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新里 一樹

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知ってる?Web3.0で変わる世界の未来。trevary 金城辰一郎さんの挑戦!

新里一樹 Me We OKINAWA

沖縄県が掲げる「稼ぐ力」キーテーマとしている本コラム。これまで沖縄のスタートアップ企業にスポットライトを当て、ご活躍の方々にお話をうかがっている。今回は少しずつ言葉が浸透してきた「Web3.0」の分野にスポットライトを当てる。次世代インターネットの未来を見据え、一足先にその可能性を信じて沖縄から東京へチャレンジしているウチナーンチュがいる。それがtrevary株式会社 CEOの金城辰一郎さんだ。

金城さんが見る次世代インターネットとはどんな世界なのか?すぐそこまで来ているWeb3.0に備えて、私たちが準備しておくことは何か?このヒントを探すため、金城さんにお話をうかがった。

目次

近未来を生きる金城さんの意外な家庭環境と幼少期

――インタビューの際、みなさんにうかがっているのですが、金城さんがどのような幼少期を過ごされたのか教えてください。

金城さん
「実はあまり話したことはないのですが、父がボディービルダーであり空手家で、僕とは全く違った分野なんです。いまでもボディビルはゴリゴリやっていて、沖縄県で何度もチャンピオンになっています。」

――金城さんのイメージからは全くボディビルや空手家の気配がないので、正直、驚いています(笑)

金城さん
「幼少期の思い出は、父が怖かった印象が先にきます。父はスポーツとか武道とかを嗜んでいましたが、一方の僕は、サブカルチャーの方が好きで。小学生の頃は家に帰ってすぐテレビをつけて、マンガを読みながら音楽を聴いているような感じで。いま考えると。マルチタスクだなと思います(笑)」

――お父さまの背中を見て空手やスポーツをしなかったのですか?

金城さん
「僕自身がワクワクする瞬間は、何かしらのコンテンツに触れているときだったんです。父には『友達と遊ばないのか?』『友達はみんな部活をやってるから、君もやりなさい』といわれていました。それで半ば無理やりバスケ部に入って、そこからスポーツが嫌いになったみたいな感じがあります。

中学生からは音楽をしてドラムを叩いていました。高校に入っても音楽は続けて、洋服とかにも興味が出て、バイクにも興味を持ちました。スポーツよりもサブカルチャーが好きなんです。」

――お父さまとぶつかることはなかったんですか?

金城さん
「当時は厳しい躾に対する反抗心がかなりありました。スポーツに良い思い出がありませんが、一方で、サブカルチャーが心の拠りどころになっていました。父は厳しかったのですが、母はやさしかったのでそれでバランスが取れていたのかもしれません。東京の大学にも行かせてもらったし、好きなことをさせてもらっているので、いまでは両親に感謝しています。

いま受けた質問を振り返って思ったのですが、もしかすると当時の父への反抗心から、大学卒業して大企業に就職してっていう価値観よりも、自分の好きなことを貫いて生きたいと思うようになったのかもしれません。」

――もしかして、お父さま譲りな部分ってありますか?

金城さん
「どうでしょう…。父は花き農園を経営しており、一番多いときで30〜40人くらい留学生のスタッフを雇用していました。あとは、趣味のボディービルが講じて、地元のフィットネスジムを買い取って自分で経営したり。好きなことは我慢したくないっていうところは父親譲りかもしれません。」

――めちゃくちゃ血を引いているじゃないですか(笑)

金城さん
「そうですね、何もないところから価値をゼロ→イチで産み出して収益化するわけですからね。そういう意味では農業はクリエイティブですよね。もしかするとアントレプレナーシップ的な部分は、あらゆる面でチャレンジし続ける父の素質を受け継いだのかもしれません。」

「スタートアップ」の言葉で人生がひらけた

――大学卒業後の金城さんは、どのようにインターネットの世界に入っていったのでしょう。

金城さん
「きっかけは、インターネット広告のベンチャー企業に新卒入社したところからはじまっています。当時、その会社のWebマーケティングの一環で、ブログやSNSで、僕がいろいろな切り口で文章を書いて発信していたんです。それが多くの方に読まれて、バズったりしました。

その投稿を見た人から連絡が来たりして、いろいろな人に会う機会が多くなっていったんです。人と会って話しているなかに『スタートアップ』というワードがでてくるようになったのが2010年くらいのこと。調べてみると、何か、僕らと同じ世代の普通の人たちが、インターネットのサービスを作ったりプロダクトを販売して稼いだり、大企業に事業売却して巨万の富を得ているのを目の当たりにしました。」

――大学卒業して少し経った頃には、すでにスタートアップの存在を意識しはじめていたのですね。

金城さん
「そういう人たちにリアルで会えたのが影響しています。こいつらでもできるなら、ひょっとして自分にもできるのではないか?というカルチャーがスタートアップ界隈にはもう存在していて、それに触れられた経験が大きいですね。

その後、いきなり自分でスタートアップを立ち上げるのは難しい部分もあったので、当時サービス展開直後だったBASEにジョインすることにしました。自分が起業したわけではないですが、ゼロ→イチが経験できるのではないかと考えてのことです。」

学生時代の金城辰一郎さん。アイデアは移動距離に比例するというのをこの頃から体現していた。
学生時代の金城さん。アイデアは移動距離に比例するというのをこの頃から体現していた。

――ご自身の起業でなくとも、ゼロ→イチのスタートアップで働くのはご苦労も多かったと思いますが、この点はいかがですか?

金城さん
「もちろんたいへんな部分もありました。でも、それ以上に楽しかった印象が強く残っています。たいへんだけど、ローンチしてからサービス自体はもの凄く伸びましたから。売れない不安やキャッシュフローの不安はなく、純粋にもっともっとサービスを伸ばすために、どこを改良すればよいか、どのようにマーケティングをしたらよいかに振り切って神経を集中できました。圧倒的に忙しかったのですが、非常にエキサイティングな日々で充実していました。

しかも、当時の僕は25歳くらい、全社員のなかで年長で。後はみんな20代前半。年長者としてマーケティングはもちろん、他企業とのアライアンスやプロダクトのマネジメントなど、裁量が大きくてやりがいを感じていました。

サービスやプロダクトが伸びていれば、業務がたいへんでもすべてが癒やされます。サービスやプロダクト自体が秀逸で実際に伸びているからこそ、そのサービスやプロダクトを信じ切れる自分がいる。逆説的に、信じているからこそ、そこに対してフルコミットできたのです。」

――ゼロ→イチが難しいのは、私自身も現在進行形で感じています。どのように自分自身を保つことが、前に進めるポイントだと考えますか?

金城さん
「それは重要なテーマです。いまでは僕もBASEを辞めて、自分でさまざまなプロダクトを作ってきました。作っては潰してをいくつか経験し、やっぱりそう簡単にはヒットしないと思っています。

ちょっと話ずれちゃうかもしれませんが、本当にいいプロダクトなら、正直、あとはどうにかなるんです。僕もマーケティングとかアライアンスとかいろいろと経験しましたが、いいプロダクトはユーザーを勝手に呼び込むから、どんどん雪だるま式にグロースしていくんですよね。広告やキャンペーンやオフラインイベントなどをしなくても、長期的な目線で見ると成長したよねってBASEの経験から感じています。それだけプロダクトは重要です。プロダクトがよいというのはユーザーの課題を上手く突いており、課題を解決する手段となっているケースが殆どです。

話を戻しますと、お金儲けのためにプロダクトをやる感覚ではなくて、僕は自分自身がワクワクできるプロダクトかどうか、または、自分自身が信じ切れるサービスかどうかが、ゼロ→イチで前に進めていけるポイントだと思います。」

WEBに関する識者として、金城辰一郎さんは様々なカンファレンスやイベントに登壇。書籍も複数出版する等マルチな活躍を見せている
WEBの識者として、さまざまなカンファレンスやイベントに登壇。書籍も複数出版するマルチな活躍を見せている

辿り着いたWeb3.0の世界とその可能性

――確かに、自分がそのプロダクトやサービスの一番のファンになれば、その魅力を自分の声として伝えていけますね。起業やゼロ→イチにこういったマインドセットが重要か、よくわかりました。金城さんはWeb3.0分野に軸を移されていますが、これも何だかワクワクするようなワードに思えたのですか?

金城さん
「Web3.0のお話をする前に、Web1.0やWeb2.0とどこが違うのか、整理しておいた方が良いと思います。

Web3.0がほかと決定的に違うのは、所有権がユーザーにあるところに尽きると思っています。もちろんいろいろな捕らえ方、切り口で語ることはできますが、個人的にWeb3.0の一番コアコンセプトはやはり所有権という概念です。」

――Web3.0=所有権は知っていても、中身はよくわからないってありがちです。もう少し詳しく教えてください。

金城さん
「たとえば、文章や写真、動画など何でも良いのですが、自分で作ったコンテンツをSNSやWebサービスに投稿したとします。投稿したコンテンツは、そのSNSを運営している会社のサーバーにストックされて、その後は自分でコントロールできなくなります。

僕の場合だと、SNSで写真投稿を頑張って、30万フォロワーくらいの規模になりました。だけど、このSNSを運営する会社からは一円たりとももらってないわけです。ですが、僕の投稿した画像などを使い、フォロワーを中心にたくさんの広告を見せたりして運営会社は収益化し、莫大な富を得ているわけです。何十時間かけて作ったコンテンツからリターンが何もないっていうのは、やはり健全な状態ではないと思います。

Web3.0の概念では、自分で生み出したコンテンツをインターネット上にアップしても、その所有権が自分の手元にある状態を作り出せるのです。自分のコンテンツは自分で制御可能で、もちろん収益化もできる。この点がこれまでとは大きな違いだと思います。」

――プラットフォームの名のもとに、一部の運営会社が囲い込んでいたコンテンツの所有権が、Web3.0の世界ではユーザーに帰属するのですね。

金城さん
「そうです。それが一言で表したときのWeb3.0の概念です。ユーザーが自分たちの手に取り戻し、自分たちが生み出したコンテンツで適切に収益化して、ちゃんと自分たちにリターンを生み出せる仕組みなのです。オンラインでのアウトプットの価値がちゃんとコンテンツ製作者に還元される仕組みっていうのが、Web3.0の一番素敵な捉え方なのかなと思っています。

リアル社会でも、資本主義になる前の社会は、個人の財産や富は、その地域を治めている一部の権力者や、国家に帰属する考え方がありました。ところが、日本の憲法でも保障されているように、私有財産制によって個人の財産は個人に帰属すると認められるようになりました。これがひとつの民主化の動きです。Web3.0によって、ようやくインターネットの世界にも民主化が訪れようとしていると見ることもできます。これからのインターネットもやっと私有財産が保障される。やっと本当の意味でのインターネットの始まります。」

――来るべきWeb3.0の世界に向けて、金城さんはすでに取り組んでいるプロダクトがあるそうですね。ご紹介いただけますか。

金城さん
「AKINDOというプロダクトです。これまでプロダクトを作ってめざす出口戦略はいわゆるIPOやM&Aが主流だったと思いますが、僕がめざす先はAKINDOが公共財になることです。

たとえば、個人や企業がWebアプリのようなプロダクトを作りたいと考えたとします。AKINDOには世界中からたくさんのエンジニアさんに登録してもらって、アプリを作りたい個人や企業がAKINDOを使用して希望するプロダクトの要望を出すと、AKINDO内にいるエンジニアさんが協力してプロダクトを作り上げていく仕組みです。多くのエンジニアさんが協力してプロダクトを作り上げるなかで、いろいろなアイデアが生まれて新しいアプリが生まれる。そういう仕組みをAKINDOで実現していきたいと思っています。」

金城辰一郎さんが新しくリリースしたWEB3.0プロダクト「AKINDO」。多くの大手企業がスポンサーにつき国内外から高い注目が集まっている
新しいWEB3.0プロダクト「AKINDO」。大手企業がスポンサーにつき国内外から高い注目を集めている

――協力したエンジニアへのインセンティブはどのように設計していますか。

金城さん
「AKINDOはハッカソン、開発コンテストの仕組みなので、コンテスト主催者が報酬を配る仕組みとなっています。長期的にはAKINDOとしてのトークンの発行を計画しています。デベロッパーはハッカソン主催者からの実利的なリターンと合わせて、トークンで評価も可視化されるなど、AKINDO内にたくさんのディベロッパーとエンジニアが集まって、幾つものプロジェクトが行われるのです。

これは誰か一人が儲かる仕組みではなく、公共財のように誰でもアクセス可能で、誰でも使用でき、貢献度によってインセンティブが受け取れるものにしたいと考えています。

いまはまだ立ち上げたばかりでこれからですが、Web3.0はグローバルファーストでもあるので、英語で通訳の人にも協力してもらって海外のハッカソン(=エンジニアが複数人集まり急ピッチでプロダクトを作り上げていく開発スタイル)を開催しているような企業を中心に営業を仕掛けています。」

――最後になりますが、今後Web3.0はどのように発展していくと思いますか?またどういった分野にチャンスが生まれると見ていますか?

金城さん
「ゼロ知識証明などの新しいテクノロジーによって僕たちのオンライン上での活動データやバイタルデータ、フィジカルデータまでもが、自分自身の所有データとして安価に高速に、そして安全にブロックチェーン上に保存されるようになります。

プライバシーはちゃんと自分で管理でき、自分自身に最適な購買活動や健康アドバイスなんかをレコメンドしてもらったりできるので、より快適にインターネットが使えるようになると思います。

インターネットには、自分の閲覧履歴などをアルゴリズムがキャッチしてレコメンドしてくれる仕組みがありますが、正直、精度的に満足できるかといわれると疑問符が付きます。たまたまレンタカーを借りるために車を検索したら、その後ずっと車の広告やコンテンツがレコメンドされるようになったとか経験ありませんか。あれってパーソナライズされているかと問われれば、必ずしもそうとはいい難く、いまのインターネットの仕組みの限界だと思います。

Web3.0によって自分のパーソナルデータをあらゆるプラットフォームで使い回し、それを自分しか管理、使用できないものとしていくことで、先ほど申し上げたようなコンテンツの収益化や自分自身の影響力をもっと加速させられたりするのではないかと考えています。」

――金城さんがプロダクトをリリースしたAKINDOの今後の展開も楽しみにしています。本日はどうもありがとうございました。

インタビューを終えて

私自身、Web3.0という言葉の定義を追い、必死にキャッチアップしようと仮想通貨を使い、NFTでデジタル作品を収益化したりするなど、複数の試みをおこなっている。

しかし、今後どのようにこれらが発展して社会実装されていくのかをイメージするのが難しかった。自分自身のパーソナルデータをブロックチェーン上で管理して、それにより最適化されたインターネット上での活動が加速する部分に明るい未来を感じると同時に、まだまだ発展途上のこの分野にはビジネスとしてのチャンスも多く存在するのではないかと感じる有意義なインタビューだった。来るべき未来にワクワクを抑えきれない印象を金城さんにはいつも感じる。これからも金城さんのご活躍から目を離せない。

さて、次回のインタビューは、人生100年時代といわれるなかで、人の美や健康を運動によってサポートする、起業家で女性スポーツトレーナーのA-DREAM代表 平田歩さんにインタビューを行う。

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