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OTV報道部

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電気料金値上げ 県内企業の97%が価格転嫁できず 県内唯一の製鉄会社の現状は

ロシアのウクライナ侵攻による燃料価格の高騰などで電気料金が上がり、暮らしや産業に大きな影響を与えている。
1日に一般家庭の約100年分もの電力を使用する沖縄県内唯一の製鉄会社、拓南製鐵を取材した。

1日に使用する電気は一般家庭の約100年分

沖縄市にある沖縄県内唯一の製鉄会社「拓南製鐵」。
県内で発生した鉄のスクラップを電気で溶かして鉄筋などを製造している。

電気炉では6万6000ボルトの高圧の電力で鉄を溶かす。

電極による溶解を開始して4分、使用した電力は1300キロワットアワーに達している。

1回の溶解で使用する電力は約1万9000キロワットアワー、一般家庭の1か月の平均使用電力300キロワットアワーの60倍以上になる。

こうして製鉄を繰り返し、1日に使用する電気の量は一般家庭の約100年分だ。

拓南製鐵 八木実 代表取締役社長
「電気炉メーカーとしては電力がないと製造できないので、日ごろから沖縄電力さんとは情報の共有化ですとか協力関係のもとでやっております」

電気料金は昨年度比で165% 製品価格への転嫁は容易でない

電気炉による製鉄会社として創業以前から沖縄電力と信頼関係を築き上げてきたこともあり、電気料金の値上げには理解を示している。
ただ、これまで製造原価の2割ほどだった電気代のコストは約2倍の4割にまで膨らみ、経営に大きく影響している。

拓南製鐵 八木実 代表取締役社長
「今後の値上げの幅などありますので、これは今シビアに試算している状況です。ただ、厳しいことには間違いないです」

2022年度の電気料金は2021年度と比較して165%に。
2023年度にはさらに1.5倍になると試算されているが、製品価格にそのまま転嫁することは容易ではないと考えている。

拓南製鐵 八木実 代表取締役社長
「電気料金アップ分が全て製品に転嫁できるわけではないです。ただ単純にそのコストアップ分を製品に転嫁するというのはユーザーのお立場がありますので、なかなかスライドはできませんが、自助努力とユーザーへの丁寧な説明、ご理解、それを今やっているという状況です」

価格転嫁できていない企業は97%に達する

東京商工リサーチ沖縄支店が2023年2月に実施した調査では、直近1か月の電気料金が前の年の同じ月より上がった企業は8割以上。

そのうち電気料金の増加分を、「価格転嫁できていない」企業は約97%に達していて、急激な電気料金の上昇分の価格転嫁が追い付いていないことがわかっている。

東京商工リサーチは「今後、価格転嫁が進まないと、電気料金の値上げが企業収益に深刻な影響を及ぼす可能性が強まっている」と指摘している。

拓南製鐵 八木実 代表取締役社長
「電気料金アップ分の価格転嫁をすることによって経済がしぼんでもいけないですが、企業としての自助努力と転嫁には限界があります。そのため、どうしてもこれは国とか県とか、行政機関の配慮が必要です」

八木社長は沖縄電力の値上げに理解を示す中で、いま求められるのは国や県による支援だと話す。

拓南製鐵 八木実 代表取締役社長
「離島県という立場、沖縄電力さんも風力だとか原発だといった手段がない。また、規模の面などもあるので、そういった意味からすると、沖縄電力さんだけの問題でもないです。沖縄の個々の企業の問題じゃなくて、やっぱりこれは国や県にトータル的な観点で、沖縄県における電力事情について考えていただきたいです」

全国一律の施策が厳しいなか県は独自の支援策

政府は2023年2月から電気料金の負担を軽減する支援策を実施しているが、特別高圧の大口契約を結んでいる事業者は対象外だ。

県は独自の支援策として、国の支援から漏れた特別高圧の事業者に対する支援の実施に向け、2023年度予算に11億3700万円あまりを計上している。

拓南製鐵 八木実 代表取締役社長
「県の支援は大変ありがたいことです。県による地場企業への支援や援助というのは、地場企業の育成にも繋がります。弊社だけじゃなく沖縄県のその製造業が全国に比べて中小規模の企業が多いので、そういった意味では全国一律の国の施策っていうのはちょっと厳しいものがあるのかなと」

鉄スクラップから新たな製品を作り出す循環型社会の形成に取り組みながら、建設業をはじめとする産業の発展をけん引してきた拓南製鐵。

かつてない電気料金の値上げの波を乗り越えようと企業努力を続けている。

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