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OTV報道部

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「戦争を知らない世代がわかるように」ひめゆり平和祈念資料館がリニューアル

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76年前の沖縄戦では、沖縄県内21の学校から10代半ばの生徒たちが動員され、戦場に送られた。
「ひめゆり学徒隊」の記憶を伝える「ひめゆり平和祈念資料館」は、2021年4月に展示内容を大きくリニューアルした。
戦争を知らない世代にどう記憶を伝え、平和への思いをつないでいくか…
模索を続ける資料館の今を伝える。

ひめゆり平和祈念資料館がリニューアル

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リニューアルした資料館

2021年、大きな転機を迎えた「ひめゆり平和祈念資料館」。

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まず来館者を出迎えてくれるのは、女学生たちの笑顔。戦争の足音が次第に大きくなり、これから過酷な運命が待ち受けることなど、かけらも感じさせない。

女学生たちは、76年前 戦場へと送られた。
「ひめゆり学徒隊」と呼ばれるのは、沖縄師範学校女子部と県立第一高等女学校の生徒たち。陸軍病院で負傷兵の看護にあたり、あわせて136人が命を落とした。

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資料館は1989年6月23日に開館

辛く苦しい戦争の記憶と、平和への思いを後世に伝えるべく、ひめゆり学徒隊の生存者たちが尽力し、1989年に創設されたのが「ひめゆり平和祈念資料館」。
生き延びた元学徒たちは、語り部として戦争の記憶を伝え続けてきた。

元ひめゆり学徒隊・上原当美子さん:
目ん玉が飛び出して、足が切れて、おなかがちぎれてはらわたが出ている、胸が引き裂かれている。足が切れているなど、大惨事なんですよ

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思い出すのもつらいほどの沖縄戦の状況をありのまま伝え、展示についても「戦争の悲惨さ」を伝えることで、平和の尊さを考えてもらうことに重きを置いていた。

しかし、戦争から76年がたち、戦争を知らない世代にとって、その体験は現実的でなく、実感をともなわなくなってきた。
だからこそ、次世代へ戦争の記憶を継承するため、展示を大きく変えることになった。

「戦争から遠くなった世代」意識した展示に

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女学生たちの学校生活

寄宿舎の窓辺から外を見つめて笑う少女たち。服装もさまざまで、思い思いにおしゃれをしている。

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女学生たちの学校生活

バスケットボール部の女学生たち。部活動を楽しんでいる様子が伝わる。

ごく普通の少女たちが過酷な戦争に身を投じていったことを、「戦争からさらに遠くなった世代」にリアルに感じてほしいと、“親しみ”を意識した。

ひめゆり平和祈念資料館・普天間朝佳館長:
月明りの下を200人以上の生徒が行進している、という絵です

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元学徒たちに聞き取りをして描き上げられたイラストも、今回のリニューアルの大きな変化だ。

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ひめゆり平和祈念資料館・普天間朝佳館長:
これは手術の場面なんですけど、手足を押さえているのは、当時も麻酔はあったんですけど十分ではないので、骨を切断したり、切開したりする痛みで、大の男が苦しくて暴れまわるので、それを押さえるのも生徒たちの仕事。

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ひめゆり平和祈念資料館・普天間朝佳館長

ひめゆり平和祈念資料館・普天間朝佳館長:
内覧会で、元ひめゆり学徒の皆さんに見てもらったんですよ。「絵がすごくよく描けている」と、「これならわかるよね、見る人に。伝わるよね」とおっしゃって

「戦争を知らない人たちがわかるように変わっている」

2021年4月11日に、元学徒たちがリニューアルした資料館の内覧会に訪れた。
元ひめゆり学徒たちからは、「わたしなんか、へちま襟だったのに。セーラー服つけたことない」、「1人ひとりの表情がとってもいい」といった声が上がった。

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戦後生まれ世代が中心となって初めて作り上げた展示に、元学徒たちは称賛を送った。

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元ひめゆり学徒で前館長・島袋淑子さん:
戦争を知らない人たちが、わからないことをわかるようにという展示に変わっているなと。大変ありがたく思いました。これならわかるかもしれないというような気持ちで見ましたね

元ひめゆり学徒で元館長・本村ツルさん:
体験を話している人の気持ちまでも受け取ってくれて、わたしたちができなかったことを今の若い人たちが頑張ってくれたと思うと、ただただ感謝するだけです

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今回、展示の最後に追加されたのが、「ひめゆりの戦後」。

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ひめゆり平和祈念資料館・普天間朝佳館長:
ひめゆりの学徒の皆さんは、戦争が終わっても生き残ってよかったと思った訳じゃない。戦争のことをきちんと伝えないといけないという思いで活動してきたんです。そういう姿を見ることは、自分たち、これからを生きていく次の世代への、ある意味で希望になると思うんです。

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ひめゆり平和祈念資料館・普天間朝佳館長:
これからも、体験者の皆さんが大事にしてきたことをしっかり守りながら、新しい世代ならではの工夫・努力も重ねながら、戦争の悲惨さと平和の大切さを伝えていきたいなと思っています

次の世代に、ひめゆり元学徒たちの体験、そして平和への思いを伝える資料館として。
今、さらにその存在意義が高まっている。

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