してくれる」

やんばるちびっこの会 代表 石上朱美さん
「沖縄にいるお父さんお母さんたちの声を1ページずつ、一言ずつでもいいから載せて、身近にもこういう方がいるんだと、感じ取ってもらえればうれしい」

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